| トヨタはかつてテスラと提携していたが、「テスラから学ぶものはない」として提携を解消している |
当時、トヨタはまだテスラの考え方を理解できなかったのだろう
さて、トヨタが第三四半期の決算を発表し、その利益(4342億円)がテスラの4542億円を下回ったとして業界を揺るがす大ニュースとなっていますが、この逆転現象は「四半期ベースでは初」なのだそう。
なお、販売台数だとトヨタはテスラの約8倍であり、つまるところテスラは1台あたりトヨタの8倍の利益があるということを意味します。
アナリストによると、トヨタの利益が伸び悩んだことには「特殊要因」があるといい、それは原材料の高騰をサプライヤーの分まで肩代わりしているからだとされ、報道ではこれを含む原料高騰が営業利益を4500円引き下げているほか、ロシア生産からの撤退に関しては969億円のマイナスが生じている、とも。
「トヨタの稼ぐ力が損なわれたわけではない」
こういった状況においても「第3四半期の利益の落ち込みは、トヨタの収益性に問題が生じたわけではない」との見方があるようですが、それについては今後の状況を見る必要があり、というのも今後電動化がおもったより早く進むことになれば、トヨタの「ハイブリッドを基本とした」収益構造が崩れ去る可能性も生じ、トヨタの割高なEVは売れず、かつ売れたとしてもコスト高のために「ガソリン車とハイブリッドで稼いだ利益を、EVに食いつぶされるだけ」なのかもしれません。
参考までに、第3四半期における大手自動車メーカーの利益を見てみると、メルセデス・ベンツが5550億円(販売台数53万台)と突出しているものの、次いでテスラの4542億円(34万台)、BMWの4410億円(58万台)、トヨタの4342億円(262万台)、フォルクスワーゲンの2720億円(218万台)という順になっていて、ここから計算するとテスラの1台あたり利益率はトップであり、金額にすると132万円。
一方のトヨタは1台売って165,000円程度しか利益が出ないので、収益性においては相当な差があることも間違いありません(メルセデス・ベンツもかなり儲かる会社であるようだ)。
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不況下ではブランド力がモノを言う
なお、テスラのこういった高い収益性については「高いブランド力」を反映したものだと考えてよく、テスラは原材料の高騰を直接車両に反映させて値上げを行っても販売が鈍らないものの、トヨタの場合は値上げをすると「競合他社との兼ね合いで販売が下がるため」値上げが難しいから。
よってトヨタはサプライヤーの分の原材料高騰分まで肩代わりせざるを得なくなっていて、これは「特殊要因」として片付けることはできないかもしれません(トヨタの判断であり、不可抗力ではないから)。
さらにテスラはEV市場の拡大に伴い、今後大きく販売を伸ばしてゆくと思われ、しかし逆にトヨタはライバルとの競争によって販売を大きく伸ばすことは難しく、むしろ「防戦一方」の可能性があり、もしかすると電動化の波に乗れずシェアを落としてしまう可能性も。
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さらにテスラは「直販」「OTA(無線アップデート)」といった運営コストがかからない手法を採用していて、さらにはギガプレスの導入など製造原価がどんどん下がっているうえ、そもそも車種が4つしかなく、グレード展開もシンプルであり、さらには本社機能までもが(広報を廃止するなど)スリムです。
そうなるとテスラの1台あたり利益は今後もどんどん増加する可能性が高く、トヨタとの差はもっと大きく開くかもしれません。
現在テスラの株価から算出した時価総額はトヨタの約3倍にあたる100兆円ですが、収益性や成長性を考慮すると、「3倍」でもまだ割安だと考えられ、どこかの段階でテスラが再評価されるんじゃないかともぼくは考えています。
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参照:NIKKEI