| ポルシェは「売れるもの」ではなく「作りたいもの」を作り、それが顧客に受け入れられることで成長してきた |
ある意味では天上天下唯我独尊
さて、今年はポルシェがはじめてスポーツカーを世に送り出してから75周年を迎えるという節目の年ではありますが、同時に911の誕生60周年、ヴォルフガング・ポルシェの生誕80周年というこれまでにないメモリアルイヤーとなっています。
実際のところ、ポルシェ自身も「75周年を祝うに際し、様々なイベントをこの一年を通じて、そして各国で開催する」と発表していますが、今回はひとまずオンラインにてポルシェのブランドコンセプトを示す一遍の動画を公開することに。
ポルシェの成功要因は「夢を追いかけること」
この動画は「Porsche: chasing dreams for 75 years」と題されていて、ポルシェ自身、ここまでの成功を収めることができたのは「夢を追いかけ、それを実現しようとしてきたからだ」と自らの歴史を振り返り、そして夢を追い続けることの重要さをポルシェのアイコニックなクルマやイベントとともに紹介する内容となっています。
ポルシェは1931年にフェルディナンド・ポルシェ・シニアによって設立され、最初の自動車を製造したのは1948年のこと(自動車メーカーとしてではなく、デザイン事務所としての出発であり、当初は他社の設計を引き受けていた)。
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ポルシェ初となるクルマは「356」ですが、356/2として生産が開始される前にはわずか1台の356/1プロトタイプが作られたのみだとされています(ちょっと今では考えられない)。
このクルマを設計したのはフェルディナンド・シニアの息子であるフェルディナンド・ジュニア(通称フェリー)で、これはフェルディナンド・シニアが戦争犯罪人として収監されていた期間が長く、自動車の設計に携わることができなかったため。
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その後ポルシェは1963年に911の生産を開始していますが、今では世界屈指のラグジュアリーブランドとして知られるようにまでなっており、さらにはドイツ最大規模のIPO(新規株式公開)を成功させることになるわけですが、もちろん当時のポルシェ親子は(ポルシェがそこまで大きくなろうとは)知る由もなく、しかし現在の規模にまで成長したのは、ポルシェ親子のあとに続く人たちが創業者同様に「夢を追い続けたから」なのかもしれません。
ポルシェ設立の動機はそもそも「自分が理想とするスポーツカーがどこにもなかったので、自分で作ることにした」というもので、この思想は現在に至るまで貫かれていて、たとえばポルシェは「売れるクルマを作る」というよりも「ポルシェが理想と思うクルマ、人々に届けたいと思うクルマを作り」、それが結果的にヒットに繋がってきたという経緯があり、さらには理想を実現するために必要な技術をまずは開発してゆくといったタイプの企業です(今ある技術に満足する会社ではない)。
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そしてその技術を試す場として様々なモータースポーツ、そして記録への挑戦を常に行っており、設立当初からポルシェは世界中で様々な記録を更新し続けていますが、実際にポルシェは「ル・マン24時間レースで最も多く優勝を記録した自動車メーカー」であり、ニュルブルクリンクにおいても数々の記録を保有していることでも有名ですね。
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ポルシェの考える「夢」は顧客にも広がる
なお、この動画には1971年のル・マンで旋風を巻き起こした「ピンク・ピッグ」こと917/20など様々なレーシングカー、そしてモータースポーツにおける栄光についても言及していますが、その「夢」とはポルシェ自身が追求するものに加え、その顧客が実現できるものも含まれており、たとえば自分の思った通りのボディカラーを実現できる「ペイント・トゥ・サンプル」についても触れています。
動画では「私たちは常に大胆に、勇敢に行動してきました。私たちの世界は、"夢 "が動詞となるのです。アーティスト、レーサー、イノベーターが集う場所です」というナレーションが流れ、ポルシェの考えている夢とは、けしてポルシェだけのものではなく、顧客やファンと分かち合えるものだということもわかります。
さらにはトレンドやファッションの変化、顧客とのコンタクトポイントの変化にも話題は及び、昨年にはじめて出展したマイアミ・アート・ウィークについても触れられているものの、それらはすべてポルシェの原点から乖離することなく、むしろポルシェの夢を追求するためだからこその行動であることもあらためて強調されており、この動画は最近までのポルシェの歴史を示すダイジェストとしても非常に面白いものだと言えるかもしれません。
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現在ポルシェ911は「お金で買える最高のスポーツカー」であり続け、そのセグメントのみではなく、すべてのスポーツカーのベンチマークとされるまでに研ぎ澄まされていますが、これは「理想のスポーツカー」として誕生した911を後続が受け継ぎ、さらに”それぞれの時代に合わせた理想のスポーツカー”へと変化させ続けてきた結果なのだと思われます。
そう考えると、今後時代がどのように変わり、規制がどうなろうとも、創業者の意志を受け継いだ現在そして未来のポルシェの人々は、「911を常に理想のスポーツカー」たりうる存在へと発展させてくれると信じていいのかもしれませんね。
ポルシェがこれまでの75周年を振り返る動画はこちら
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参照:Porsche