| なんとそのプレス機は89年間も稼働を続け、今後もトヨタ本社工場内にてパーツを生産し続けるそうだ |
そしてこのプレス機はトヨタ自動車設立よりも前にトヨタが購入していたものである
さて、トヨタが「日本国外で初めて建設した工場」であるブラジルのサンベルナルド工場を閉鎖した、と発表。
この工場では60年にわたる生産が行われ、10万台以上のトヨタ・バンデランテの生産を行ってきたことで知られます。
なお、このバンデランテ(Bandeirante。ポルトガル語で開拓者という意味がある)はメルセデス・ベンツ製のOM-364エンジンを搭載したJ40型ランドクルーザーですが、このエンジンは自然吸気4気筒ということもあり「非常に遅かった」ものの、そのコストの安さ、高い耐久性に起因して現地では広く受け入れられたといい、まさにこれはトヨタの言う「ランクル100万台の生産の背景には、1000万のオーナーが走った道がある」ということを端的に表しているのかもしれません。
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トヨタのブラジル工場は現地と密接な関係を構築してきた
その後トヨタはランドクルーザーを進化させ続け、しかしそれでもトヨタは現地向けにこのバンデランテの生産を(2001年まで)継続していて、これはトヨタが現地の人々や文化、そしてなによりクルマの使われ方をよく理解していたからだとも考えられます。
実際のところ、今でもトヨタは仕様地向けに様々なランクルを発売しており(荷台を取り付けるため、車体後半がフレームだけの仕様もある)、ある地域ではランクルは「高級なオフローダー」、またある地域では「実用的な使役車」として捉えられているのが面白いところでもありますね。
なお、トヨタはブラジル市場では9%のシェアを持っているそうですが、現在では(南米で自動車生産を行っている)GMとステランティスに追い抜かれており、しかしトヨタは別のブラジル国内の工場へと生産を移管することで現地の需要に応えるとともに、中南米への輸出を拡大し、ブラジルの自動車産業のさらなる発展に貢献したい、とコメントしています。
なぜトヨタはブラジルに工場を建設したのか?
そもそも、なぜトヨタはブラジルを選んだのか。
これは至極簡単であり、当時(建設が開始された1938年当時)ブラジルが好景気に湧いていたこと、日本からの移民が最も多い国でもあったこと。
トヨタはブラジルへの「(日本国内生産車の)輸出」も考えたものの、ブラジル政府が先手を打ち、インフレ抑制法(IRA)の導入とともに「国内生産に基づく自動車振興法」を施行することに。
これは簡単に言うと「自動車の輸入を禁止し、ブラジル国内の自動車市場が欲しければ、まずその国に投資し工場を作るように」というもので、つまりは雇用の創出などを狙った政策であったわけですね。
結果的に1958年にはトヨタ・ブラジルが設立され、まずは(完成車における)60%の現地生産比率からスタートし、1968年には100%の現地生産比率にまで達しています。
なお、このサンベルナルド工場が稼働した1962年というと、まだトヨタお膝元の日本でも「本社(1938年稼働)と元町(1959年稼働)」の2つしか工場が存在しなかったそうなので、当時いかにトヨタがブラジルを重視していたかがわかります。
そしてトヨタがブラジルに注力した証とも言えるのが、ずっとサンベルナルド工場で使用されていた「プレス機」。
これはトヨタ自動車の設立前の1934年にトヨタが購入したもので、本社工場の立ち上げ時からトヨタ車の生産に不可欠な部品を打ち続け、1962年になるとサンベルナルド工場へ。
トヨタ本社工場での使用開始から数えると実に89年間も稼働してきたということになりますが、現在のトヨタ南米の本部長でも「その時代に、日本の会社がこれだけ大きなプレス機を作ったり、(トヨタが)それを購入する力があったことが信じられない」と語り、その資金の一部につき「トヨタがイギリスの会社に特許を売ったお金の大部分をつぎ込んだのでは」とも。
こういった「トヨタの創業を支え、地球の裏側にまで行って89年に渡りトヨタの部品を生産し続けた」大切なプレス機ですが、トヨタはこれを「動態保存」することに決め、また地球を半周させて本社へと持ち帰り、本社工場の「元あった場所」へと設置するとコメントしていますが、驚くべきことに、これからも補給部品の生産を続けるといい、まだまだトヨタの歴史とともに歩み続けることになりそうですね(願わくば、永遠にその活動を続けてほしいものである)。
トヨタがブラジル工場の閉鎖に関する発表を行った動画はこちら
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参照:TOYOTIMES