| そのルックスは見るからに「怪物」である |
当時のアウディ含むドイツの自動車産業はひたすら「大排気量」を追求していた
さて、みんな大好き「生産に移されなかった悲運のクルマ」。
今回アウディが1930年代に考案された「16気筒エンジン」を搭載する”タイプ52”にまつわるストーリーを公開し、グッドウッド フェスティバル オブ スピードにて実車をお披露目するというプレスリリースを発行しています。
まず、このタイプ52は1930年代のタイプ22グランプリ レースカーの公道バージョンとして企画され、200馬力以上を発生する16気筒エンジンを搭載し、最高速度は時速200キロを超えて「当時最速のクルマの1つになるはずだった」と紹介されています。
残念ながらアウディ「タイプ52」の生産は実現せず
正確に言うならば、このタイプ52はアウディではなく、その前身である「アウトウニオン」によって作られたもの。
現在のアウディは「アウディ、DKW、ホルヒ、ヴァンダラー」という4つの自動車メーカーが1932年に合併して誕生した「アウトウニオン」にルーツがあり、その後1969年にNSUを買収して「アウディNSUアウトウニオン」へ、そして1985年に「アウディ」へと社名が変更されています(有名なフォーリングスは4社の結合を示したものである)。
残念ながら、この素晴らしいスーパーカーは設計段階を過ぎることはなく、アウトウニオン タイプ52 プロジェクトは、第二次世界大戦を前にした1935年までに中止されてしまい、実際に作られることはなかったのだそう。
「実際に作られることがなかった」のであれば、いまこうやって走っているクルマは何なのかということになりますが、これはアウディがそのアーカイブから設計図を見つけ出し、それに基づいて新しく製作した車両だと説明されており、実際に製造を担当したのは歴史あるレースカー製造会社であるクロスウェイト&ガードナー。
同社は当時のスケッチと設計図をもとにシャーシ、ボディパネル、エンジンに至るまですべてを作り上げ、2023年の初めにプロジェクトが開始されたのち、完了までには1年以上を要したことについても言及されています。
リア デッキ(つまりミドシップ)の下にはスーパーチャージャー付き16気筒エンジン(見たところV16のようである)が収められ、ただし本来の設計図が示していた4.4 リッターではなく6.0リッターへと変更されており、一方で出力は当時に「推定200馬力」からなんと512馬力にまで引き上げられることに。
なお、排気量が拡大されたエンジンを収めるために車体が(当初の設計から)拡大され、さらにホイールベースは300ミリから331ミリへと延長されており、エンジンと車体サイズの拡大に伴って重量は(当時想定の)1,300kgから1,450kgへと増加しています。
ちなみに室内はマクラーレンF1と同様の「3座」構造を採用し、これはリアに大きなエンジンを積むために室内空間が圧迫されたためだと思われますが、レイアウトはもちろん、木製パネルやメーターなども「当時を意識した」作りになっているのだそう。
なお、驚くべきことにアウディは実際にこのクルマをグッドウッド フェスティバル オブ スピードで(公開するだけではなく)走らせる準備ができていると述べており、ル・マン24時間レースの勝者であるトム・クリステンセン、そしてハンス ・ヨアヒム “ストリーツェル” スタックがドライブを担当する、とのこと。
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参照:Audi