
| フェラーリが「スペシャルモデル」の試乗イベントを行うことは稀である |
クリス・ハリスはマクラーレンW1をベンチマークとしているようだ
さて、フェラーリがメディア向けにF80の試乗イベントを大々的に開催。
「スペシャルモデル」においてこういったイベントを開催することは非常に珍しいと認識していますが、それもやはり一部で根強く残る「V6+ハイブリッド」への対策ということなのかもしれません。
なお、今回紹介するのはポルシェファナティックとして知られるクリス・ハリスによるレポートで、かつて彼は「フェラーリの試乗イベントでフェラーリを批判し」しばらくフェラーリから出禁をくらったことがあり、しかし少し前に「和解」しています。※タミヤのTシャツ(すでに完売ずみのレアものである)を着ているが、シューズともカラーをあわせるなど、さりげないオシャレを楽しんでいるようだ
フェラーリF80の試乗イベントは「技術プレゼンテーション」から
今回のイベントはホテルとサーキットを貸し切って行われたようで、まず試乗前日に行われたのは技術プレゼンテーション。
ここではカーボンファイバー製のバスタブシャシー、ハイブリドシステム、巨大なマルチマティック製スプリングとダンパーユニットなどの説明があったようですね。
ちなみにカーボンファイバー製シャシーは部位によって仕上げが変更されており、シル部分には(目に触れることを考慮して)美しい装飾的なカーボンが用いられている、とのこと。
V6エンジンはシャシーの非常に低い位置に搭載されており、120度のVバンク角を持つためにフラットエンジンのように見え、トップサスペンションアームは、内部に格子状の構造を持つ3Dプリント製で「信じられないほど複雑」。
こういった構造すべてを指し、クリス・ハリスはF80をして「非常に複雑なクルマ」と表現しています。※クリス・ハリスはしきりにマクラーレンW1との比較を行っている
そしてこのサスペンションアームはブガッティ・トゥールビヨン、マクラーレンW1同様に「AIによって設計された新世代のパーツ」です。
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ステアリングホイールはF1マシンのように「(F80専用の)スクエア」な形状を持ち、しかしセンター周りはほかの市販モデルと同様。
スポーク上のスイッチは市販時には(アマルフィ同様)物理スイッチへと置き換えられるようですね。
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シフトスイッチは「航空機のスロットルレバー」「往年のHパターンシフト」を模した現行フェラーリ同様ではあるものの、F80ではより「メカニカルに」なり、機械式腕時計のケースのような美しさが表現され、そしてより「航空機らしさ」を増したように思えます。※映画「インターステラー」に登場したロボット、「TARS」「CASE」を連想させる
ちなみに足元は「激狭」で、ドライビングシューズでないとうまくペダルの操作ができないかもしれません(ペダルもまたF80専用デザインを持つようだ)。
実際にフェラーリF80で走ってみた印象は?
その後は会場をサーキットに移して「減退走行の体験」。
まずはチーフテストドライバーであるラファエル・シモーネ氏がステアリングホイールを握って各メディア担当者を助手席に乗せて周回しつつ、そこでは「F80の扱い方」「コースの攻略法」が伝授されることとなり、これはF80の価格(6億円以上)を考慮すると当然のことで、いきなりメディア担当者にステアリングホイールを握らせることはできないのかもしれません。
クリス・ハリスはまずここで「クルマに体を預けることの重要性を感じた」「特に高速コーナーではグリップが非常に高く、低速コーナーでは機械的なトラクションが発揮される」「エアロダイナミクスにつき、高速ブレーキング時にはリアの開口部が開き、トラクションを得るための大きな働きをする」とコメント。
そしてラファエル・シモーネ氏によれば「ストリートカーの感覚としては、これは新しいフィーリングだ。新しい基準を設定した」「タイヤだけでなく、ダイナミクス、サスペンション、すべてがパッケージとして機能する」「これからの数年、馬力はもはや重要ではない」「クルマは最高レベルの出力に到達しており、1,200馬力で十分。パワーはあくまで車両をうまく機能させるためのツールであり、単なるパワーやエンジンではない」。
ドライビングインプレッション:F80の「驚くべきパッケージ」
インテリアについては「非常にシンプルでピュア」「ドライバー中心の設計を持ち、1+1シートのアナロジーが示すように、右側(助手席側)からは隔離されているような感覚がある」「シートは硬く、腰のあたりが少し辛かったが、走行には問題ない」「V6エンジンのサウンドが車内に心地よく響く」。
その後は自身でステアリングホイールを握って走行することになりま、「Eターボの搭載により、アクセルレスポンスが予想外に素晴らしい」「フロントの感触が本当に素晴らしいと断言できる」「トラクションは極めて優れ、非常に効率的」「フロントアクスルがアシストし、ブレーキはまさに驚異的」。
さらにはこの「フロントのトラクション」によってクルマが軽いと感じるそうですが、ラファエル・シモーネ氏が「すべてがパッケージ化され、優れた性能を発揮する」と述べるように「電動ターボ、4WD、エアロパッケージ、サスペンション」が統合され機能することによって素晴らしいエンゲージメントを演出しているもよう。
実際、クリス・ハリスは「電動ターボのおかげで、アクセルを踏むとすぐに反応する。自然吸気エンジンではないという理由でこのクルマを批判する理由は全くない。その加速と反応は実に驚くべきもので、まさに「感性にうったえかけるクルマ」と評しています。
エアロダイナミクスとデザインの驚異
クリス・ハリスはF80のデザインについても触れており、ランボルギーニ ディアブロGT、つまり最後のディアブロを思い出させる、とも。
ウエッジシェイプとスラブサイドを持ち、リアにウィングがあり、フロントにはライトを含むストリップがある点など非常によく似ていると表現していますが、その一方でF80をして「独自の魅力があり、真の機能性が詰まっている」。
空力性能はラ・フェラーリをはるかに凌駕しており、240km/hで1トン以上のダウンフォースを発生させ、エアインテークはダミーではなく3つの独立したベーンで空気を加速させたのち、このダクトから直接エアを排出。
基本的に熱気の管理をクルマの上面で行われ、特徴的なフロントフェンダー側面(スラブサイド)も空力特性の一部として機能してラジエーターからの熱気をここから排出しつつ、クルマの側面を通る空気の流れを管理することに。
そしてサイドウインドウ後ろのNACAダクト(フェラーリのスペシャルモデルにおいてはデザイン的な特徴としても機能している)はフェラーリのみではなく「ロードカー史上最大」でもあり、この巨大なNACAダクトが空気を加速させて車両内部にエアを送り込み、その下にある2つの大きなラジエーターの冷却、さらにエンジンの吸気やブレーキ冷却も行っているのだそう。
こうやって見ると、F80のデザインにはすべて意味があり、現代のほかのハイパーカー同様に、大規模なエアマネジメントの結晶としてのボディラインそしてディティールを持つということがわかりますね。
フェラーリF80は公道において優れた快適性を発揮
サーキットを走った後は「公道」てとステージを移してF80をドライブすることとなりますが、フェラーリがこのステージを用意したのはF80をして「ロードカーとしての側面も重視している」と主張しているため。
実際のところ、狭く、タイトで、路面の荒れた道でも、マルチマティックダンパーを「バンピーロードモード」(現在はソフトダンパーと呼ぶ)に設定すると、296GTB / 296GTSよりも同等かそれ以上の乗り心地が得られるそうで、時速80kmでの走行中も、車内のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)は非常に優れており、さらには低回転時のエンジンレスポンスも(電動ターボのおかげで)良好、そして「ステアリングの応答性も優れる」。
クリス・ハリスはフェラーリF80をこう評価する
今回のサーキットと公道試乗を経て、クリス・ハリスはフェラーリF80に対して最大限の賛辞を贈っており、以下のように語っています。
メルセデスAMGやアストンマーティンなど、同じような出力を持つハイパーカーにも乗りましたが、フェラーリF80を運転すると、他のメーカーのクルマが私にとっては未完成の製品だと感じるようになりました。
それらは確かに楽しく、素晴らしい部分もありましたが、このF80はフェラーリが作った「完成品」であり、このハイパーカーは最も完成度が高く、私がこれまで運転した中で最高のものです。
さらにこのクルマが優れる点は、非常に複雑であるにもかかわらず、有機的でノーマルに感じられることです。多数のセンサー、ディファレンシャルの働き、トルクベクタリング、電気と内燃機関のパワーの切り替えなど、途方もなく複雑ですが、乗り込んでスタートボタンを押し、Apple CarPlayで音楽を再生すれば、すぐに走り出すことができ、性能のすべてを引き出すことができるのです。
何よりも、ダイナミクスの面で、このクルマはフルマルチマティックサスペンションとEターボによって、他車をはるかに超えるステップを踏んでいます。もはやどれだけ速く走るかではなく、「そのスピードで何を成し遂げるか」が重要であり、このF80は全く異なる次元のゲームをしています。
紙面上では似たような性能を提供していても、運転してみれば、そしてもしあなたが運転を愛するなら、これは全く別のものです。
このF80について知るべきことは、フェラーリだけがこの車を作ることができたということです。その能力、個性、美しさ、そして「完成度」の組み合わせは、2025年のフェラーリでなければ実現不可能す。
かつてフェラーリは、完成された製品を作るのが苦手で、情熱やカリスマといった主観的な要素においてのみ生き残ってきた自動車メーカーでした。しかし、現在のフェラーリは非常に完成度が高く、このハイパーカーは最も完成されており、私が運転した中で最高の一台です。
クリス・ハリスによるフェラーリF80のレビュー動画はこちら
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参照:Chris Harris on Cars(Youtube)