
| BMWは「世界で初めて」ターボを市販車に投入した自動車メーカーである |
そもそもBMWの社名そのものが「エンジン製造会社」を表している
BMWは「はじめて市販車にターボエンジンを導入した会社」であり、”市販車初の”ターボカーとはすなわち1973年のBMW 2002 Turbo。
このクルマはターボエンジンを装着していることがわかるように「フロントバンパーに”Turbo”の文字を入れ、しかもそれが先行車のルームミラーから読み取れるように反転仕様とされていた」ことでも知られます(後にホンダがこの意匠を取り入れる)。
つまりBMWは「ターボと非常に縁が深い」会社でもあるのですが、BMWとターボの「近代史」を振り返ってみましょう。
Image:BMW
N54エンジン:21世紀の直列6ツインターボ革命
2000年代中盤、それまで高性能自然吸気エンジンの開発に注力していたBMWは、N54型直列6気筒およびN63型V8ツインターボエンジンの投入により、パフォーマンスと効率の両立という新たなステージに突入しています。
今回取り上げるのは「N54」「N63」エンジンですが、まず2006年、BMWは「N54」ガソリンターボエンジンを発表し、これはじつに20年ぶりの(同社にとっての)ガソリンターボ。
Image:BMW
3シリーズ(E90型 / 335i)に搭載されたN54型は「3.0リッター直列6気筒ツインターボ、最高出力300p」というスペックで、従来の自然吸気3.0L(330i)と比べて45ps向上というパフォーマンス向上を実現しつつ、燃費も「自然吸気エンジンに対して改善」という優れた環境性能を誇ります(最近だと燃調の進歩によってターボエンジンのほうが燃費が優れるという認識が根付いているが、かつてターボエンジンの燃費は非常に悪かった)。
さらに、最新技術の塊であるこのエンジンは、ピエゾインジェクションによる高精度な燃料噴射を導入し、燃費3%向上、排出ガス20%削減を実現。小型ターボを各バンク3気筒ずつに配分することでレスポンスも改善され、自然吸気エンジンに匹敵するドライバビリティを達成しています。
ちなみにBMWは、1980年代以降ガソリンターボを一切導入しておらず、このN54が”ターボエンジン復活の狼煙”というわけですね。
Image:BMW
N63エンジン:世界初の“ホットV”レイアウトでターボV8に革命を
N54エンジンの登場から1年後の2008年、BMWはX6 xDrive50iにN63型4.4リッターV8ツインターボエンジンを搭載。
ここでもBMWはエンジニアリングの限界に挑戦するのですが、N63の最大の特徴は、ターボチャージャーとキャタライザーをV型エンジンのバンク内(V字の内側)に配置する“ホットV”レイアウト。
従来のV8エンジンでは吸気が内側、排気が外側に配置されていたものの、N63ではこれを逆転させ、結果としてターボが燃焼室に近接し、スロットルレスポンスが劇的に向上しています。
Image:BMW
この構造により、従来よりもパイピングが短くなり、ターボラグを抑え、大排気量自然吸気V8を凌ぐトルクとレスポンスを実現し、さらに液冷式インタークーラーを採用することで熱管理も最適化されています。
N63は、その後7シリーズ、5シリーズ、X5、X7など多くのモデルに展開され、BMWの主力エンジンとなりましたが、この「ホットV」はのちにメルセデス・ベンツ(V8)、フェラーリ(V6)でも採用されるなど比較的ポピュラーなレイアウトとして普及することに。
革新の20年、BMWが残した功績
このN54とN63の登場によって、BMWは「エフィシェント・ダイナミクス」の名の下に、パフォーマンスと燃費、環境性能の融合を実現することになるのですが、これらエンジン、そしてBMWのエンジニアの努力によって、ターボ=低レスポンスという既成概念は完全に崩壊。
その後、他の自動車メーカーも次々とターボ化を進め、今や自然吸気エンジンのほうこそが希少な存在となりつつあります。
こうやってそれぞれの歴史を振り返ると、N54とN63は単なるエンジンではなく、BMWが未来を見据え、燃焼エンジンの限界に挑戦した象徴的存在でもあるといえるのかもしれません。
Image:BMW
なお、BMWの社名は、ドイツ語の「Bayerische Motoren Werke(バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ)」の頭文字を取ったもので、これは日本語に訳すと「バイエルン州のエンジン工場」という意味。
この名前は、BMWが創業した場所がドイツのバイエルン州であり、そして当初は航空機用エンジンを中心に、様々な種類のエンジンを製造していたことに由来していますが、これらのエポックメイキングなエンジンはBMWのルーツ、そしてDNAを端的にあらわす存在であると考えて良いかと思います。
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