| 装着されるタイヤは新車時に装着されていた「そのまんま」 |
今後、これ以上のコンディションを持つデロリアンDMC-12は出てこないかも
さて、アメリカはフロリダにてデロリアンDMC-12が販売中。
販売価格は98,000ドル(約1130万円)と安くはなく、現在売りに出ている他のデロリアンよりも30,000ドルほど高いもよう。
ただしこのデロリアンの走行距離はわずか5,397マイル(8,685キロ)、そしてなんと1986年から今まで温度管理がなされた倉庫にて保管されており、装着されているタイヤはなんと新車時に装着されていたもの「そのまんま」なのだそう。
おそらくは世界で最もコンディションの良いデロリアン
そういった内容を鑑みるに、この1983年式デロリアンは現在販売されているものの中でもっともコンディションに優れる個体だと考えてよく、少し前には(これよりも走行距離の多い)同様に程度の良いデロリアンが110,000万ドルで落札されたという記録があり、それを考慮するに98,000ドルでも高くはないのかもしれません。
さらにこのデロリアンについて、燃料ポンプが交換され、クーラント、オイル、フューエルラインすべてがフラッシングされており、機関の状態も抜群だと紹介されているため、購入後にお金が(そこまで)かからないのかも。
そしてインテリアカラーはよくある「グレー」ではなく「ブラック」。
しかもトランスミッションは3速ATではなく5速マニュアル。
ステンレスボディの状態もまさに「極上」。
デロリアンDMC-12はこんなクルマ
なお、このデロリアンというのは会社(デロリアン・モーター・カンパニー)の名前であり、実のところ車名は「DMC-12」。
ただしデロリアンはこの1車種のみを発売して倒産してしまったので、デロリアン=DMC-12という認識となっているわけですね。
デロリアン・モーター・カンパニーは、1975年にゼネラルモータースを退社したジョン・ザッカリー・デロリアンによって設立されていますが、その3年後、個人投資家やディーラー、北アイルランド工業開発庁などの関係者との交渉を経て、ベルファストのダンマリーに最初の工場を開設しています。
なお、同氏はGM在籍中にポンティアックGTO、ファイヤーバード、シボレー・コスワース・ベガなどの代表的なマッスルカーを開発したことで知られ、1973年にはガルウイング+4ロータリーエンジンを持つ「ロータリー・コルベット」を試作したことも(これが後のデロリアンDMC-12につながったと考えられる)。
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そしてこのデロリアンDMC-12はジョン・ザッカリー・デロリアンにとっての夢のクルマであり、そのために高い理想をもって開発にかかりますが、予算オーバーや経験不足といった難問をクリアし、1981年になんとか発売にこぎつけたのが「唯一の市販車」、デロリアンDMC-12。
設計はロータス、デザインはジウジアーロ、そしてリアエンジンにステンレスの無塗装ボディという例を見ないクルマでもあり、開発費がかさんだために高額な価格設定を行なわざるを得なくなった結果として「ほとんど売れず」、1982年に倒産にまで追い込まれています。
ただ、販売不振については、デロリアンDMC-12の発売直後にジョン・ザッカリー・デロリアンが麻薬密輸に関与した疑いをかけられたという事実も関係しており、結果的に無罪放免となったものの、デロリアンの名はこのときすでに(再生不可能なまでに)地に堕ちていたようですね。
かくしてデロリアンDMC-12が生産されたのは1981年から1982年という短い期間となっていますが、トータルで8,975台が製造されたと言われます。
デロリアンが有名になったのはやはりバック・トゥ・ザ・フューチャー
そんなデロリアンDMC-12について、その名が一気に広まったのが映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。
この映画に登場したことで「いったいなんだこのクルマは」という衝撃が全米に走ることになったといいますが、つまりそれまでは「アメリカ国内ですら、ほとんど知られていなかったクルマ」ということに。
実際のところ、映画ではV8エンジンのデロデロというサウンドが当てられていたものの、デロリアンに搭載されていたのはV6エンジンであり、しかしその「違い」に気づいた人はほぼいなかった、ともいわれます。
ちなみに当初(脚本執筆時)バック・トゥ・ザ・フューチャーに登場するタイムマシンは「(クルマではなく)冷蔵庫」の予定だったといい、しかしこれは配給会社から「子供が冷蔵庫の中に入ったり真似をすると危険」という物言いが付き、じゃあクルマにしようということになったわけですが、配給会社が提案してきたのが「マスタング」。
もしマスタングを使用すれば映画製作資金を上乗せするという提案があったそうなので、フォードからなんらかのオファーがあったのだと思われますが、制作チームは「デロリアンでないと」としてマスタング案を却下することになったわけですが、劇中には「デロリアンでないと成り立たない」シーンもいくつかあり、結果的にデロリアンで押し切って良かったのでしょうね。
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参照:Podium