| 日本に入ってくるのは「値上げ後のコルベット」になりそうだ |
新型シボレー・コルベット(C8)発表直後から流れている、発売二年目の「値上げ」。
この根拠としては、そもそも発売初年度のコルベットの価格が安すぎ、よって二年目は値上げしないと採算が取れない、というもの。
なお、コルベットはC8世代でミドシップへとスイッチし、その構造を大きく変更。
もちろんプラットフォームは新設計となりますが、シボレーは現在ミドシップスポーツを市販しておらず、流用できる車体がないためにC8コルベットは「完全」新設計となっています。
新型コルベットの発表前には「700−800万円説」が有力だった
これまでと同じFRレイアウトにて新設計を行うならまだしも、エンジンレイアウトを変更しての新規開発となると巨額の費用がかかることになり、それこそが「やったほうがいいとは認識していたが、54年もミドシップ化できなかった」理由そのもの。
シボレーのエンジニア「ミドシップ化できるチャンスを待つのに54年かかった」。なおC8コルベットの価格は30%増しの見込み
そしてミドシップ化されるとパフォーマンスが向上するのは容易に想像できたものの、誰もが気にしていたのがその価格。
完全新設計となると価格が大幅上昇するという予想があり、新型コルベット発表前には最低でも「30%増し」、上の方では「3倍」という予想も。
中にはGMのエンジニアが語ったものもあり、「倍くらいになるんじゃないか・・・」と多くの人が覚悟していたわけですね。
新型コルベットの情報続々。エントリーは500馬力/770万円、トップグレードは1000馬力/1550万円。「馬力あたり」の価格が世界でもっとも安いスーパーカーに?
新型コルベットの価格には身が驚く
そういった背景もあって、新型コルベットの価格については大方の予想が「7万ドル(770万円くらい)」というものでしたが、実際に発売されてみると「59,995ドル(650万円くらい)。
770万円でも「パフォーマンスを考えれば、世界で最も安いスーパーカー」であったものの、それを大きく下回る価格設定を行ってきたわけですね。
これについては、シボレーが新型コルベットを絶対に失敗させることはできないと考え、そのため意図的に「安すぎる」プライシングを行ってきたと思われます。
アメリカは昔からメーカーそのものが市場価格に敏感であり、iphoneであっても販売後の状況を見ながら、販売直後であっても「即値下げ」を行うことがあるほど(日本では考えられない)。
かつ、自動車販売においても、販売状況に応じてインセンティブが出るのもアメリカならでは(販売が鈍化すれば、値引きが大きくなる)。
GM「コルベットは若者にウケるはずだ。美しく、高い性能を持ち、手が届く価格であれば必ず売れる」。実際に(若者に)売れるかどうかを考えてみた
そして今回のモデルチェンジに際しては、これまでのモデルチェンジとはワケが違い、レイアウト変更とともに大きく値上げをして「もし売れなければ」コルベットという名がそこで終わってしまう(販売終了になってしまう)可能性も含むことに。
その場合、値下げすればコルべットの価値を大きく損ない、かといってFRに戻すこともできず、よってGMは当初「後戻りできるように」FRのコルベットも(モデルチェンジ以後のミドシップコルベットと)併売するという案もあったほど。
これだと、ミドシップ版コルベットが売れなかったときに「あれは試験的に発売しただけだったんでね・・・」という言い訳とともにFRへと主軸を戻すことができるわけですね。
フェラーリオーナーは新型コルベットをどう見ているのか?ど「フェラーリのオプション価格でこのクルマが買えるのか」等、その意見を見てみよう
ただ、シボレーは結局のところそうせず、FRのC7コルベットを販売終了とし、ミドシップのC8コルベット一本で行くことを決意。
つまり不退転の覚悟を決めたということになりますが、そこで採用したのが「市場貫通価格(ペネトレーションプライス)」という武器で、これは一般に、何らかの新製品を発売する際、そしてそのセグメントにおいて新製品が新参者である場合、いちはやい普及を目指して意図的に安価な価格設定を行うというもの。※よってC8コルベットの価格(59,995ドル)はC7コルベット(55,995ドル)からあまり上がっていない
その後、製品が普及した際の展開は「値上げ」「利益のより厚い上位モデルを投入する」ということになりますが、シボレーもこの手法を採用するということになり、発売二年目の2021年モデルから「大幅値上げ」を行う、というのが今回報じられている内容です。
なお、現在シボレーが「コルベット一台を売って失う」金額は2万ドル(220万円くらい)だと報じられ、これは相当に大きな額(それでも2万ドルによく収まったな、とは思う)。
よってシボレーとしてはこれを取り戻すべく2021年モデル、さらにその先のモデルで値上げを行ってゆくというのが今回の報道の内容です(さらに、C7コルベットでは発売翌年に2,000ドル、その次の年に2,000ドル値上げされたことについても触れている)。
もちろん、それと同時にシボレーは(コルベットの)ハイパーフォーマンスモデルを追加して「コストを回収」することになると思われ、C7コルベットではZ06が82,990ドル、ZR1が135,090ドルだったことを考えると、C8世代のZ06、ZR1ではそれらよりもかなり高い値付がなされることになるのかも。
そして気になるのは「日本でのC8コルベットの価格」ですが、もともとGMは日本での値付けをかなり高く行う傾向にあり、かつ初年度モデルのコルベットが入荷するという情報も(ディーラーに聞いてみたところ)ないため、おそらくは「2年目以降の、値上げされたコルベット」が入ってくることになりそうです。
よって、もし並行モノで初年度モデルのC8コルベットが入ってくるのであれば、多少割高でも「それを抑えておく」のが長期的に見て得策なのかもしれません。
VIA:Motor Trend