| テスラはこれまで「一部の熱狂的なファンの乗り物」だったが、どんどん一般化してきた現在、いかに顧客をつなぎとめるかが課題となる |
加えて、これまで「不在」だったライバルが山のように登場
さて、自動車メーカーが販売を伸ばすには「今いる顧客を維持すること」と「他ブランドの購買者を奪うこと」という2つの目標を達成する必要がありますが、2022年の調査によれば、テスラほどその両方がうまくいった自動車メーカーはなかったとのこと。
S&P Globalの市場調査によると、テスラユーザーにおける「はじめてテスラを購入する顧客の比率」は、他の自動車メーカーよりもはるかに高いといい、これは80%に登ります。
ちなみに「はじめてそのブランドのクルマを購入する人」はノマドと呼ばれており、テスラの場合は若いブランドなので、このノマドの比率が高いであろうこともうなずけます。
ただしテスラの顧客は忠誠心が高い
つまりテスラは「他ブランドの購入者を奪うこと」について非常に成功していると言えますが、驚くべきはもうひとつの要素である「今いる顧客を維持すること」にも長けており、一度テスラを購入し、その後他ブランドに移る層は”わずか”39%だと報じられています。
なお、「一度そのブランドのクルマを購入し、その後同じブランドのクルマを購入せずに別のブランドへと移る」人のことを「one-and-done(ワン・アンド・ダン)」と呼ぶそうですが、自動車業界の平均値は58%だとされるので、テスラの顧客はテスラに対して非常に忠誠心が高い(ブランドロイヤルティという言葉にも置き換えることができる)ということに。
もちろん、このブランドロイヤルティが高ければ高いほど「他社への流出が少なく」「ブランド内での買い替え」が促進されるので販売の維持そして伸長が容易になるということを意味します。
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車種が少ないほどブランドロイヤルティが高いという傾向も
一方、「ノマドをロイヤリストに変える」のが不得手な自動車メーカーはラム、マツダ、アウディ、GMC、フォルクスワーゲン、アキュラ、メルセデスベンツで、この中だとダッジがもっとも悪い数字を持っており、2022年だと同社の購入者の65%以上がノマド、そして80%近くがワンアンダン(離脱)という数字です。
逆にどういったブランドが顧客維持に長けているのかというと、上述のテスラはじめ、車種が比較的少ないブランドが名を連ね、例えば、スバル、ヒュンダイ、キアといったところ。
加えて、今のところロイヤリスト育成が苦手なフォルクスワーゲンであっても、新しいアッパーミッドサイズユーティリティービークル(アトラスなど)を投入することによって顧客をつなぎとめることに成功しており、前々年に比較すると数値が改善しているのだそう。
この例を見るに、新しいモデルを投入することは新規顧客を獲得することに大いに貢献することになりますが、たしかにフェラーリもカリフォルニア、ローマの購入者の80%が「はじめてフェラーリに参入する層」だとコメントしているので、そのファンの拡大に関しては新しいモデル、そしてなにより新しいセグメントへの進出が重要なのでしょうね。
ただ、S&Pグローバルのコンサルティング部門アソシエイト・ディレクター、エリン・ゴメス氏は、新しい市場セグメントにいち早く参入することだけが顧客をつなぎ止める方法ではないと語っており、「新しいセグメントの製品を作るという大規模かつ長期的な事業とは別に、自動車メーカーが現在のノマドのロイヤリティを高める方法があります。顧客基盤のロイヤリティ構成とノマドの行き先を理解することで、ブランドはよりターゲットを絞った効率的なマーケティングを行い、顧客を維持することができるようになるのです」。
テスラはこの10年、自動車ブランドの中でもノマドの割合が(ずば抜けて)最も高いとされていますが、顧客を維持するという課題は、テスラを除くすべての自動車メーカーが抱えているということになり、しかし一定のところまで販売台数を伸ばし、もはや(アーリーアダプラーのためだけのブランドではなくなり)コモディティ化したテスラがこの優位性を維持できるかどうかによって、テスラもその真価を問われることになりそうですね。
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参照:S&P Global