>テスラ(TESLA) >トヨタ/レクサス(Toyota/LEXUS)

トヨタはこのまま斜陽に?2040年にはトヨタの販売が現在の半分以下の400万台となり、テスラが800万台を販売して世界第二位の自動車メーカーになるというレポート

2023/02/24

トヨタ

| このレポートの内容は衝撃的ではあるが、ボクは「現実的であろう」とも考えている |

トヨタの考え方も理解でき、そしてEV以外の未来が来るのかもしれないが

さて、「2040年には、トヨタの自動車販売台数が400万台にまで落ち込み、逆にテスラの販売台数は800万台に達して業界トップになる」という衝撃のレポートが登場。

現在トヨタの生産台数は年間1,000万台くらい、そしてテスラは131万台くらいなので、ここ17年で大きな変化が生じると予測されているわけですが、EVのみに限ると、2025年にトヨタの販売台数は50万台、そしてテスラの販売台数は240万台くらいになるだろうという別のレポートもあるくらいなので(このレポートでは、トヨタのEV販売は2025年で世界10位だと見積もられている)、多くの国や地域でガソリン車はじめ内燃機関搭載車の販売が禁止される2035年から5年が経過した2040年では「トヨタ400万台、テスラ800万台」というのはけっこう現実的な数字なのかもしれません。

テスラ・モデルY
2025年までのEV販売勢力予想が公開!テスラは2024年にVWに追い越され、トヨタは中国メーカー3社に抜かれてなんとか10位、BMW、ホンダ、日産は蚊帳の外へ

| ただしこの予想はあくまでも「現在の数字をベースにしたもの」で不確定要素は含んでいない | そしてボクはEV販売に重要なのは「ブランド力」だと考えている さて、ブルームバーグが今回「電気自動車の販売 ...

続きを見る

トヨタが発表した「EV推進計画」はそんなにスゴくない

記事ではまず、2021年12月にトヨタが発表した「バッテリーEV戦略に関する説明会」での内容に触れており、ここでトヨタが大々的に掲げた「2030年までに30車種のEV発売」「2030年までにトヨタとレクサスで350万台(年間)のEVを販売」「2035年までにレクサス全車を完全EV化」「電動化に8兆円を投資」について検証していますが、そもそも(トヨタと世界自動車販売1、2を争う)フォルクスワーゲンだと2030年に70車種ものEVを発売する計画を推進していること、そしてフォルクスワーゲンの計画だと2030年には500万台のEVを販売する計算になること、さらにメルセデス・ベンツ、ヒョンデ/ジェネシス、ロールス・ロイスなど多くのブランドが2030年までにEVブランドに切り替わる予定であること、トヨタの「8兆円」にも及ぶ投資はVWの半分の規模であることを示していて、つまり「トヨタの計画はそこまで目を引くものではない」と述べています。

【動画】トヨタ/レクサスがバッテリーEVに関する新戦略を発表!販売と投資計画を上方修正、LFAやFJクルーザーの後継っぽいモデルも公開
【動画】トヨタ/レクサスがバッテリーEVに関する新戦略を発表!販売と投資計画を上方修正、LFAやFJクルーザー、MR2後継っぽいモデルも公開

| トヨタとレクサスはいったいいつの間にここまで計画を進めていたのか | 豊田章男社長らしくEV世代となっても「スポーツ」を忘れないようだ さて、トヨタは2021年12月14日に「バッテリーEV戦略に ...

続きを見る

これについては「もっとも」なところで、しかし市場としては「トヨタがようやくEVに本腰を入れた」として株価が(当時)大きく跳ね上がっています。

なお、この記事にて示している「2040年にはトヨタの販売が400万台、テスラが800万台」という数値については、米投資銀行であるパイパー・サンドラー社が公表した調査結果を参照しているそうで、これによると2040年でもっとも多くの自動車を販売するのはフォルクスワーゲンであり、これはシェア11%、その台数は920万台だと算出されています。

これに次ぐのがテスラの800万台ということになりますが、つまり2040年にはテスラは世界で2番めの自動車メーカーに成長しているだろう、と推測されているわけですね。

トヨタ・プリウス

このシナリオは現実的

ぼくはこのシナリオについて「現実的」だとも考える一方、「2040年における自動車業界ナンバーワンはBYDだろう」と推測。

ただ、このBYDはさておいても、トヨタとテスラの販売が逆転するということについては同意するよりもほかはなく、その理由としてはその「コスト」と「技術」。

まずコストにおいては、先日トヨタ自らが「新しく開発したEV専用プラットフォーム、E-TNGAはすでに世界レベルのコスト競争について行けない」としてEV専用戦略の再考(E-TNGAを捨て、安価なコストで製造できる新型プラットフォームを開発する)を決めたことがこれを端的に示しています。

ただ、これについては「トヨタの英断」だとも考えており、E-TNGA、そしてトヨタの(現在の)ブランド力にすがらず、正確に状況を判断し、これから起こりうる戦争に備えるという姿勢については高く評価しています。

トヨタ・クラウン
見通しが甘かった?トヨタが「このままEV計画を進めると採算が合わない」として計画の見直しと一部停止。クラウン、コンパクトクルーザーの開発停止も

| ボクは常々、2021年末の「EV新戦略」は株価対策のポーズでしかないと考えていたが | どう考えても、トヨタ含む日本の自動車メーカーのEVに対する姿勢は世界標準からかけ離れていた さて、トヨタが「 ...

続きを見る

しかしながら、この「低コストプラットフォーム」の投入については今から開発を行うことになるため、実際の市場投入は「5年後」くらいになると言われており、しかし5年後となると、現在のあまりに速いEV関連技術の進化速度を考慮した場合、「投入した頃にはまた時代遅れ」になるのかもしれません。

テスラ

その一方、EV業界におけるコスト戦略のトップを走っているのがテスラですが、こちらは共通化、効率化をキーワードにどんどん構造や設計をシンプルにし、その工程と使用するパーツの数を減らし続け、現在の車両原価は2017年に比較して「半分以下」。

さらにテスラはこれを半分にする計画を持っているといい、正直このレベルにはトヨタはもちろん、フォルクスワーゲンもついてこれないかもしれません(よって、2040年にVWのがナンバーワンになるという予測に対し、ぼくは懐疑的である。よってテスラに対抗しうるのは内製率の高いBYDだと考えている)。※テスラ最大の武器はこの「コスト」だとも考えられる

テスラ・モデルY
テスラの1台あたり生産コストは2017年に比較して半分以下の43%にまで下がっていた!そのほとんどは製造工程と設計の最適化によってなされている

| テスラはEV製造を第三の自動車の製造における革命だと考えている | そして、この革命の意味を理解できない自動車メーカーは淘汰されることになりそうだ さて、テスラのIR担当責任者がサンフランシスコに ...

続きを見る

そしてもうひとつの「技術」につき、これは「長くやっていればやっているほどノウハウが貯まる」のは否定できない事実だと考えています。

つまり、いち早くEVの実用化を行ったテスラ、ガソリンエンジンを切り捨ててエレクトリックブランドに転身を図ったBYDが(製品改良のための)より多くの情報を集めていることは間違いなく、トヨタと同じように「ガソリンだけがカーボンニュートラルに対する解決方法ではない」と公言するBMWですら早い段階からEVの販売を行い、そして現在も新世代EV「ノイエクラッセ」の発売に向けて動いており、BMWもやはり多くのノウハウを持ち、それを生かした製品づくりをしているものと思われます。

BMWが2025年から「50%安く、30%長距離を走行でき、30%早く充電できる」新型バッテリーを2025年から採用すると発表。やっぱりEVは買い時が難しいな・・・
BMWが2025年から「50%安く、30%長距離を走行でき、30%早く充電できる」新型バッテリーを2025年から採用すると発表。やっぱりEVは買い時が難しいな・・・

| 高額な費用を支払い購入した電気自動車の性能がどんどん劣化してゆくのはちょっと悲しい | しかも「劣化」は絶対的な性能の劣化、そして新製品に対する相対的な劣化も さて、BMWが次世代バッテリー技術の ...

続きを見る

ここからトヨタが巻き返すのは至難の業だろう

そして各社ともにEVに関する研究を積むうちに新しい事実もどんどん発見されており、たとえば「(ワンペダルドライブによる)回生ブレーキで電力を貯める」ことが実は航続距離の伸長につながらないということもその一つ。

ポルシェ・タイカンには既存ポルシェ、他メーカー製EVとは全く異なるブレーキが搭載されている!「油圧ブレーキは10%しか作動しない」「ワンペダルは無駄」
ポルシェ・タイカンには既存ポルシェ、他メーカー製EVとは全く異なるブレーキが搭載されている!「油圧ブレーキは10%しか作動しない」「ワンペダルは無駄」

| やはりポルシェはいい意味で常識にとらわれない | 目的を達成するためには何が最適かを常に考え、行動するようだ さて、ポルシェのブレーキといえば「エンジンパワーの3倍のストッピングパワーを持つ」「宇 ...

続きを見る

つまり常識が覆されてしまったということになりますが、各社の出願する特許を見ても、これまでの「常識外」の技術が多数見られます。

マクラーレンがピュアエレクトリック/ハイブリッドスポーツ向けの電動アクスル特許を出願!前代未聞の「1アクスル3モーター」にて常識を超えた運動性能を発揮させる?
マクラーレンがピュアエレクトリック/ハイブリッドスポーツ向けの電動アクスル特許を出願!前代未聞の「1アクスル3モーター」にて常識を超えた運動性能を発揮させる?

| どう考えても2モーターのほうが効率が良さそうだが、マクラーレンには「秘策」があるものと思われる | 今のところ「1アクスル3モーター」は例を見ない さて、マクラーレンがエレクトリックパワートレイン ...

続きを見る

そしてこういった技術は「実際にやってみないと」わからない部分であり、しかしながらトヨタは今のところEVに関する経験が少ないために「EVに関する進化」が他社に比較すると遅いということが考えられます。

トヨタbZ4Xにまた災難!北欧メディアのテストでは「公称航続距離の50%以下」しか走らずトヨタが調査開始。なおテスラは70%、VWとメルセデスは67%
トヨタbZ4Xにまた災難!北欧メディアのテストでは「公称航続距離の50%以下」しか走らずトヨタが調査を開始。なおテスラは70%、VWとメルセデスは67%

| このままではますますトヨタが「EVに対して消極的」になってしまいそうだ | このままトヨタが存在感を発揮できないのか、それとも巻き返しを図ることができるのかには注目したい さて、トヨタが満を持して ...

続きを見る

実際のところ、bZ4XやレクサスRZについては試買テストの結果が”悲惨な状況”となっていて、航続距離が短い、充電時間が長い、価格が高いという三重苦を背負っており、現時点ではこれを解決できる方法が見当たらず、解決できる可能性があるとすれば新型プラットフォームを採用したEVが登場する「5年先」。

新型レクサスRZ 450eついに発表!スピンドルグリルを捨てて「スピンドルボディ」へと昇華、駆動方式は4WD、出力は313馬力、航続距離は450km

これって本末転倒?レクサスが「RZ450eの航続距離の短さをカバーするため、ガソリンモデルのレクサスの無料貸し出しを行う」と発表
これって本末転倒?レクサスが「RZ450eの航続距離の短さをカバーするため、ガソリンモデルのレクサスの無料貸し出しを行う」と発表

| トヨタ / レクサスのEVは根本的に性能的・価格的な競争力が高くないことが指摘されている | もちろんトヨタもそれは十分に理解しており、現在対策中だと思われるが さて、レクサスは初の(限定ではない ...

続きを見る

ただ、5年後となるとその間にテスラはもちろんフォルクスワーゲン、GM、フォード、ステランティス、そして中国からはBYDやGeelyといった会社が「実際にEVを販売し、そこから得たフィードバック」をもとに、さらに優れたEVを開発し投入している可能性が高く、よってトヨタがいかにこれらを追ったとしても、ライバルたちはそれよりも速く先に行くんじゃないかと考えているわけですね。

これが「2040年にはトヨタの販売が400万台、テスラは800万台」という現実的な理由と根拠ということになりそうですが、もちろんもっとも危機感を抱いているのはトヨタだと思われ、しかしこの期に及んでも「EVだけに注力するのは危険」という発言も見られ、まだまだ「煮え切らない」状況であるようです。

トヨタ・プリウス
トヨタ「EVに全面的に取り組むことは、ビジネス上の判断として間違っているだけでなく、環境にも悪い」。ある意味ではトヨタの考え方も理解でき、もしかすると生き残るのはトヨタかも

| ただしトヨタが生き残るのは「トヨタが想定する理由」とは異なる要因からだと考える | どう考えても、普及価格帯のEVは中国製EVには勝てないだろう さて、「もっとも環境に優しくない自動車メーカー」「 ...

続きを見る

このような環境だと、フォルクスワーゲンのように「ガソリン車を捨てる」覚悟を決め、さらにはメルセデス・ベンツのように「ガソリン車の工場をEV用にトランスフォームする」と宣言し実行している他社には追いつくことができないのかもしれず、つまり「逃げ道」を確保しているトヨタ、自ら後戻りする道を断ってしまったフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツとでは、自ずとEVに対する真剣さが変わってくることになり、これが結果につながってくるのかもしれません。

もちろん、トヨタの「なんとしても雇用を守らねばならないので、リスクヘッジは必要」という考え方も理解でき、ここから代替燃料や水素の普及など”ワイルドカード”が発動し、EVのみに未来を絞っていたほかの自動車メーカーがバッタバッタと潰れてゆく可能性も否定できませんが、とにかくこのままでは「トヨタはヤバい」ということは間違いなく、状況を見守りたいところですね。

合わせて読みたい、関連投稿

BMW 4シリーズ グランクーペ
BMW「新型V6、V8ガソリンエンジンを開発中」。おそらくBMWは高コストなPHEVを嫌い、ガソリンエンジン単体で排ガス規制に挑むようだ

| 非常に困難な道のりだとは思うが、これが実現できればメルセデス・ベンツを大きく引き離すこともできそう | ただし常識的に考えると、とても将来の排ガス規制はガソリンエンジン単体で乗り切れるものではない ...

続きを見る

トヨタ・クラウン
トヨタは儲からない会社になったのか・・・?販売台数1/8のテスラに利益総額を逆転され、1台あたり利益でもテスラは132万円、トヨタは16万円と大きく差をつけられる

| トヨタはかつてテスラと提携していたが、「テスラから学ぶものはない」として提携を解消している | 当時、トヨタはまだテスラの考え方を理解できなかったのだろう さて、トヨタが第三四半期の決算を発表し、 ...

続きを見る

トヨタ
トヨタが経済フォーラムにて「なぜピュアEVに注力しないのか」「現時点ではPHEVが最適」だと改めて主張。言っていることは理解できるが、両手を挙げては賛同できない

| トヨタ同様の意見を述べる会社は他にもあるが、他はちゃんとEVに取り組み、EVを発売している | やはり最低限の「やること」は(間違っていると思っても)やらないと、耳を貸す人も少なくなってしまう ダ ...

続きを見る

参照:President Online

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->テスラ(TESLA), >トヨタ/レクサス(Toyota/LEXUS)
-, , , , , ,