| テスラの至上命題は「販売台数の最大化」であり利益追求ではない |
そこには生産効率の追求に加え「クリーンエナジーの普及」という大前提があるようだ
さて、テスラCEO、イーロン・マスク氏は「台数を販売することが最優先であり、そのためには利益率を縮小させてでも値下げを行うことを厭わない」と発言しており、実際にこれまでにも度重なる値下げを行っています。
そしてさらに今回報じられているのが米国と中国での値下げであり、それぞれの内容を見てみましょう。
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アメリカ市場向けとしては「新グレード」追加
まずはテスラのお膝元であるアメリカ市場についてですが、モデルSとモデルXに安価なグレード「スタンダードレンジ」を再設定。
現在テスラの販売における主力はモデルYとモデル3であり、モデルSとモデルXが占める販売構成比は米国だとわずか5%にとどまります。
これは価格が高価であること、メルセデス・ベンツやBMW、ポルシェ、ルシードなど様々な既存・新興自動車メーカーが対抗馬をぶつけてきたこと、そして(価格レンジが高いので)米国にて導入されている税制優遇措置の対象外であることなどが理由となっていますが、今回はおおよそ1万ドル(現在の為替レートで約140円)の値下げを新グレードの追加とともに行っており、需要を喚起する狙いがあるものと思われます。
なお、この新しいスタンダードレンジにつき、モデルSだと78,490ドル、モデルXでは88,490ドルからのスタートとなっていて、一回の満充電あたり航続可能距離は(モデルSで)320マイル(約515km)、オプションの21インチ(アラクニッド)ホイールを装着した場合は298マイル(480km)にまで減少します。※モデルXだと標準ホイール(20インチ)で269マイル、22インチホイール装着で255マイル
一方、これまででもっとも安価であった「ロングレンジ」は405マイル(652km)なので、プライスカットとともに航続可能距離が大きく下がってしまうわけですね。
そのほか、スペックを見てみると、新しいモデルS スタンダードレンジの0-60マイル(96km)加速は3.7秒、そしてモデルS ロングレンジは3.1秒、トップレンジのモデルS プレッドは1.99秒。
ちょっと興味深いのは、「スタンダードレンジ」「ロングレンジ」ともに同じバッテリーパックを装着しているとのことで、つまりテスラはスタンダードレンジの性能をソフトウエアの制御によって制限しており、しかしテスラのアプリ内で「課金」することでこの制限を解除できるとも報じられています。
参考までに、テスラはこの「航続距離」「加速」のみならず自動運転(FSD)含む他の機能についても最初からすべて車両に搭載しており、それぞれ課金によって使用が可能となる例が大半です。
これは「グレードやオプションに応じてクルマを作り分けるほうがコストがかかるので、まとめて同じ仕様を作り、ソフトによって機能を制限してグレードごとの差をつけるほうが結局は安上がり」「安価なグレードを購入したとしても、後にユーザーはアップグレードを望み、課金するだろう」という戦略によるものですが、今回のスタンダードレンジについても、「安いから」といって購入したユーザーが結局は課金してしまうことになるのかもしれません。
テスラは中国でも値下げ
そしてテスラは中国でも値下げを実施していますが、こちらは同一週で二度目、そしてアメリカのように「廉価版を導入せず、現状のグレードをそのまま値下げ」。
まずは2日前にはモデルY「ロングレンジ」「パフォーマンス」の価格を(14,000元=約28万円)引き下げ、そしてモデル3の保険補助についても対象期間を9月末まで延長しています。
そして今回はモデルSとモデルXの価格を最大で70,000元(約140万円)引き下げることとなっていますが、今まで中国市場向けとしてモデルSとモデルXの価格をここまで大きく引き下げた例はないと記憶しており、この両モデルについては「けっこう売上が厳しい」のかもしれません。
なお、これらの売上が厳しくなったのは、上述のように「当時、圧倒的に売れていた」モデルSやモデルXに照準を合わせた商品を各社ともこぞって投入してきたためで、もう少しすればモデル3やモデルYでも同じことが起きるかもしれません。
もちろん、それを見越してテスラは「さらに安いモデル」の投入、モデル3とモデルYについても値下げに耐えうるだけの利益を創出できるように改良を続けているのだと思われますが、EVの世界は「ガソリン車では考えられないほどの」速度でものごとが進んでいる、ということを伺わせます。
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