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「EVが売れてない」「EVが売れすぎて在庫がない」。両極端な報道にアナリストが答え、「それはどちらも正しく、単なる数字のマジックです」

2023/08/21

メルセデス・ベンツ

| EVは一定の需要があるものの、現在はまだ販売現場やプロモーション、消費者の準備が追いついていない |

まだまだ状況は流動的であり、どう転ぶかもわからない

さて、EV市場については「人気が高くEVが足りない」「いやEVの在庫が積み上がっている」という真逆の報道がなされており、いったいどちらが正しいのかわからないところもありますが、最新の報道だとこれは「ある意味で両方とも正しい」のだそう。

今年7月、電気自動車は内燃機関自動車よりも長くディーラーに置かれているという調査結果が発表され、現在では(平均値を遥かに上回る)100日以上放置されているとの報告もあり、しかし需要が冷え込んでいるというのは「そう単純に判断できることではない」といいます。

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現在、販売可能なEV在庫の6.7%しか販売されていない

最新の統計によると、北米市場において、今年販売されたEV車はなんと「販売可能な在庫の6.7%に過ぎなかった」といい、消費者はEVを求めているものの販売現場が追いつていない可能性があるとされ、JDパワーのデータ&アナリティクス担当副社長、タイソン・ジョミニー氏は「EVの需要が鈍化しているという話は明らかに誤りだ」と指摘。

そしてこの「数字と現実の乖離」について、まず、パンデミック(世界的大流行)によって供給指標が軒並み異常な様相を呈しているのだといい、GMの広報担当者であるジム・カイン氏が語るように、「現在、サプライチェーンの逼迫が解消し、自動車メーカー各社がようやく以前のようなペースで自動車を生産できるようになった今」、EVの生産が急拡大していることがひとつの原因となっているもよう。

さらには「新車発売時によくある(そのクルマが周知されていないがための)販売台数の少なさに対し、自動車メーカー側が急激に生産を拡大させていること」が供給台数の増加と在庫拡大を招いていると言い、自動車メーカー側はEVを売らねばと考えてたくさん作るものの、消費者は漠然と「EVが欲しい」と考えながらもどういった選択肢があるのかについて十分な情報を得ておらず、ここにひとつのミスマッチがあるものと考えられます(一頃に比べて多数のEVが登場しており、新型EVの情報が消費者に届いてない可能性も)。

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そしてもうひとつ、生産したEVがディーラーへと「輸送中」である場合も在庫にカウントされるとされ(つまり生産が終了した瞬間から在庫となるようだ)、大量に製造されたEVがディーラーへと輸送中だとしても在庫日数に参入されている、とのこと。

つまりは急速に増えた生産に対して輸送や販売が追いつかず、そのため「生産に対する販売台数が少ないので」EVの人気がないように見えるものの、これは風上と風下とのバランスが一時的に崩れているだけであり、「必ずしもEVの人気がなくなったわけではない」というのがアナリストの意見です。

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EVはまだまだアーリーアダプターの乗り物

とはいえ、まだまだEVの普及に壁があるのも間違いはなく、たとえばフォードF-150ライトニングは発表当初大きな話題を呼び、非常に大きなデマンドがあったとされ、しかしそれが落ち着いた今、「現在、F-150の購入者の多くがEV版のライトニングではなく、ガソリンエンジンモデルを購入している」とも。

前出のアナリストによると「我々はEV時代の黎明期にいる。EVの普及が進む段階においては、需要が突如止まったり、また始まったりすることもあるでしょう。2030年までにすべての人がEVに乗るようになるという考えは正確ではないということに多くの人が気づき始めていますが、EVが自動車業界で大きな力を持つようになることは明らかです」。

つまり、まだまだEVはアーリーアダプターの乗り物の範囲に留まっており、もしかするとレイトマジョリティまでには普及が進まないかもしれない、という考え方が示されています。

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なお、アーリーアダプターとは「イノベーター理論」における消費行動タイプのひとつであり、「新しいものを積極的に取り入れる傾向がある人々で、消費者全体の13.5%存在する」と言われます。

そしてこのアーリーアダプターよりも早く新しい製品に飛びつくのは「イノベーター(全体の2.5%)」、そしてアーリーアダプターの後に新しい製品を受け入れるのは「アーリーマジョリティ(34%)で、これらの人々は平均より積極的に新しい製品に馴染もうとする人々です。

そしてこの後、「その製品が広く浸透してから」ようやく手を出す人々がレイトマジョリティ(34%)であり、最後まで新しいものに否定的で拒否反応を示す人々が「ラガード層(16%)」。

これらの人々は最後までEVへの移行を拒む人々なのかもしれませんね。

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参照:Autonews, etc.

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