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中国EVメーカーの急激な成長に欧州自動車メーカーも戦略変更を迫られる。VWは「さらにEV強化」、メルセデスは「ガソリン車生産を再考」

2023/09/06

メルセデス・ベンツ

| ボク的には「中国製EVと直接戦っても勝ち目はない」と考えている |

トヨタやBMW、メルセデス・ベンツのように「中国の自動車メーカーと競合しない」領域に出てゆくことが正しい判断ではないか

さて、フォルクスワーゲンが2027年までに”当初の計画より1台多い”11台の新型電気自動車を投入する意向を明らかにしたもよう。

これはVWのトーマス・シェーファー最高経営責任者(CEO)がメディアに対して語ったもので、しかし今ひとつそのEVブランド「ID.」が思うように売れていないと報じられていることからすると意外なコメントでもあります。

ただ、そういった「想定通りに物事が進まない」にもかかわらず、フォルクスワーゲンは(少し前に掲げた)「2035年までにガソリン車全廃」という目標について死守する構えを崩しておらず、実際にピュアエレクトリックカーの開発に対して相当額の投資を行っていることも方々で報じられるところです。

フォルクスワーゲンは「価格競争に巻き込まれない」?

現在フォルクスワーゲンがもっともコストを投じているのはSSPプラットフォームですが、フォルクスワーゲンが「予定よりも多くの」モデルを投入する理由としては、少しでも多くの台数を販売することでスケールメリットを享受し、このSSPプラットフォームの開発コストを吸収しようという意図があるのかもしれません。

さらに興味深いのはトーマス・シェーファーCEOが「我々は価格競争には参加しません。私の経験では、価格によって市場シェアを買うことは持続可能ではありません」と述べていること。

フォルクスワーゲンはその主力となる、しかしテスラの仕掛けた価格戦争によって値下げ合戦に陥っている中国市場において大幅値下げを行っており、つまり今回のコメントと現実とは相反するという矛盾が生じているのも事実です。

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さらに欧州市場においても需要が低迷したことで生産を一時停止するという憂き目にも遭っているものの、トーマス・シェーファーCEOはフォルクスワーゲンのブランド力を信頼しており、近い将来、状況は改善するという予想についても述べており、「ヨーロッパにおける電気自動車のシェアは、今後数年で大幅に上昇すると想定しています。現在の電気自動車の人気低下は 一時的なものに過ぎません」とも。

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このフォルクスワーゲンの予測が楽観的であるのか現実的であるのかは現在答えを出すことが難しく、しかし他社の動向がある程度の答えを示唆しているのでは、とも考えています。

欧州自動車メーカーは軒並みEVの将来に対して悲観的に

現在ミュンヘンではIAAモビリティショーが開催中ではありますが、そこでは多くの欧州自動車メーカーが悲観的になっていて、その理由としては「EVの人気の伸び悩み」ではなく「中国勢の躍進」。

今回IAAに出展している企業の41%が中国を拠点とするEVメーカーだそうですが、これはつまり中国のEVメーカーが欧州市場を狙っているということにほかなりません。

そして中国製EVは恐るべき価格競争力を持っており、ステランティスのカルロス・タバレスCEO、ルノーのルカ・デ・メオCEOも中国製EVのコストに対しては大きな警戒感を示しており、「すでに欧州の自動車メーカーのEVは価格的優位性を持たない」とも。※クルマを足として捉える人は(価格優先で)中国製EVを選ぶ傾向が鮮明となっている

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ステランティス、そしてルノーとも主に普及価格帯のクルマを作っているため、とくに中国製EVとの「直接競合する部分」が大きいのだと思われますが、BMWのオリバー・ツィプセCEOも「近い将来、普及価格帯のクルマはすべて中国車に市場を奪われ、我々欧州の自動車メーカーが存在する余地がなくなるだろう」と語っており、欧州における危機感が相当なものであることもわかります。

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そしてこういった状況を反映してか、「2030年にはEVオンリー」のラインアップを目指すとしていたメルセデス・ベンツは現状を鑑みて「正直言って、2030年までにEVのみのラインナップとすることは難しい。おそらくはガソリン車を作り続けることになるだろう」とコメント。

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現状、中国の自動車メーカーが(欧州の自動車メーカーにとっての)脅威となるのは「EVのみ」だと考えてよく、それを無視してEVオンリーを目指すと売上が激減してしまう可能性があり、しかしガソリン車を作り続けていれば、それらは中国車に侵食されることはなく、うまくゆけば(ガソリン車から撤退した)ほかの自動車メーカーのシェアを拾うことも可能です。

とにもかくにも、(欧州の自動車メーカーにとって)今までは自分たちが主役であったものの、中国メーカーという思わぬ強力なプレーヤーが登場したことで一気に自分たちが脇役に押しやられつつあることは間違いなく、現状を正しく認識して対処せねば会社の存続すら危ぶまれる状態なのではないか、とも考えています(中国製EVとバッティングすることだけは避けねばならない)。

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参照:Automobilewoche, Reuters, AFP, etc.

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