| まさかここまでの短期間で中国の自動車業界が世界最大に成長するとは |
中国はここ数年の「世界的な混乱」をうまく利用している
さて、中国が世界最大の自動車市場となって久しい状態ですが、中国は2022年に332万台の自動車を輸出し、ドイツを抜いて第2位の輸出国になったと報じられたばかり。
そして今回、2023年第1四半期には日本を抜いて世界一の自動車輸出国になったとのこと。
かつて中国車は、その品質と安全性で評判が芳しくなかったものの、そんな時代はとっくに終わっており、今や中国車の品質は老舗ライバルメーカーと真っ向から競い合うことができるほどにまで改善され、自動車業界における優位性を不動のものとしつつあります。
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やはりその牽引役は「EV」
もともと中国車は安価な人件費をバックボーンとした「価格優位性のある自動車づくり」を得意としていたものの,直近では中国の電気自動車に関する専門知識(世界最大のEV市場である)の高まりが中国車に対する人々の認識を徐々に変えつつあり、その存在感の強化につながっています。
S&Pグローバルによれば、2022年の中国の自動車輸出台数は332万台で、2021年比で57%増加していますが、2023年1月から4月にかけてでだと中国の自動車輸出台数は前年比76%増の約150万台となり、上述の通り日本を抜いて世界第1位へ。
中国国内市場の新車需要は減少しているものの、輸出市場の成長によって中国の自動車産業は多忙を極めているといい、さらに中国の自動車メーカーを有利にしているのは(海外のライバルとは異なり)中国の自動車メーカーは深刻なサプライチェーン問題や半導体不足に見舞われていないということ。
なぜならば、そういったパーツの供給元の大半が中国だからであり、中国のサプライヤーは中国の自動車メーカーへと優先的にパーツを供給しているわけですね(もしかすると中国政府の”そういった”指導があるのかも)。
中国の自動車メーカーは「海外」に活路を見出す
なお、中国の自動車メーカーが輸出を増加させている理由はいくつかあり、ひとつは中国国内での競争が過密になり、現地自動車メーカーとしては国内で競争するよりも「輸出」のほうが利益を稼ぎやすいため。
よって多くの中国メーカーが「海外」に目を向け、そのために輸出が拡大していると報じられます。
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そしてもうひとつの理由は「ロシアのウクライナ侵攻」。
中国の自動車メーカーはウクライナ戦争後にロシアの自動車事情が激変したことをうまく利用しており、というのもロシアでは戦争前には60社ほどの自動車メーカーが活動していたものの、今では(撤退によって)14社しか残っておらず、地元のラーダ、GAZ、UAZを除くと、残りのほぼすべてのクルマが中国からの輸入車であるもよう。
なお、ロシアにおける2023年の自動車予想販売台数は76万台(戦前の150万台レベルから減少)で、現在中国車がこの大半を占めているとされ、となると2023年には(中国車がロシア市場にて占めていたシェアである5%から)大きく市場占有率を拡大しそう。
参考までに、こちらは中国の自動車メーカーの輸出高ですが、SAIC(上海汽車)が圧倒的であることがわかり、2番手はチェリー(奇端)、そして3番手はテスラ(日本や欧州などに輸出している)といった並びです。※2022年通年のデータ
そしてこちらは「輸出先」。
メキシコ、サウジアラビア、チリ、ベルギー、ロシア、オーストラリア、イギリスといった国が見られ、しかしその半分は「その他」。
これを見るに、相当に多様な国へと輸出していることがわかり、2023年には輸出高同様に変動が見られるかもしれません。
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参照:S&P Global