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自動車メーカー各社がEVへの移行速度を緩め、内燃機関に再注目する今こそが「合成燃料」にとってのチャンス?合成燃料+ハイブリッド / PHEVの組み合わせによって脱炭素化を目指す動きが加速

メルセデス・ベンツ

| 「EVこそが未来」とされた数年前こそ、合成燃料は亜流として注目を浴びなかったが |

情勢の変化によって何に注目が集まるのかはわからないものである

さて、現在の自動車業界では「未来」と目されていたEVの販売が急速に減少しており(ただし北米と中国は比較的好調)、その傾向は今後も加速するのではという見方が大勢を占めています。

そこで現在自動車メーカー各社は「次の未来」を模索しているわけですが、短期的には多くのメーカーがハイブリッドあるいはPHEVに可能性を見出していて(これはある意味で”電動化における後退”であるともいえる)、しかしこれらは内燃機関を使用しているため「カーボンフリー」とはゆかないわけですね。

そしてまた一部の自動車メーカーが開発を進めるのが合成燃料(代替燃料、あるいはEフューエル)で、EVの将来が不透明なことから、そして内燃機関が想定よりも長く生き残る可能性があることから「カーボンフリーに向けた現実的な手段」として再注目を集めています。

合成燃料とはなんぞや

そこでこの合成燃料について振り返ってみると、合成燃料は天然ガス、石炭、バイオマス、二酸化炭素と水の混合物などの再生可能な原料から製造される合成ガソリンやディーゼル燃料のことを指し、広義では太陽光、風力、波力などの再生可能エネルギーを使って生成された電力も含まれます。

合成燃料を作るために使用される炭素源はさまざまで、通常は「ガスから液体への変換(GTL)」、「バイオマスから液体への変換(BTL)」、「および電力から液体への変換(PTL)」の3つのタイプに分類され、合成燃料は主にフィッシャー・トロプシュ法、メタノール合成法、またはメタンの直接変換によって製造され、たとえばガスから液体への変換によって生成される合成燃料にはフィッシャー・トロプシュ法が用いられ、この方法では合成ガスを使用して一酸化炭素、二酸化炭素、および水素を液体炭化水素に変換され、通常、水素は電気分解によって水から取り出されます。

バイオマスから液体への合成燃料の製造プロセスは似ていますが、二酸化炭素はバイオマスをガス化することで供給されるといい、つまりはいずれの方法を採用しても「工程が複雑でコストがかかる」ことが現時点での課題でもあるわけですね。

ただ、「液体」となった合成燃料は、内燃機関を動かす際、理論的には炭素排出を生じることなく使用でき、この「理論的」というのは「合成燃料生成プロセスにおいて、あらかじめ二酸化炭素を吸収しており、その後の燃焼で二酸化炭素を排出したとしても”プラスマイナスゼロ”になるから」。

そのほかにも合成燃料にはいくつかの利点があり、まず、合成燃料は化石燃料と比較してエンジンの燃焼サイクル中に排出される局所的な汚染物質が少なく、温室効果ガス排出量を削減可能ということ。

特に長距離の輸送用途、例えば貨物船やトラック、航空機においてその効果が大きく、合成燃料は化石燃料と同じエネルギー密度を持ち、同様の長距離走行を可能にするため、電気自動車に対しても優位性を持ち、特に重荷を担う用途においては、合成燃料が電気自動車よりも有利であることを意味します。

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合成燃料(Eフューエル)製造メーカー「合成燃料が一般向けの自動車用として提供されるのはずいぶん先です。まずは航空機や船舶など、内燃機関の代替がない業界からです」
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さらに、合成燃料は既存のインフラや技術に簡単に統合できるという利点があり、バイオ燃料とは異なって、合成燃料は車両に追加の技術を導入することなく使用可能だとされ、合成燃料はほとんどの従来型内燃機関で修正なしに使用できるため、ガソリンスタンドなどの流通ネットワークに簡単に導入することが可能です。

このため、合成燃料の採用は、より持続可能な交通手段への移行を容易にし、合成燃料は、保存や輸送も簡便で柔軟性があるため、「過渡期的な技術」ではあるものの、ハイブリッドやプラグインハイブリッドとの併用によってカーボンフリーを”実生活レベルで”実現できる可能性が高いと見られているわけですね。

合成燃料に対する取り組みは現在では「バラバラ」

現在、いくつかの自動車メーカーや燃料メーカーは、合成燃料インフラ拡充や技術・製造開発に積極的に取り組んでいて、ポルシェやランボルギーニはその筆頭。

一方でアウディは2017年に再生可能エネルギー、水、二酸化炭素を使ってeディーゼルを生産する新たなパイロット工場の開設を発表し、このeディーゼルは内燃機関においてほぼ炭素中立を実現させることができたものの、しかしアウディは「合成燃料が同社の未来ではない」と判断しこのプロジェクトを終了させることに(ただし一定の有用性を認め、完全電動化までの橋渡し的な役割を果たすと述べている)。

メルセデス・ベンツ
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加えてフォルクスワーゲンも「現時点では合成燃料は有用な解決策ではない」、ロータスも「合成燃料に付いて研究することは会社の規模的にコストが割に合っわない」、メルセデス・ベンツは「我々の選択肢の中にはない」として排除の意向を示すなど、とにかく各社間で対応が分かれるのがこの合成燃料。

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ロータス
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なお、ポルシェは上述の「積極派」の中でももっとも進んでいると考えてよく、チリにパイロット生産設備を昨年開設しており、今後数年以内に合成燃料を年間最大で約5,500万リットル生産する計画を示しています。

このほか世界最大の石油生産企業であるサウジアラビアのアラムコも、ヒョンデ、ルノー、ステランティスなどの自動車メーカーと提携し、持続可能な燃料の開発と合成燃料技術への投資を進めていると報じられるので、ジワジワとその存在感を増しつつあるのかもしれません。

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ただし、合成燃料にはいくつかの欠点もあり、合成燃料は化石燃料と同じエネルギー密度を持っているものの、電気自動車のバッテリーと比較するとエネルギー効率が低く、つまり効率性において劣ります。

さらに(上で述べたように)合成燃料の製造プロセスは高コストで複雑で、温室効果ガスの排出は削減される一方、合成燃料を燃焼させると硫黄酸化物や窒素酸化物といった有害ガスが発生するという問題も。

こういった課題もあり、合成燃料の使用によるカーボンフリーの実現は「電気自動車よりも劣っている」と見なされてきましたが、今こそ真剣に合成燃料を検討する時期だという傾向がより強くなっており、多くの自動車メーカーが電気自動車の生産と開発から後退し、EVの販売も鈍化している現在、加えてCO2排出規制がますます厳しくなり、自動車メーカーへの圧力が高まっている今こそ「合成燃料」が一つの解決策として機能する可能性が高く、「ハイブリッド車が内燃機関を完全に放棄することよりも、ハイブリッド車に合成燃料wお用いることこそが排出量削減への進化の一歩としてより適している」との見解も強まっているわけですね。※これまで合成燃料は一部の内燃機関愛好家のためのものだと認識されてきたが、より一般に普及させ、文字通りガソリンの”代替”問いする考え方が主流になりつつある

こういった背景から、合成燃料の導入はハイブリッド車の利点を強化し、従来の化石燃料と電気自動車の間を埋める中間的な解決策となる可能性があるというのがここ最近強まっている傾向ですが、現在の移ろいやすい情勢において、まさに「何にどう注目がなされるかわからず」選択肢をより多く持っておくことが今後の生き残りに際しての最重要事項なのかもしれません。

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