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BMWのCEOがEUの合成燃料認可に対する姿勢を批判。「表面上だけでこれを認めたにすぎず、実用化のために何も行っていないため、このままでは内燃機関が滅ぶだろう」

BMW

| BMWは例外的に「EVの販売を伸ばしている」自動車メーカーではあるが、それでもガソリン車の存続を強く支持している |

トヨタ同様、マルチパワートレーン戦略を採用する企業のひとつでもある

さて、現在なんとなく曖昧になってきているのが「2035年以降の内燃機関搭載車の販売禁止」。

もともとEUは2022年に「2035年には内燃機関を積むクルマの販売はすべて禁止」としていたわけですが、ドイツ含む(自動車産業を持つ)いくつかのEU加盟国が規制を緩和するよう、そして合成燃料を使用して内燃機関の寿命を延ばすようEUに対し圧力をかけたため、当初の計画が修正され、「(CO2排出量が理論上ゼロとなる)合成燃料=Eフューエルの使用を前提に」内燃機関の延命を認めています(世間ではガソリンエンジン車の販売期間が延長されたように受け止められているが、従来のガソリンを使用する内燃機関は現時点では2035年以降販売不可ということは変わらず、内燃機関搭載車が販売可能となるのは少量生産車メーカーが製造するクルマ、それ以外だと合成燃料しか使用できないクルマのみである)。

ポルシェ
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BMW「このままでは内燃機関が滅びることになる」

そしてこういった状況に対して警鐘を鳴らしたのがBMWのCEO、オリバー・ツィプセ氏であり、同氏は「たとえ合成燃料が認可されたとしても、今の状況では事実上、2035年に内燃機関が終了してしまうことになるであろう」。

ただし同氏はそれを望んでいるわけではなく、むしろ内燃機関をできるだけ長く存続させたいと考えており、実際にBMWは多くの他の自動車メーカーとは異なって「内燃機関の廃止期限を設けていない」自動車メーカー。

ちなみにBMWは(これも他の自動車メーカーとは異なって)EVの販売を伸ばしている数少ないメーカーのひとつであり、EVの販売構成比は全出荷台数の15.7%を占めるに至っています(2023年の12.6%からの増加)。

つまり「EVが売れないから」完全EVシフトへの目標を緩和したメルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェとは違ってBMWでは「EVが売れており」、しかしBMWは内燃機関の存続を強く希望しているという事実があり、実際にオリバー・ツィプセ氏は「内燃技術の全面禁止は間違っていると引き続き考えている」とコメント。

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「現在、EU委員会が、単に表面上は合成燃料(Eフューエル)に門戸を開くことで内燃機関の禁止を緩和するという偽りの解決策を目指していることを示す兆候が数多くあります。しかし、低CO2燃料の導入を加速し、その使用を実用化するために何もしなければ、これは裏口から内燃機関を故意に禁止することになるでしょう。

気候保護に最も効果的な貢献は、今日できることです。言い換えれば、将来ではなく、今日節約できるCO2の1トン1トンが重要です。これには、Eフューエル、E25、HVO100などの低CO2燃料の使用をできるだけ早く、できるだけ広く要求し、促進することも含まれています。

BMW CEO オリバー・ツィプセ

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つまるところ、オリバー・ツィプセ氏は「EUが合成燃料の使用を前提として内燃機関の存続を認めたものの、その流通他のための法整備などを何も行わず、第三者任せに」にしていることを暗に非難しているのだと考えてよく、よって同氏のいう「低CO2燃料」の普及にもっと注力すべきであると主張しているわけですね。

そして、こういった低CO2燃料は「新車」だけではなく、すでに販売された2億5000万台以上のクルマにたいしても(気候変動対策として)効力を発揮するものであり、本当に環境を改善しようと考えるのであれば、もっと大局を捉えた行動を起こす必要があるということを意図しているのだと思われます。

ポルシェ
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なお、ここででてきた「E25」「HVO100」について述べておくと、E25には25%のエタノールと75%のガソリンが含まれ、HVO100は、食用油などの完全に再生可能な資源から生産される化石燃料を含まない水素処理植物油で、たとえばトヨタは、HVO100と互換性のあるディーゼルエンジンを搭載したランドクルーザーとハイラックスを西ヨーロッパで販売中(トヨタは、燃料が使用済み食用油から作られている場合、通常のディーゼルに比べてCO2排出量が最大90%低くなると述べている)。

そしてBMWは内燃機関を擁護しているものの、今後数年間はEVの台頭が続くと予測しており、さらに10年後には年間販売台数の少なくとも半分を電気自動車が占めるようになるともコメントしています(残る半分は内燃機関搭載車であり、完全に内燃機関がなくなることはないとも予想している)。

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一方でBMWグループ傘下にあるミニとロールス・ロイスは、その頃(10年後)には完全電気自動車に移行するとコミットしていて、ラインナップに電気自動車を用意するのはBMWブランドのみということに。

​​参考までに、つい数か月前、BMWは100万台目の電気自動車を生産したばかりであり、これは「i3 」の生産開始から約11年後。

そしてBMWは2028年までに少なくとも6つの新型EV(ノイエクラッセ)を発売する計画を持っており、さらにはiX5、iX6、iX7を発売するのではという報道も見られ、内燃機関搭載車に注力しつつも「EVに対しても手を抜くつもりはない」ということになりそうですね。

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