| たしかにアウディの言い分もよく理解できるが、苦しいときこそ「売れ筋のみに集中する」ことは得策ではない |
そうすると個性を失い「その他大勢の中のひとつ」となってしまうだろう
かつてアウディは「TT」「R8」といったアイコニックなスポーツカーを持ち、とくにR8は長年インスタグラムやX上での検索や投稿において首位を独走してきたほど。
しかし現在アウディの公式サイトからはTTそしてR8の姿が消失し、いまサイト上で確認できる15モデルのうち7モデルまでもがSUVとなっています。
そしてアウディはTTやR8の後継を用意する計画を持っておらず、それは今回アウディオーストラリアのプロダクトプランナー、ピーター・ストルドウィーケ氏が現地カーメディアに対して「アウディは常に世界のセグメントトレンドを注視しています。だからこそ、ここ数年、SUVが(アウディのラインアップで)増加しているのです。現在も増加し続けています」とコメントしたことからも明らかに。
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アウディは「スポーツバック」をスポーツカーの後継として捉える
なお、アウディは「スポーツバック」なる呼称を持つ独自のボディスタイルを展開していますが、これは「クーペスタイルを持つ5ドアハッチバック」の総称であり、アウディいわく「スポーツバックこそがアウディのスポーツカーのDNAを持つクルマである」。
たしかにアウディは直近で発表されたQ6 スポーツバックe-tronにつき「初代TTをイメージしたルーフラインを持つ」とコメントしていて、実際に「クーペ風SUVをスポーツカーラインアップに置き換えようとしている」のかもしれません。
ただ、いかに「スポーツバック」がクーペ風のスタイリングを持つとしても、これらSUVがTTの代わりになることはなく、もちろんミッドエンジンレイアウトを持つR8の代わりになることもないというのがぼくの認識。
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さらにアウディは新型A5からは2ドアを排除しており、つまりこれは「オープンモデルの登場しない」ということに直結し、つまりアウディは実質的にクーペやコンバーチブルを販売しなくなったと捉えることが可能です。
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たしかにアウディは直近で厳しい決算を公開し、さらにはフォルクスワーゲングループで初となる「(これまでQ8 e-tronを生産してきた)欧州での工場閉鎖」が決定するなど、市場規模が小さいクーペやオープンモデル、スポーツカーを作っている場合ではないということもよくわかります。
しかしながら、そうやって「売れ筋だけに」特化してしまうと、(同じようにお金が無い)日産のように味気ないラインアップになってしまって自動車メーカーとしての個性を失ってしまうこととなり、であれば「いかに苦しくとも」なんらかの特徴的なクルマを作る必要があるのかもしれません。
一方、トヨタは「面白いクルマ(GR86や一連のGRモデル)」を作ることで、これまでの「信頼性が高く、日常の足としては最適だが、なんら印象的ではないクルマ」を作るメーカーから「オレ達のトヨタ」として評されるにいたったわけですが、アウディと同じ(効率性を重視する)ドイツのブランドであるメルセデス・ベンツが「スポーツカーとクーペ、オープンを作り続けている」ことからも、それらのセグメントは「実質的な利益を生むわけではないが、自動車メーカーの象徴、そして意思を表す存在として必要」なのだとも考えられます。
そしてそもそも、アウディは「日常の足として使用される普及価格帯のブランド」ではなく「プレミアムブランド」でもあるので、やはり高級さ、贅沢さ、豊かさ(それらはある意味で”無駄”という言葉にも置き換えられる)を感じさせるクルマのラインアップが必要であり、それこそが多くの人がアウディに求めている要素なのかもしれません(求めているからといって、それらが提供されたとしても皆が買うというわけではないけれど)。
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