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マクラーレンF1の個人向けレストア第一弾が公開。「走る芸術品」ともいえるその内容を見てみよう

2019/08/31

| オリジナルの仕様に加えた「カスタム」も |

マクラーレンその伝説のクルマ「F1」の認定制度を発足させ、レストアも開始していますが、今回はその第二号(個人向けとしては一号車)となるレストアプロジェクトを公開。
これは車体番号「63」で、個人のオーナーが所有する個体だそうです。
実車は9月6日より開催されるハンプトンコート・コンクール・デレガンスにて展示される、とのこと。

それに先立ち、その仕上がりを画像にて公開していますが、その芸術的とも言える内容を見てみましょう。

マクラーレンF1はこんなクルマ

マクラーレンF1は1993-1998年の間に生産された車で、「センターシート」「ゴードン・マレー設計」「エンジンルーム内側は放熱性のためだけに金を使用(豪華にしたかったわけではなく機能を重視しただけ)」「工具も軽量性を重視してチタン製」「新車価格価格1億円(それでも赤字)」などなど、数々の伝説を持ち、 近代のクルマではもっとも高価(マクラーレンF1"LDF"で20億円くらい)で取引される一台です。

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エンジンはBMW製の6リッターV12/636馬力を採用し、車体重量は1140キロと軽量で、非公式ながら時速391キロを記録するなど、現代の基準で考えても「最高レベルの車」。
当時からすると30年以上は進んでいた車であり、自動車史的に見てもこれ以上「妥協なく」作られた市販車は(今後も含め)存在しないと断言できます。

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マクラーレンF1の全長4,287ミリ、全幅1,820ミリ、前高1,140ミリ。
現代のスーパースポーツからすると「非常に」コンパクトだと言って良さそう。

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ちなみにとんでもなく維持費がかかるクルマとしても知られ、タイヤを交換した後はアライメントを取り直し、サーキットを借りてマクラーレンが認めたプロドライバーによってテスト走行を行い、セッティングを行う必要がある、とのこと(それだけでタイヤがすり減りそう・・・)。

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マクラーレンはオーナーの負担を軽減すべく、北米にもマクラーレンF1専用の整備工場をオープン。
北米のオーナーにとっては、これまで整備の都度本社に送る必要があったマクラーレンF1の維持費がぐっと下がることになりそうです。
ちなみに工場のロケーションは「完全なるシークレット」。

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レストアされたマクラーレンF1は「新車以上」

そして今回レストアされたマクラーレンF1ですが、かかった期間は18ヶ月以上。
外装、ドライブトレーンを取り外すところからはじまり、そこから内装へ。

内装においてはウォーキング・グレーのセミアニリンレザーが使用され、同じカラーのアルカンターラがシートやダッシュボードにも。
なお、マクラーレンF1のインテリアカラーは基本的に「ブラック」だったと聞いているので、この部分は「カスタム」に該当するのかもしれませんね。

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ステアリングホイールはMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)のストックから新品を装着し、もともと装着されていたものはオーナーが保管している、とアナウンスされています。

運転席、助手席ともにシート中央はパーフォレイテッド(穴あき)加工が施され、運転席のシートバックはオレンジに。

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レストアは内装から外装の順に行われた

そしてインテリアのレストアが終わると次は外装。
パネルを再ペイントしますが、これのカラー名は「マグネシウムシルバー」。
塗装には900時間がかけられている、とのこと。

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なお、当時マクラーレンF1に採用されていたボディカラーの一部は、「現代では認可されていない成分が入っている」とのことで「近似色でしか再現ができない」とMP4-12C発表時にアナウンスされています。

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モール、クロームパーツもまさに新車時同様。

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フロントフード内もすっかり新車同様に。
なお、マクラーレンF1はケンウッドのオーディオシステムが積まれていますが、これは当時、マクラーレンとケンウッドとがパートナーシップ関係にあったため。

ただ、単に資金的な関係のみではなく、ケンウッドは「無線技術」を提供しており、これによって従来は通信できなかった場所でもドライバーとのやり取りができるようになり、アイルトン・セナは「ケンウッドのおかげで、リアルタイムでマシンの状況を伝えることができるようになり、セッティングの可能性が大きく進化した」と語っています。

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そしてトランクは車両の両サイド。
これは「ホイールベースの間に重量物を収納する」というゴードン・マレーの方針を反映させたもの。

外装の次は「ドライブトレイン」と「足回り」

そして内装、外装のレストアが終われば次はドライブトレインと足回り。
エンジンはリビルトされ、きっちり618英馬力を発生します。

サスペンションはビルシュタイン製ですが、これはビルシュタインへと送り、完璧にレストア。
そのほかドライブシャフトやハブもサプライヤーによってリビルトされている、とのこと。

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エンジンルーム内はオリジナルとはやや異なるようで、オリジナルだと「ゴールドアルマイト」仕上げだったブリッジがオレンジのペイントに、そしてオリジナルではステンレス地金仕上げだったものが金メッキ仕上げへと変更され、より芸術性が高められているようですね。

エンジンフード内側の「金箔貼り」はオリジナルと変わらず健在です。

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マクラーレンF1のレストアに費やしたのはのべ3000時間

そしてこのマクラーレンF1のレストアにかかった作業時間は累計で3000時間。
これにはロードテストも含むそうですが、そのプロセスはすべて記録され、証明書と一緒にオーナーに手渡される、とのこと。
そしてそれら証明書、レストア記録、その車両の来歴はこういったボックスに収められ、いっそう車両の価値を高めます。

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さらにはマクラーレンF1のスケールモデルも付属する、とのこと。
おそらくかかる費用は「新車購入以上」だと思われますが、それでもコストをかける価値がこのクルマにはあり、そうまでしても新車状態に戻したい、というオーナーがほとんど(もしくは”すべて”)なのかもしれませんね。

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Source: McLaren

あわせて読みたい、マクラーレンF1関連投稿

マクラーレンF1についてはとにかく話題には事欠かず、最近だと「近代に製造された自動車では最高額」で落札されたのは記憶に新しいところです。

過去には「アメリカで最初に」納車されたF1がオークションに登場したことも。
アメリカは妙なところで法規がきつく、よってかなりの構造変更を行う必要があり、その際に取り外したパーツも同時に出品されています。

こちらは「未登録」のマクラーレンF1。

そしてマクラーレンを設計したゴードン・マレーは「自分以外に、マクラーレンF1を超えるクルマを作れない」とし、自らその後継と言えるモデルを自身の名義にて発売することも明言しています。

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