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BMWのCEOが「ユーロ7の導入は無意味。かえって状況が悪化する」と強烈に批判。ここ最近は同様の声が聞かれるようになったものの一体どういった理由?

2023/05/20

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| ガソリン/ディーゼル車を締め付けることは消費者のメリットにならず、であればもっと消費者がEVを買いたくなるような別の施策を考えるべきである |

まさに発想の転換を行わねば先に進むことは難しい

さて、BMWが開催した第103会年次総会において、同社CEO、オリバー・ツィプセ氏が新しく導入される排出ガス規制、ユーロ7を痛烈に批判したとして話題に。

このユーロ7は2025年7月に導入される予定であり、導入後には(各自動車メーカーとも)NOx排出量を35%削減し、排気中の微粒子を13%も減少させることが求められますが、まずはその測定方法が「現実離れしている」と噛みついたわけですね。

そして同氏はそのテスト環境を引き合いに出して「例えば、マイナス7度の峠道を、荷物を満載してトレーラーを引っ張りながら全開で走ることがどれだけあるでしょうか?私たちは、そういった現実離れしたテスト環境において数値をクリアするための出費を強いられているのです」とバッサリ。

問題は「ユーロ7が社会にとって正しいかどうか」

ただ、オリバー・ツィプセCEOはガソリンエンジンを愛しているがためにユーロ7を批判しているわけではなく、ユーロ7が「社会的に意味を成さない」とコメント。

現実に即していない運転環境を前提にしたユーロ7が導入されたとしても「この規制が大気環境の改善につながることはない」と述べ、環境を本気で改善したいならば、もっと他の方法があるはずだと主張しているわけですね。

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そして同氏は米国のインフレ抑制法を例に出し、「米国では、インフレ抑制法が政策立案者によって気候保護の推進と国内経済の強化のために使われており(米国産EVを購入した場合、かなり大きな税制優遇を受けることができる)、これによって電気自動車の販売が促進されています。一方、欧州では、欧州委員会が計画されているユーロ7規格を大規模に強化しています」。

これはつまり、環境のことを考えるならば、ユーロ7を導入してガソリン車を取り締まるより、消費者がEVを買いたくなるような(米国で実施しているような)別の施策を考え実行するのが本質だという旨の発言であって、たしかに「もっとも」かもしれません。

なお、オリバー・ツィプセ氏は長年、(ガソリンやディーゼルエンジンなど)内燃機関を擁護し、内燃機関搭載車に対する”早すぎる禁止”を警告していますが、これはBMWが代替燃料や電気自動車を信じていないからではなく、ガソリン/ディーゼルエンジン車は、EVが(所得やインフラの問題で)非現実的な市場や地域において、まだ非常に重要な位置を占めていると考えているため。

実際のところ、BMWはEVのラインアップを増加させており、14やi7やiX、そしてiX3を発売済みで、さらにはエグゼクティブ・セダン「i5」やクロスオーバー「iX2」を発売する予定を持っており、2022年にはすでに2021年の倍以上に相当する215,000台ものEVを販売しています。

さらに言うならば、昨年最も成功したMパフォーマンスモデルは(ピュアエレクトリック版の)i4 M50だとされ、これは顧客のニーズがいかに変化しているかを示しており、BWW自身も2027年にはM社の販売台数の半分以上を電動化車両が占めるようになるという予測を立てているほど(つまりBMWは電動化そのものにネガティブなわけではない)。

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「昨日の技術にリソースを振り分けるべきではない

そしてオリバー・ツィプセ氏が「ユーロ7は環境改善に役に立たない」と考えるのにはもうひとつ理由があって、それは「自動車メーカーが、ユーロ7対応のためにお金とリソースを割く必要が生じ、本来電動化に使用すべきお金と利益を削られるから」。

これについてはフォードの電動化担当エンジニア(別の場で)同じ意見を述べたことがあり、それは「昨日の技術にリソースを振り向けるのではなく、ゼロ・エミッションに投資すべきだ。ユーロ7の導入はガソリンエンジンへの注力を意味し、時代と逆行する」というものです。

さらにルノーCEOは「ユーロ7が導入されるとクルマの価格が非常に高価なものとなってしまう」とコメントしており、そうなると「高価になったユーロ7対応車両を購入する人が減り、しかしEVもまだ高価なので低エミッション車への乗換えが進まず、結果的に現在のガソリン車が大量に路上を走ることになり、環境が改善されない」ままとなる可能性が出てくるわけですね。※ユーロ7対応のために電動化車両中心へのラインアップへと移行する自動車メーカーも出てくるとは思われるが、価格が高くなって売れなければ環境や経済的に意味はなく、会社の経営状態も悪化する

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こういった発言や見解を総合すると、ユーロ7の導入は自動車メーカーの体力を奪い、消費者に高額の負担を強いるだけということになりそうで、であれば「安価なEVを作れるよう、そして消費者が安価にEVを購入でき維持できるよう」法整備を行ったほうがよっぽど前向きなのかもしれません。

現在まだまだ「反ユーロ7導入」の声は限定できではあるものの、もっと多くの自動車メーカーが声を上げ、結果的に消費者の利益にならないこと、そして環境改善のために大きなインパクトを持たない可能性がクローズアップされ認知されるようになれば、(政治家は環境改善を掲げて票を獲得する必要があるので)「ユーロ7導入の凍結、そして(ガソリン車撲滅ではなく)EV普及政策の導入」という方向へと動く可能性も出てきそうですね。

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参照:CARBUZZ

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