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BMW「中国ではEVが売れていると思われがちですが、高級車市場ではガソリン車のほうがよく売れます。現地では、EVは安物だと捉えられ、富裕層はこれを嫌います」

2023/06/02

BMW

| たしかに中国で売れているEVは価格が安く、登録にかかる費用や税金等も安価である |

中国の富裕層は「一般人と同じように見られたくない」のかもしれない

さて、現在中国では販売される新車の1/3が電気自動車となり、その生産台数も加速度的に伸びていますが、BMWのデザイナー、ドマゴイ・デュケック氏によれば「中国で高級EVを売ることは難しい」とのこと。

ちなみにメルセデス・ベンツは「中国では高級EVが売れる」と見込んでおり、しかしBMWはなぜメルセデス・ベンツとは反対に「中国で高級EVは売れない」と踏んでいるということになり、ここでその理由を見てみましょう。

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中国では「EV=安物」

現在BMWはiX3やiX、i4、i5、i7といったEVを発売していますが、iX以外だと「対」となる内燃機関(ガソリンエンジン)搭載車も投入されています。

よって、電気自動車が大人気の中国ではガソリン版のX3、4シリーズ・グランクーペ、5シリーズ、7シリーズのほうが売れそうではありますが、実際のところ顧客は「i7よりも(ガソリンエンジン搭載の)7シリーズを選んでいる」のだそう。

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なお、欧米ではエレクトリック版のi7やi4の人気が高く、昨年最も売れたMモデルは「i4(のMバージョン)」だそうですが、BMWいわく「中国では興味深いことが起きています」。

そしてドマゴイ・デュケック氏が語ったところによれば、中国はモビリティの電動化を使命としてさまざまなEVインセンティブを提供し、大衆向けのEVの現地生産を奨励していて、その結果、市場に出回る新型電気自動車のほとんどは安っぽいものになっている、とのこと。

たしかに「テスラよりも売れたEV」である宏光ミニEVはその価格60万円ほどと非常に安く、そのためか中国では「EV=安物」というイメージがあるもよう。

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ちなみにですが、EV黎明初期はたしかに日本含む世界中でも「EVとは安っぽく、何かを我慢して、節約志向の人が乗るクルマ」というイメージがあり、それを一気に変えたのがテスラだと認識しています。

テスラは「節約するために乗る湿っぽいEV」ではなく、イキナリ富裕層向けの2シーターEV「テスラ・ロードスター」を発表し、その次に発売したのは1000万円オーバーのモデルS。

そして充電器(スーパーチャージャー)も高級ホテルやリゾート、ゴルフ場などを中心に設置し、それまでの「節約EV」とは全く逆の使い方を提案したわけですね。

中国の富裕層は「喜んでお金を使いたがる」

さらにドマゴイ・デュケック氏は「中国では、高級な電気自動車という概念は通用しない」とも語っており、それはもちろん中国人の多くがEV=安物だと認識しているためで、それを購入するのはプライドが許さないから。

そして中国のお金持ちは「お金を持っている」ことをアピールする傾向にあり、たとえば一人っ子政策が施行されていた際、二人目や三人目の子供を持つと、年収の何倍という「罰金」を取られたそうですが、中国の富裕層は喜んでこの罰金を支払って二人目以降の子供を持っていたといい、それはつまり「自分はそれだけのお金を持っている」ということを示せるわけですね。

中国

さらに言えば、メルセデス・ベンツやアウディ、BMWについても「現地生産ではない」、つまり輸入扱いとなるAMGやM、RSモデルを選ぶことでお金を持っていることを誇示することができ、よってこれらも人気があると報じられています(現地生産モデルだと関税がかからないが、輸入モデルは関税がかかり、もとの価格の2倍〜2.5倍位になる。よって日本での”標準モデルとAMG”との価格差よりも圧倒的にこれらの価格差が大きく、AMGモデルは用意に購入できる金額ではない)。

こういった状況を鑑みるに、中国の富裕層が「安物と認知されている」EVを購入するとは考えにくく、よって現地富裕層が高級車を購入するときに選ぶのは「内燃機関車」。

ちなみにですが、中国ではナンバープレートの取得には多額の費用がかかり(時期や地域によって差がある)、しかしEV用のナンバープレート(緑色のプレート)であれば「基本的にタダ」。

一方で内燃機関用のナンバープレートは(番号を選ばくても、取得するだけで)200万円前後が必要となり、しかしこれも富裕層にとっては「ステータス」。※上海、北京、広州など中国の大都市では、新車のナンバープレートの割り当てが厳しく(発行枚数が制限されている)、よってこれを取得するためのオークションが開催され、新車のナンバープレートを手に入れるためには高額な費用を支払う必要がある

加えて排気量が4リッターを超えると税金が一気に跳ね上がるのですが、あえてこれに乗るのもまたステータスをアップさせるようですね(たしかに多くの自動車メーカーは4リッター以下に排気量を抑えているが、BMWのV8は4.4リッターであり、BMWは税金の”境界線”を気にしていない)。

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EVメーカーに「ガソリンエンジン」を求める顧客も

そしてちょっとした笑い話のようなものもあるそうで、たとえば「NIO」は中国の新興EVメーカーなのですが、そのNIOのショールームを訪れ、「V8モデルはいつ出るんだ」というお金持ちもいるのだそう。

ちなみにNIOはブランド立ち上げ時、その存在を知らしめるために「EP9」を発表していて、しかしこれには電動パワートレーンが搭載されていたため、中国の富裕層は「安物」と断じてこれを購入しなかった、とも言われています。

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このような中国の傾向は非常に「ユニーク」であり、そしてこれを理解し対応するかどうかによって高級車の売上が大きく変わる可能性もありそうですが、BMWはグループ内にロールス・ロイスを持っており、その展開の経験からも「中国では、高級なガソリン車が(高級なEVよりも)よく売れる」と認識しているのでしょうね。※そう考えると、スペクターが中国市場で成功するかどうかが微妙に思えてきた

BMW
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参照:BMW

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