BMWが「今後もV8を使用し続ける」と明言。BMWは既存技術と先端技術を「分け」、過渡的技術には過剰なコストを投じない”賢い”戦略を実践か

｜　BMWの戦略はメルセデス・ベンツ、アウディとは大きく異なるものである　｜

その戦略の意図や詳細は公開されていないものの、かなりの柔軟性を含んだものだと考えられる

さて、現在自動車業界では（エンジンの）ダウンサイジングが進んでおり、多くの自動車メーカーがV12エンジンを捨て、そしてV10もなくなり、V8はV6や直6、それどころか4気筒に取って代わられようとしているのが現在の状況です。

そしてBMWは2022年に（M760iを最後に）V12エンジンの販売を終了させ、2010年にはV10エンジンの販売も終了させているのですが、この状況下においてもV8エンジンを存続させており、ライバルであるメルセデス・ベンツが「直4＋電動ターボ」へと移行する中であってもV8エンジンを存続させ、「我々のやり方は他社（つまりメルセデス・ベンツ）とは異なる」とも述べています。

なぜBMWはV8エンジンを捨てないのか

今回BMWは「V8エンジンを継続する理由」についてカーメディア、Automotive Newsとのインタビューにて語っており、BMWの開発責任者フランク・ウェバー氏によれば「電動化された直6エンジンであってもV8と同じ性能、特に加速性能を提供できるものの、アメリカや中東の顧客は依然としてV8エンジンの滑らかさやサウンド、ドライビングフィールを好んでいるため、V8エンジンを今後も続けて提供する」。

しかしそこには実際的な側面もあり、というのもアメリカや中東では欧州に比べて排出ガス規制がかなり緩いため、V8エンジンを使い続けることが難しくはなく、つまり欧州が求める厳しい環境規制へと対応するために高いコストをかけた（高性能な）「小排気量エンジン＋ハイブリッド」を積まずとも済み、つまりこれは「コスト的にも理にかなった判断」であるとも考えられます（現実的に、760iはEUでは販売されておらず、選択肢としてはもっと高価な「7シリーズ プロテクション」という特別仕様車のみとなっている）。

BMWは「スマート」な考え方を持つ会社である

そして欧州市場ではピュアエレクトリックシリーズ「ノイエクラッセ」を中心に電動化への対応を進めるということになりそうですが（そして来たるべきときにはこれが世界中の市場での主流になるのだろう）、こういった展開を見るに、BMWは世界中の自動車マーケットを個別に捉え、ゆるやかに、そして過渡的技術にコストをなるべくかけず、おだやかに未来へと向けて移行してゆくのかもしれません（ここから数年もかければ、V8信仰も廃れてゆくであろう）。

さらに言えば、BMWは（V8を存続させる一方で）「3気筒エンジン」をBMWそしてミニにも投入しており、つまりは「過度のハイブリッド化を行うことでコストをかけず」既存の内燃機関技術を活用することで効率よく次世代への移行を行っているようにも思えます。

フランク・ウェバー氏は将来のV8エンジン搭載車について言及していないものの、次世代のX5、X6やX7についてはV8エンジンを維持することが予想され、この4.4リットルV8ツインターボエンジンは、中東やその他の"規制が緩い地域"でも引き続き使用される可能性がある、と見られています（一方でメルセデス・ベンツは世界統一にてダウンサイジングを進めているので、一部地域ではBMWの”V8”が強い訴求力を持つ）。

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