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VWの「スカウト復活」に全米ディーラーが猛反発。ディーラー側がVWに回答を求める書簡を送る異例の事態に

2022/06/08

フォルクスワーゲン

| ただし現在のところフォルクスワーゲンは回答を保留、これはもう全面戦争か |

現在各自動車メーカーが進める「直販化」は大きな議論を呼びそうだ

さて、フォルクスワーゲンは先日「スカウト」ブランドを復活させ、エレクトリックピックアップトラックやSUVに特化した展開を行うと発表していますが、これが全米のフォルクスワーゲンディーラーの反発を招き、ディーラー協会がフォルクスワーゲンの現地法人へと質問状を送る事態にまで発展しています。

なお、ディーラー協会はスカウトの復活に対して疑問を呈しているのではなく、その販売方法について、ディーラーを通さずにフォルクスワーゲンが顧客に「直販」するのでは(つまり自分たちが飛ばされる)、ということを問題視しているようですね。

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いったいなぜこんなことに?

そこでこの問題を考えてみたいと思いますが、まずは「直販」について説明せねばならず、これは現在欧州で切り替えが進められている新方式であり、これまでの「自動車メーカーが自動車ディーラーにクルマを卸し(販売し)、そのクルマをディーラーが消費者へと販売する」というシステムから、「自動車メーカーが、ディーラーを通さずに消費者へとクルマを直接販売する」というもの。

今までの方法だと、ディーラーは「自動車メーカーからの仕入れ値(買値)に利益を乗せて自動車を販売」することになり、それこそが自動車ディーラーの収入源であったわけですが、今後はこれが絶たれる、ということになります。

じゃあ今後のディーラーの役割ってなんなのという疑問も生じ、これは「自動車メーカーが消費者に販売したクルマを消費者へと納車する」という役目を担当します。

そしてディーラーは「納車を代行」したかわりに手数料を受け取り、これが新しいディーラーの収入源になるのですが、この手数料は、これまで「自動車を1台販売して得ていた利益」の半分くらいだと言われ、当然ながらこの直販システムはディーラーにとって許容しがたいものとなってくるわけですね。

ただし自動車メーカーにも言い分がある

ただ、自動車メーカー側にも言い分があり、それは「これまでディーラーは自動車メーカーから車両を買い取り、そのぶんの在庫を持っておく必要があったのでスペースや資金が要求され、かつ自身で販売するためのプロモーションなども開催する必要があったものの、これからは在庫を持つ必要も、営業活動を行う必要もなくなり、資金やスペース、人員も最小限で済む」ということ。

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たしかにこれには一理あるものの、ディーラー側としては「メーカーがクルマを売らないと自分たちにも(納車代行の)手数料が入らない」ということになり、その収入については自動車メーカー任せとなり、自分たちで利益をコントロールできなくなってしまいます。

これは経営者としては非常に困る問題であり、経営のあり方が根本から揺らぐわけですね(受け身となってしまい、戦略的な経営ができない)。

それでも自動車メーカー側はこの「直販」へと切り替える姿勢を崩さず、欧州だとアウディ、BMW、メルセデス・ベンツ、そしてステランティスもこの方向を採用することになり、しかし「メーカー直販が禁止」されている中国では現状維持。

一方のアメリカでは州によって直販の可不可が(法規的に)分かれるといい、よって「基本は直販」のテスラであっても、州によっては直販が不可能なケースが存在するものの、フォルクスワーゲンはすでにIDシリーズでは直販体制を(一部)導入しています。

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そこでフォルクスワーゲンのディーラー網は立ち上がる

そして全米のディーラー網はこういった欧州での動向、IDシリーズの販売方法を把握しており、よってフォルクスワーゲンがリブートする「スカウト」についても直販体制が敷かれるのではと懸念していて、そこで全米自動車販売協会(National Automobile Dealers Association)CEOであるマイク・サントス氏がフォルクスワーゲングループ・オブ・アメリカのCEOであるスコット・コー氏に書簡を送り、スカウトブランドの販売計画を明らかにするよう説明を求めている、というのが現在の状況です。

その内容について要約すると、「私たちは、フォルクスワーゲンが数年以内にスカウトブランドを米国市場に復活させると発表した事実を注視してきました。まだ公表されたばかりではありますが、これまでフォルクスワーゲンのビジネスモデルや電動化への変革を支えるために多大な投資を行ってきたディーラーに対して、スカウトの販売計画を迅速かつ明確に伝えるべきではないかと捉えています」というもので、つまりスカウトブランドのリブートが発表されたのに、ディーラーにはなんら具体的な話がおりてきていないことに不信感をつのらせている、という印象です。

加えてこの書簡では、「フォルクスワーゲンは、長年にわたって繰り返し”ディーラーはVW製品の進歩と普及のためのパートナーである”と保証してきたにもかかわらず、スカウトブランドの件につき、我々VWディーラーの間に落胆と懸念をもたらしている」と述べ、不快感をあらわにしているようですが、自分たちの存在意義が無視され、利益を持ってゆかれることに対して承服しかねるのは当然のことかもしれません。

現時点ではこれに対してフォルクスワーゲン側は何ら返答を行っていないといい、つまりは「ディーラーの意向に反して直販化を進める」のだとも考えられ、ここから一波乱ありそうな雰囲気ですね。

参照:Auto News

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