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このアルファロメオ8C 2300の予想落札価格はなんと4.9億円。製造されたのは90年前、そしてここまでオリジナルの状態が残る個体は非常に貴重

2023/07/24

このアルファロメオ8C 2300の予想落札価格はなんと4.9億円。製造されたのは90年前、そしてここまでオリジナルの状態が残る個体は非常に貴重

| それにしてもフェラーリでもジャガーでもブガッティでもないクラシックカーが4億9000万円とは |

それだけアルファロメオの評価も高く、そして現代のアルファロメオにも「未来の資産」を残してほしいと願わんばかり

さて、欧米には「クルマ好きとは、すなわち時計好きである」という格言のようなものがあるそうですが、実際のところ長年にわたり、多くの高級自動車は、その機械仕掛けの宝石のような精密さと複雑さにおいて、スイス製高級腕時計と比較されてきたという歴史を持っています。

そして今回、RMサザビーズが開催するオークションへと1933年製のアルファロメオ8C 2300が登場しますが、このクルマほど「スイス製高級腕時計との比較がふさわしいものはない」とも評されており、つまりはそれほど精緻なエンジニアリングを持っているということなのでしょうね。

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アルファロメオ8C 2300はこんなクルマ

アルファロメオ8C 2300のボンネットは非常に長く、この下にはツインオーバーヘッドカムシャフトと半球形の燃焼室を備えた2つの4気筒ブロックからなるエンジンが収められており、10個の主軸受けを持つクランクシャフトは真ん中で分割され、その中心にはカムシャフト、スーパーチャージャー、オイルポンプ、ウォーターポンプ、ジェネレーターを駆動する一対のギアが収められることに。

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そしてこのアルファロメオ8C 2300は、1930年代初頭の世界的なレースで輝かしい勝利を収めたことでもわかるように、「機械的に優れているだけではなく」実際に運転するのが楽しくて速いマシンだったようですね。

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さらにはこの時期のアルファロメオの典型として、速さだけでなく美しさも兼ね備えており、コーチビルダーたちは低く均整のとれたシャシーに最高のボディを架装するという形でその才能を競い合ったそうですが、このアルファロメオ8C 2300のボディはゴルデ・フィゴーニによるものだと紹介されています。

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このアルファロメオ8C 2300はこんな経緯を辿っている

このアルファロメオ8C 2300につき、(アルファロメオに造形の深い)歴史家であるサイモン・ムーア氏の調査によると、シャーシ番号は2111025、リアに取り付けられたスペアタイヤと、脇腹を貫く「スウィープ・パネル」によって分割された微妙なツートンカラーが工場出荷時の特徴であったとのこと(レストア後にそれらが再現されている)。

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1932年9月に最初の登録が行われ、その後12月にボディが完成したという記録が残ります(この時系列を見ると、まずシャシーを購入した時点で登録し、その後にボディを架装するという流れが当時の主流であったのかも)。※その後「Auto-Carrosserie」誌の1933年7月号/8月号にこの車両の写真が掲載されたと考えられている

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当時のボディは、このクルマの最初のオーナーであるロジェ・ゴルデが直接架装の依頼を行っており、入手可能な限り高価なヴォーモル・レザーの内装やユニークなフロントガラス・ワイパーなど、このオーナーによる特別な要望により「かなりの」費用がかけられたとされています。

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その後ロジェ・ゴルデはこの車を1935年頃に売却したと見られ、一説には(つまりはっきりしていない)買い手はレーシング・ドライバーのレイモン・ゾンマーだったのではと推測されており、レイモン・ゾンマーは(このシャシーナンバー2111025のほかに)1935年にル・マン24時間レースに出走したシャシーナンバー2311212も所有していたという記録も。

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なお、レイモン・ゾンマーがこのクルマを所有していたと言われるのは、 "ブガッティ・ハンター "であったアントワーヌ・ラファエリが1962年にシャトー・スコットにて、レイモン・ゾンマーからこのクルマを購入したと語っているためで、このあたりの「書面による記録」はもう残っていないのかもしれませんね。

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そしてアントワーヌ・ラファエリは1965年にこのアルファロメオ 8C 2300をポール・サックに売却し、ポール・サックはトリノのサヴィオという名のコーチビルダーに依頼して2トーンのブルーに再ペイントし、その後ポール・サックは20年以上にわたってこのクルマを維持したのだそう。

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そして1987年になるとブリッジハンプトン・レーシング・サーキットのオーナーであり、重要なヴィンテージ・レーシング・マシーンの熱心なコレクター兼ドライバーであるニューヨークのロバート・ルービンに売却しますが、ロバート・ルービンはここで著名なアルファロメオ8Cのスペシャリスト、クリス・レイドンとともに完全なレストアを行い、現在の素晴らしいダブグレーとスカーレットの色調に仕上げられています。

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なお、レストアに際しては「新車同様」ではなく、ある程度の経年劣化も重要視したのか、程よいヤレ具合が内外装に見られ、これを「狙った」のだとすると、かなり手練のビルダーということになりそうですね。

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特にこのシートのヘタリ具合や・・・。

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レストアしたのかしてないのかわからないレベルのメーターは秀逸。

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ちなみにトランスミッションケースは「むき出し」。

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この真ん中の丸いペダルは「ブレーキ」だと思うのですが、「かなり踏みづらそう」であり、ちょっとしたことで滑ったりしそうですね。

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この時代のクルマは「よくわからない」ことが多いようだ

なお、この年代のクルマは記録を追えないことが多く、よって不明瞭な部分も数多くあるものの、サイモン・ムーア氏の調査によれば「初期にエンジン2311212と、ル・マン24時間レースでレイモン・ゾンマーがドライブした同車両のステアリングボックス番号2151150、フロントアクスル番号2161144が取り付けられていたこと」「シャシー番号とエンジン番号2311212が刻印されたパリのファイアウォールプレートが取り付けられていたこと」、さらにレストア中には「おそらくオリジナルの2111025と思われる2つのシャーシナンバーが助手席側のフレーム前部に、加えてドライバーの後ろの通常の位置に刻印されていること」「やや見えにくいものの、"2221106-"で始まる2つ目のナンバーが発見されたこと」がわかっているもよう。

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ただ、そういった「よくわからない部分が多い」にもかかわらず、この個体に関しては「驚くべきレベルで」オリジナルのコンポーネントやパーツが残されているといい、それは90年前のクルマとしては非常に珍しいことなのだそう。

そしてそういった歴史的価値を反映してか、このアルファロメオ 8C 2300の予想落札価格は最高で350万ドル(現在の為替レートで4億9000万円)だというエスティメイトが出されており、つまりは非常に高い評価がなされています。

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参照:RM Sotheby's

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