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「一部では熱狂的な支持を受けつつも商業的に失敗してしまった」アルファロメオ4C。現在再評価の機運が高まり「将来のコレクターズカー」と目される

「一部では熱狂的な支持を受けつつも商業的に失敗してしまった」アルファロメオ4C。現在再評価の機運が高まり「将来のコレクターズカー」と目される

| どう考えても、今後アルファロメオ4Cのようなクルマを作ることは不可能である |

その意味では「時代がアルファロメオ4Cに追いついた」のかも

さて、アルファロメオはその情熱的で美しいスポーツカーの数々によって評価を築いてきたという歴史を持ち、しかし現代ではその輝きを失ってしまったというのが共通の認識であるかと思います。

ただ、その歴史の中では「高い評価を得ながらも商業的に失敗した」クルマも存在し、そのうちのひとつが(すでに生産が終了された)4C。

このアルファロメオ4Cは2011年にコンセプトモデルとして発表され、そのクラシックなフォーンダイヤルホイール、象徴的な盾形フロントグリル、ミドシップレイアウトによる優れたパフォーマンスによって、瞬く間に世界中の自動車ファンを魅了し、市販化が決定する前から愛好家やジャーナリストの間では「成功間違いなし」「アルファロメオは過去の栄光を取り戻すであろう」と考えられていたわけですね。

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アルファロメオ4Cは現時点で「最後のアルファロメオ製量産ピュアスポーツ」である

しかしながら、実際に市場に投入されるとその評価は二分されることとなり、非パワーアシストのステアリングを絶賛する声がある一方、「運転しづらい」と評されることも。

さらにはカーボンモノコックを採用したことでコストが高騰してポルシェ・ケイマンを超える価格帯になってしまい、もちろんポルシェとの直接競争は決して有利とは言えず、特に当時のケイマンは自然吸気のフラット6エンジンを搭載していたため、1.7リッター4気筒ターボエンジンを積む4Cはどうしても「格下」に見られてしまったわけですね。

加えてその出力(240馬力)も「高い」とはいえず、しかしその軽量な車体を考慮すると十分ではあったものの、アメリカ市場を中心とした「パワー至上主義」を掲げる人々に対しては十分な訴求力を発揮できなかった、とも言われます。

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時を経て4C「再評価」の機運が高まる

こういった事情もあり、4Cは商業的には失敗に終わってしまったわけですが、しかし時が経ち、様々な規制や世の中の変化によってスポーツカーが純粋さを失ってゆく中、”純粋なドライビングプレジャーを提供することができる数少ないスポーツカー”としてこのモデルが再評価されつつあるのが直近の状況です。

4Cは(2008年に投入された)8Cコンペティツォーネに次ぐアルファロメオ製のスポーツカーとして企画されており、しかしフェラーリ製V8エンジンを積む8Cよりは「求めやすい価格に設定し」、しかしミドシップレイアウトと軽量設計を用いることでドライバーエンゲージメントを最大化することを狙っています。

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そしてこの「軽量性」はカーボンファイバー製バスタブシャシーやアルミ製サブフレームの採用、極度に簡素化された内装など様々な方法によって追求され、結果として「1,050kg」という驚異的なレベルの車体重量を達成しているのですが、上述の「1.7リッター4気筒エンジン」に不満が集中してしまい、実のところ車体重量を考慮すれば「240馬力」でも十分ではあったものの、歴代のアルファロメオ製スポーツカーに搭載されてきた6気筒や8気筒エンジンの魅力には及ばない(エンジンサウンドやフィーリングが物足りない)とされ、かつ6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は低速時のギクシャク感が目立ち、「ドライバーズカー」としては惜しい部分が残る、というのが一般的な評価です。

ただしいったんその1.7リッター4気筒エンジンにムチをくれ、ワインディングロードを攻めることになれば4Cの本領がいかんなく発揮され、シャシーバランスの良さとダイレクトなステアリングフィールが際立つスポーツカーとしての姿を見せたものの、舗装の悪い道ではサスペンションの硬さが仇となり、「(峠でのドライブを楽しんだ)帰り道ではなるべく道路の凹凸を避けて走るべき」と冗談交じりに言われたほど。

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結局のところ、4Cはアルファロメオの最盛期を取り戻すべく企画されるも市場での立ち位置を確立できず、ポルシェのフラット6やボクサー4のような洗練性がなく、日常使用には過激すぎるという判断によって現役当時の販売が低迷することとなり、しかし近年になって4Cの評価が変わりつつあるのもまた事実。

現代のスポーツカーは電子制御や重量増加が進み、「ダイレクトな運転感覚」が希少になってきていますが、そのような中において4Cのシンプルかつ純粋なドライビングエクスペリエンスが再評価され始め、あまつさえ「将来のコレクターズカーになる」という意見も出ているわけですね(新車販売が奮わなかったぶん、希少性も高い)。

さらには当時否定的であった人々も4Cの魅力に気づき始めているとも言われ、現在の4Cの相場が「安い」と感じられる日、そして「あのとき買っておけばよかった」と悔やむ日がやってくるのかもしれません。

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