| さすがはフェラーリ、まずはその価値を維持することに重きを置いている |
パーツの永久的な供給は「言うは易し、行うは難し」。だがフェラーリはそれを実現する
さて、「誰に限定モデルを販売するか」の決定権を持つとされるフェラーリのチーフマーケティング責任者、エンリコ・ガリエッラ氏によれば「フェラーリは、顧客の愛車のための生涯サポートを行うことができる」。
これはいったいなどういうことかというと、フェラーリはこれまでに生産した車両の(ほぼ)すべての仔細にわたる資料を保管しており、「必要であれフェラーリにはクラシックカーを走らせるための新しい部品を製造する手段がある」「これらの新しい部品は、最新の生産技術、特に3Dプリントを使用して製造される」「オリジナルの技術文書を用いて旧型車の修理を行うことが可能である」。
いうなれば、これはパテックフィリップやIWCが提唱する「永久保証」のようなもので(無料ではありませんが)修理ができなくなったり、パーツの供給が停止されることはないという事実を意味します。
「フェラーリは、クライアントが10年、15年、または50年楽しんでほしい車です。だから、機械的な部品だけでなく、電気系統のすべての部品が将来的にも入手可能であることを確実にすることが重要でした。」
フェラーリは「価値の維持」に重点を置いている
フェラーリは以前から車両の価値の維持に力を入れていて、業界に先駆けて導入した「7年保証」もそのひとつであり、それ以前にフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリの言った「次のクラシックフェラーリは、いまあなたが乗っているフェラーリである」というところからも理解か可能です。
そして今回エンリコ・ガリエッラ氏が語ったのは主にF80に関するものだといい、おそらくは顧客が「ここから10年、20年が経過し、バッテリーやエレクトリックモーターの世代が何世代も進化したとき、自分が所有するF80の修理やメンテナンスができるのかどうか、そして最高の性能とコンディションを維持できるのかどうか」と感じる不安に対する回答なのかもしれません。
実際のところ、ラフェラーリにおいても「ハイブリッド」ということで、バッテリーが劣化した場合に修理ができなくなるではと(マクラーレンP1、ポルシェ918スパイダーとともに)言われた時期があり、修理ができなければその価値が下がるのではとウワサされたものですが、実際には修理どころか「(時間の経過によって得られた性能向上を反映させる)アップグレード」も可能であり、フェラーリのように「乗る時間よりも保管しておく時間のほうが遥かに長い」クルマにとっては非常に重要なことだと思われます。
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フェラーリは内製率を高めている
そしてこういった「永久保証」が可能となるのが内製率の高さであり、他の自動車メーカーに比較して「自分たちでパーツを作る比率が高い」こと。
例えばエンジンだと「(機械部品だと)クランクシャフト以外は」すべて自社で製造しているといい、これからの心臓部であるエレクトリックモーターについても(現在はYASAからの供給を受けているものの)今後は自社製に切り替えてゆくとされ、そのために建設したのが「Eビルディング」。※実際、F80に積まれるエレクトリックモーターは自社製に切り替わり、SF90系に積まれるものよりもフロントモーターでは36kg軽くなっている
この「E」は「エレクトリック」のEではないものの、エレクトリックモーターやバッテリーもゆくゆくはここで製造することになるとアナウンスされており、ますますフェラーリはその内製率を高めてゆくものと思われます。
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さらに、フェラーリは50年ぶりにル・マン24時間レースに復帰するに際し、ポルシェやランボルギーニ、BMWのようにLMDh規定に則った既存のシャーシを使用せず、いかにコストがかかり、困難が待ち受けていようとも自社で車両を設計・製造する道を選んでいます。
これについても、「我々は自動車メーカーであり、レーシングカーコンストラクターなので、他社の作った車体を使用することはそもそも考えていない」という理由からですが、フェラーリはその目的を達成するために最適な設計を自社で行い、そして自社で製造することにによって、より車両に関与する割合を高め、自分たちでコントロールできる範囲を拡大しているのだと思われます(日産やホンダもネオクラシックモデルのパーツ供給をはじめたが、サプライヤーの倒産などで再生産できないパーツも多く、しかしフェラーリでは可能な限り自社で生産しているため、再生産が比較的容易である)。
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