| 今まで「500台目の」ラフェラーリの落札額、収益金の用途についてはフェラーリから公式に語られたことはなかったと記憶している |
ラフェラーリにはのちのフェラーリにつながる「初めての装備」が多々盛り込まれていた
さて、フェラーリは少し前から「スペチアーレ」についてのコンテンツを公開しており、これまでには288GTO、F40、F50などの開発秘話等が語られています。
そして今回はラフェラーリについてのコンテンツが公開されており(なぜかエンツォフェラーリが飛ばされているようですが)、ここでその内容を見てみましょう。
ラフェラーリは「フェラーリ初の量産ハイブリッド」
このラフェラーリは2013年のジュネーブ・モーターショーにて発表されたハイブリッドハイパーカーで、同時期に登場したマクラーレンP1、ポルシェ918スパイダーラと並び「ハイパーカー御三家」と表現されることも。
F40やF50、エンツォフェラーリのように「フェラーリ創業何十周年」という記念モデル的扱いではなかったものの(それはラ・フェラーリ・アペルタに譲ることになる)、紛れもないフェラーリのスペチアーレであり、288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリと同じく高貴な血統を引き継ぐシリーズです。
そしてこの”フェラーリのスペチアーレ”はいずれも革新的な技術やモータースポーツから直接フィードバックを受けたテクノロジーを使用していることが大きな特徴で(加えてホイールがセンターロックであることやドアミラーが専用品であることも共通するポイントである)、ラフェラーリについても、フェラーリの伝統的なV12エンジンに加えてF1由来のKERS(運動エネルギー回生システム)が投入されています。
自然吸気6.3リッターV12エンジンは800馬力(@9,000rpm)、エンジンとトランスミッションとの間に挟み込まれるエレクトリックモーターは163馬力を発生し、システム合計では963馬力という驚異的な数値を誇ります(SF90ストラダーレが登場するまでは、フェラーリで最もパワフルなロードカーであり続けた)。
そしてこのKERSシステムによって、フェラーリは自然吸気V12エンジンの低速(低回転)トルクを補い、かつターボに頼らないことで(ターボラグのない)リニアなレスポンス、かつシームレスなパフォーマンスを実現することに成功しており、これによって「フェラーリ史上、もっとも優れるパワートレーン」だと称されたのも記憶に新しいところですね。
ラ・フェラーリは最新のシャシー、エアロダイナミクスを備える
そしてラフェラーリのセールスポイントはパワートレーンだけにとどまらず、軽量かつ強靭ななカーボンファイバー製モノコック、そして当時最先端のエアロダイナミクスといった部分にも及びます。
F40以来のスペチアーレにおける伝統となったカーボンファイバー製モノコックを持ち、外装だと前後ディフューザーに内蔵されたフラップ、フロント / アンダーボディのガイドベーン、アクティブ・リヤウイングにて構成されるアクティブエアロを有していますが、なんといっても特筆すべきはそのボディの美しさ。
今回フェラーリはラフェラーリのデザインスケッチの一部を公開していますが、様々な試行錯誤が繰り返されていることがわかりますね。
なお、ラ・フェラーリのデザインはピニンファリーナからフェラーリのデザイン部門(チェントロ・スティーレ)へと移っていて、そこで指揮を取ったのがフラビオ・マンツォーニ氏。
デザインがインハウス製となることでフェラーリのエンジニアとの密接な連携が可能になったものと考えてよく、チェントロ・スティーレによってデザインがなされた車両はそれまでのフェラーリに比較してコンパクトで車高が低いものが多く、つまりこれは「パッケージングの時点からデザイナーとエンジニアとのセッションが始まっている」ということなのかもしれません。
実際のところ、ラフェラーリはハイブリッドシステムを追加しながらもエンツォフェラーリと同じ全長(4,702ミリ)にとどめ、しかし全幅を小さく(1,992ミリ)、そして車高も低く(1,116ミリ)設計されています。
1960年代〜1970年代のスーパーカーはエンジニアとデザイナーが一緒にパッケージングや構造を検討し、冷却系やドライブトレーン、サスペンションのレイアウトを考えていったといいますが、1980年代以降は分業化が進み、エンジニアはエンジニアの仕事に、デザイナーはデザイナーの仕事に特化する機会が多くなり、そして今やそれが「普通」になっているとされ、しかしフェラーリはデザインを自社で行うことにより、「かつての」スーパーカー黄金時代の開発手法を取り入れたかったのかもしれませんね。
ラフェラーリのインテリアもまた「最先端」
上述のとおり、フェラーリのスペチアーレは常に最先端の技術を取り入れていることも見逃せませんが、ラフェラーリではその内装についても「最先端」を貫いており、「表示の変更が可能なデジタルメーターを採用した最初のフェラーリ」となったほか、F1スタイルのステアリングホイール、ギアセレクターを内蔵した「ブリッジ」などたくさんの見どころも。
つまりラフェラーリはフェラーリ伝統のV12エンジンにF1由来のハイブリッドシステム、最先端のエアロダイナミクスやエレクトリックデバイス、そしてインターフェースをプラスした「現代のフェラーリにつながる先駆的存在」であったと言ってよく、これもまたフェラーリの限定モデルが持つキャラクターの一つでもありますね(スペチアーレに課せられた使命と言い換えることもできるかもしれない)。
さらにいえば、「電子制御は運転の楽しさを削ぐものではなく、むしろ運転の楽しさを増加させることができる」と証明したこともラフェラーリの偉業の一つに数えられ、これもまた今日のフェラーリが掲げる「ファン・トゥ・ドライブ」へと繋がる道を作ったところだとも考えられます(フェラーリの電子制御は人間の感性に訴えかけるものであり、ドライバーが予期する以上のフィードバックを返すことで気分を高揚させてくれる)。
ラフェラーリは499台のみの生産となり、それに続くラフェラーリ・アペルタの生産はもっと少ない210台。
なお、当時のフェラーリCEO、セルジオ・マルキオンネ氏の要望によって2016年に”500台目の”ラフェラーリ(クーペ)が製造されており、この個体はチャリティオークションへとかけられ、その収益金(オークションにて750万ドルで落札されている)はすべて、その年に発生したイタリア中部地震の被災者救済のために寄付されています(オークションで落札された21世紀のクルマとしては最高額であった)。
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参照:Ferrari