| ラフェラーリはそのデザイン、パワートレーン、そして思想などすべてが「新しい時代へと」向っている |
そしてその存在はフェラーリのDNAを過去と未来とに「橋渡し」する役割を担っている
さて、フェラーリは自社の公式コンテンツにてアイコニックな過去のモデルに触れるという特集を定期的に行っていますが、今回はフェラーリ初のハイブリッドカー、そしてフェラーリをして「究極の跳ね馬」と言わしめるラフェラーリの登場です。
フェラーリはこのハイパーカーにつき「史上最高のダイナミック・パフォーマンスを持つフェラーリ」だとも表現しており、それを実現する最大の理由はF1由来のハイブリッドシステム「KERS」。
これは2009年にはじめて導入され、実際に同年のベルギー・グランプリにてキミ・ライコネン優勝へと導くなど、フェラーリ活躍の原動力にもなっています。
ラフェラーリはフェラーリのロードカーにおけるパフォーマンスを別次元へと押し上げる
このラフェラーリは288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリに続くスペチアーレ(特別限定モデル)で、生産されたのはわずか500台(499台+1台)。
これらスペチアーレはいずれも「モータースポーツと強く結びついている」という特徴を持ちますが、「最先端のテクノロジーを取り入れている」ことも見逃せず、とくにラフェラーリにおいてはそれが顕著です。
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そしてフェラーリはこの先端テクノロジーを「これまで培ったモータースポーツ活動、ロードカーの生産において得たノウハウ」と組み合わせ、これらによってパフォーマンス、そしてドライビングにおける楽しさを最大化しているわけですが、多数出願されている特許を見ても分かる通り、フェラーリの(ロードカー部門における)活動の究極の目的は「いかに楽しくスポーツカーを走らせるか」にあるのかもしれません。
そしてこのラフェラーリに取り入れられたテクノロジーには上述のKERSのほか、「アクティブエアロ」「(ロリー・バーンの設計による、そしてF1マシンと同じ工程で製造される)カーボンファイバー製モノコックシャシー」といったものもあり、しかしやはり最大のトピックはKERSシステムにほかならず、これがフェラーリの新しい可能性を切り開いたのだとも考えられます。
このKERSシステムは回生によって得た電力を163馬力のエレクトリックモーターへと供給することで駆動輪(後輪)のトルクを増強させることになりますが、この目的は「環境性能を向上させることではなくパフォーマンスを向上させること」。
よってシステムは6.3リッターV12エンジンのパフォーマンスを最大化するように設計されており、このV12エンジンも「エレクトリックモーターありき」のセットアップが与えられています。
どういうことかというと、「低速・(V12エンジンの)低回転時の走行は、トルクと即時応答性に優れるエレクトリックモーターに担当させ」、V12エンジンエンジンは中〜高回転に特化するというセッティングを持っており、つまりはエレクトリックモーターの採用によってV12エンジンは「低速・低回転時のトルクを重視しなくても良くなった」わけですね。※6.3リッターV12エンジンの許容回転数はなんと9,250回転である
このハイブリッドシステムの採用により、エレクトリックモーターとガソリンエンジンはそれぞれの得意分野に特化した仕事をすることが可能となり、V12エンジンは高回転化による高出力化(800馬力)が可能となっています。
結果的にシステム合計出力は963馬力にも達し、これはもちろん当時「最もパワフルなフェラーリ」でもあり、0−100km/h加速3秒未満、最高速350km/h以上というスペックを誇るうえ、フィオラノ・サーキットの周回タイムは先代であるエンツォフェラーリを5.2秒も上回るという性能を発揮することに。
なお、このハイブリッドに関する技術はのちのSF90ストラダーレにもフィードバックがなされていて、SF90ストラダーレでも(ラフェラーリ同様に)「低速域はエレクトリックモーターに任せ、ガソリンエンジンは高回転に特化する」ことによってフェラーリとしては未踏であった「1,000馬力」を達成しています。
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ラフェラーリはデザイン面においても「最先端」であった
なお、メカニズム的にも「最先端」であったラフェラーリですが、デザイン面においても同様に”最先端”を貫いており、そのスタイリングはまず過去に活躍したレーシングカーをモチーフとしつつ、そこに当時最新のアクティブエアロデバイスを組み込んでいます。
このアクティブエアロは可動式リアスポイラー、そしてフロントとリアアンダーに備わる自動調整式フラップによって構成されていますが、これらの働きによって高速走行時の安定性やコーナリング性能を向上させることができるようになり、さらには「大きなウイングやスポイラーを装着せずとも」十分なダウンフォースを得られるため、「スマートで洗練された」外観を獲得することに成功しているわけですね。
そしてこの外観は1960年代に活躍した(330P4や312Pなどの)レーサーを彷彿とさせるもので、抑揚の効いた前後フェンダー、そしてバブル型コクピットもそれを強調しているかのように思います。
なお、ラフェラーリのデザインを担当したのはピニンファリーナではなく(現在のフェラーリのチーフデザイナーである)フラビオ・マンゾーニ氏ですが、この頃から(現在のデイトナSP3などにつながる)「クラシカルなル・マンレーサー」にモチーフを求めるといった傾向が見られ、そしてそれが最新スペチアーレでもある「F250」へとつながっている、と考えることも可能です(同氏がF1マシンではなくル・マンレーサーに多くのモチーフを求めるのは興味深い事実である)。
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こうやって見ると、ラフェラーリはそのシステム要件(ハイブリッド)、そしてデザインという点において現代のフェラーリの「基礎」を形作ったと考えることができ、フェラーリのDNAを過去から未来へと橋渡しするという重要な役割を担ったモデルであることがわかりますね。
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