
| フェラーリのEVに対する人々の期待は非常に大きい |
フェラーリは絶対に顧客を失望させることはできず、むしろ「期待の上」を行かねばならない
さて、フェラーリは10月9日にブランド初となる電気自動車(EV)を発表する予定です(名称は”エレットリカ”だと目される)。
そして今回、EVにおいても“魂を揺さぶる走り”を実現するため、画期的な技術を開発していることが明らかになり、その方法とは最近出願された2つの特許によって示された「バーチャルエンジンとバーチャルギアシフトシステム」の存在です。
特許①:EVで内燃エンジンのトルク感とギアシフトを再現
1つ目の特許では、EVに組み込まれるエレクトリックモーターを使って内燃エンジンのようなトルク感、そしてギア付きトランスミッションの操作感を再現するシステムが記載されています。
- アクセルペダルの踏み込み具合と「バーチャルギア」の選択によって、出力トルクが変化
- 現行のフェラーリ車と同様、ステアリングのパドルシフトでギア操作を体感可能
つまり、EVでも「シフトチェンジを伴うドライビングプレジャー」を再現し、まるでガソリンエンジンを搭載したフェラーリを操っているような没入感を味わえるよう設計されているのだと想像できます。
これはちょっと「(フェラーリは常に未来を見ており、そして未来を目指すべきであるEVにおいて、過去の技術をオマージュするという意味で)意外」ではあるものの、しかしフェラーリは「ファン・トゥ・ドライブ」を重要視しており、よって「ファン」を実現するための要素として解釈すれば、この特許の出願も十分に理解できようというものですね。
ただ、単なる「ガソリンエンジンの模倣」ではなく、電子業界出身のベネデット・ビーニャCEOらしい「独自の要素」も付加されるものと考えられます(同氏自身も相当数の特許を保有している)。
特許②:デジタルサウンドで歴代フェラーリの“音”を再現
2つ目の特許は、車内外のスピーカーを使ってバーチャルエンジンサウンドを再生するオーディオコントロールシステムに関するもの。
- 音はクラシック、モダン、未来的、リラックス系など、ドライバーの好みに応じて選択可能
- ギアシフト時には専用の音響エフェクトも再生
- 内燃エンジン車のサウンドを録音・デジタル化して再現する技術も記載
つまり、「フェラーリの音はフェラーリであるべき」という哲学がEVにも反映されるわけですが、これについてはいささかの驚きを禁じ得ず、というのもフェラーリは以前に「フェイクサウンドを用いず、あくまでのエレクトリックパワートレーンが発生するサウンドを乗員に伝える」としていたため。
ただし「特許が出願されたから」といって、すなわちその技術が市販車に採用されるものではなく、今回の特許もまた「選択肢の一つ」なのかもしれません。
競合他社の動きとフェラーリの立ち位置
既にヒョンデはアイオニック 5 Nでバーチャルエンジンと8速DCTのようなギア制御、刺激的なサウンドを搭載し(これは非常に高く評価されており、多くのハイパフォーマンスカーメーカーが参考にしている)、Kia(キア)EV6/EV9 GTにも同技術が採用されています。
ダッジは“Fratzonic Chambered Exhaust”にてアメリカンマッスルカーの爆音を再現していますが、こちらは音だけでトルク感の再現はなし。
BMWも「ガソリン車を模した」エレクトリックモーターの出力とサウンドを開発中とされる中、ポルシェやホンダはこの手法には否定的。※反面、トヨタやレクサスはガソリン車風のシフト操作やサウンドをEVに与えるようだ
そしてフェラーリは”感性”に訴えるブランドだけに、この「バーチャル体験」技術を重視しているかもしれません。
なお、フェラーリは「(メーターを常に確認できる状況にはない)サーキットでの極限走行において、音や振動はそのクルマのパワートレーンをドライバーに伝えるための重要な手段」だともコメントしているので、「むやみにガソリンエンジンの音や振動を強調」することはなく、あくまでもフェラーリの哲学に則った解釈がなされるものと思われます。※ただしフェラーリの最初のEVは、サーキット走行よりも日常使いを重視したクルマになると思われる
まとめ:エンジンを失っても、フェラーリは魂を失わない
フェラーリ初のEVは2025年内に発表予定、2026年にデリバリー開始とされています。今回の技術がこの初号機に搭載されるかは不明ですが、フェラーリが“感情に響くEV”を目指していることは間違いありません。
フェラーリのバーチャルエンジン&ギアシフト技術は、単なるギミックではなく、「感動する走り」を電動化の時代にも継承しようとする真摯な挑戦でもあり、内燃エンジンがその象徴だったフェラーリが、いかにEV時代にその魅力を再定義するか——今後の展開から目が離せないといったところですね。
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参照:Motor1