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豊田章男「私は14年かけトヨタとレクサスを退屈なブランドから楽しい車を作るブランドへと変革したが、今それが一瞬にして元の姿に戻るのではという悪夢を恐れている」

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| 現在のトヨタの強さが「本物」なのか、「砂上の楼閣」であったのかはこれからはっきりするだろう |

豊田章男氏はトヨタを変革するのに相当な苦労を積み、しかしその成果を自分以外でも維持できるのかどうかに疑問を抱いている

さて、トヨタ自動車会長、豊田章男氏がディーラー代表団に対する質疑応答について興味深い回答を行ったとの報道。

豊田章男会長はおよそ14年間トヨタ自動車の社長を務めた後に会長職へと退いていますが、自動車業界には(意外と)珍しい”自らステアリングホイールを握り、クルマを走らせることに喜びを感じる”タイプです。

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豊田章男会長はトヨタを「退屈な会社」から「面白い会社」へと変革

同氏が社長を努めた14年の間にトヨタ自動車は大きく変わり、「非常に退屈な車クルマを大量生産する会社」から「誰もに寄り添い、楽しむことができるクルマを発売する会社」へと変貌を遂げており、それまでは”消極的選択肢”であったトヨタを”積極的選択肢”へと変革したわけですね。

そして何より大きな功績は「自動車生産世界ナンバーワン」の座を確固たるものにしたことで、これは誰の目にも疑いようがない事実であり、ここに異論を挟む余地はないかと思います。

そんな豊田章男会長ですが、今回自身の功績を振り返り(批判されることが多いためか、自身の成功について再確認する傾向があるようだ)、「トヨタがまた退屈な会社に逆戻りするかもしれない」「レクサスがEVブランドに切り替わることで販売機会が損なわれる」という懸念について言及することに。

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豊田章男「トヨタが普通の企業に戻るのではないかと常に危惧している」

今回のディーラー代表団との質疑応答にて、まず豊田章男会長は「トヨタが普通の企業に戻るのではないかと常に危惧しています。そしてその恐怖が多くの人に広がった時には手遅れです。 社長という肩書があっても、私がトヨタを変えるのに14年かかりましたが、状況は一瞬で元に戻る可能性があると恐れています」とコメント。

なお、同じ会見での発言によれば、豊田章男氏が(2009年に)社長に就任した際、トヨタ自動車は「市場シェアと販売台数」を最重要視しており、つまりこれが最終的な目標であったもよう。

ただし豊田章男氏はこの目標を「結果」へと置き換え、「いいクルマを作れば、自ずと販売台数も増え、市場シェアも高くなる」という意識改革を行ったといいます。

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これは至極もっともな考え方で、たとえばぼくらの仕事に対する考え方であっても、「報酬や役職」を求めるのではなく、与えられた仕事をきっちりこなすことで評価を上げ、それに伴い報酬やポジションが上がってゆくと認識して仕事に向き合ったほうが健全であり、自分の能力も高まるんじゃないかと思います。

つまりは目に見える数字や肩書だけを追い求めると「心が貧しくなる」とぼくは考えているわけですが、会社にしても同じことが言え、「売上や市場シェア、利益」だけを求めると本筋を見誤ってしまう可能性が出てくるわけですね。

レクサスは「つまらない」ブランドだった

加えて、豊田章男氏はかつて「レクサスはつまらない」と言われた時代を振り返り、これは2011年にペブルビーチにて新型GSを発表した時になされた指摘なのだそう。

この一言によって豊田章男氏は「より良いクルマを作る」という決意が確固たるものとなり、”会社との戦いが始まった”とも。

実際のところ、社長という立場にあってもそれまでのトヨタ/レクサスを変革することは容易ではなく、たとえばレクサスのエンジニアリングチームに「つまらないクルマではなく、楽しいクルマを作りたい」と申し入れたとしても、チームは「そういった(つまらないという)データも苦情もありません」とだけ答え、そこで会話が終わってしまったと語っています。

たしかにレクサスは完璧に近いクルマであり、文句のつけようがないかもしれませんが、それは「好きの反対は嫌いではなく”無関心”である」と言われるように、レクサスに関しては多くの人々がなんら思い入れを持たず無関心であり、嫌いだと思えるほどの感情移入すらできなかったからなのかもしれません。

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そこで豊田章男氏はなんとかエンジニアを説得するために(おそらく他社の)より良いクルマを彼らに運転させるものの、「データ上では同じクルマです」と判断されてしまい、つまりは「エモーショナル」という要素が全く排除されていたもよう。

ただしそこからレクサスを変革し、今では新型GXやLBXのような「変わり種」、そして新しい価値観を持つモデルが登場することとなったわけですが、豊田章男会長はこういった「自身が行った改革」が一夜にしてもとに戻ってしまうことを恐れているわけですね。

さらに(完全電動への移行期限を定めていないトヨタとは異なり)2035年に「EVのみのブランド」へと移行することを発表したレクサスの方針についても懸念を示しており、豊田章男氏はこれによって「レクサスのクルマを世界中全ての人々が購入できるわけではなくなることを意味する」と述べています。

現在、世界で約10億人が、充電やインフラの制約も含め、十分な電力が不足しています。 これ(2035年のレクサスのフルEV化)は、トヨタが全世界でフルラインナップを提供する一方で、レクサスを販売する地域が限定されることを意味します。 私たちはいつかそのような決定に直面することを覚悟しなければなりません。

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豊田章男氏はこれまでも「モノ言う経営者」であり、様々な意見を口にしてきましたが、主にそれは社外の要因や世間の認識に対するものであり、しかし今回は声高に社内に対する批判めいたものを口にしたのが印象的。

こういった感情はおそらく一朝一夕で形成されたものではないと考えられ、豊田章男氏は社長就任からいままでずっと社内では「孤軍奮闘」、そして社外からは「気候変動対策に対して熱心ではない」と批判され続け、ずっと孤独を抱いていたのかもしれません(これはかつて、社内でGazooプロジェクトを立ち上げたときも同様であったのだと思われる。豊田章男氏はけっこう社内外で抑圧されてきたのかもしれない)。

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参照:CARSCOOPS

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