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トヨタ・センチュリーは「2人しかいない」マスターインスペクターによって全台数の全機能が実走行も含め3時間半をかけて検査され、精製水で洗車されたのちに出荷される

トヨタ・センチュリーは「2人しかいない」マスターインスペクターによって全台数の全機能が実走行も含め3時間半をかけて検査され、精製水で洗車されたのちに出荷される

| 全台数を検査するのはトヨタ/レクサスではセンチュリーのみ |

さらに「一人が責任を持って」全項目を検査するのもセンチュリーのみ

さて、先日は「トヨタ・センチュリーSUVのボルトの締め付けには、ほかモデルの12倍の時間を要する」という話をお届けしましたが、今回は完成後の検品がいかに重要であるかというストーリー。

これはトヨタが「日本のものづくりの職人技を紹介するシリーズ」のひとつとして公開したものですが、設計や製造に関するテクノロジーがいかに高度化したといえど、やはりものづくりの中心にあるのは”人間”であるという事実を強調した内容となっています。

そして今回の主人公はセンチュリーを製造するトヨタの田原工場にて品質管理部 品質検査二課 専門員を務める比嘉さんです。

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トヨタ・センチュリーの製造を担当するのはわずか40名の精鋭たち。3つの試験をパスし「1つのボルトを締めるのに他の車の12倍の時間をかける」
トヨタ・センチュリーの製造を担当するのはわずか40名の精鋭たち。3つの試験をパスし「1つのボルトを締めるのに他の車の12倍の時間をかける」

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センチュリーの製造の多くは自動化されているが

センチュリーの製造に関し、ところどころに職人が関与するといえど、ボディパネルのプレス加工から溶接、塗装、部品加工、組み立てに至るまで、やはりそのプロセスの多くは自動化されています。

もちろんセンチュリーでは他のクルマよりも厳しい品質基準が設けられ、あらゆる工程において細心の注意が払われていますが、トヨタによれば「どんなに注意を払っていても、塗装の欠陥や組み立て上の欠陥を完全に取り除くことは困難である」。

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そこでセンチュリーの高い品質基準を守るマスターインスペクター、比嘉さんが登場することになり、彼は生産ラインの最終工程を監督し、塗装の仕上げから内外装の組み立て精度、走行音や乗り心地などすべてをチェックする役割を背負っているのだそう。

この生産ラインの最終工程に導入されている検査では、内外装の品質からすべての機能が適切に機能することの確認、不規則な異音や運転に影響を与えるその他の問題に至るまで、完成した車両のあらゆる側面の最終チェックが含まれており、言い換えれば「検査はクルマの品質を守る最後の砦」。

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通常、このプロセスは複数の検査官に分割され、各検査官が特定部位(ある検査官はボディのみ、またある検査官は内装のみをチェックするなど)の車両要素を監督するそうですが、新型センチュリーでは、1人の検査員が検査に関わる全工程を担当し、車両全体を検査するという手法が採用されています。

これは「卓越した技術と知識を持つ職人が創意工夫を駆使し、最高の品質を保証する」ことを目的としたもので、メルセデスAMGの「ワン・マン、ワン・エンジン」のように、その工程すべてに責任を与えることで、より良い結果を導き出そうということなのだと思われます。

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しかしもちろん、誰もがセンチュリーの検査員になれるわけではなく、トヨタはセンチュリー専任検査員育成のために新しい認定システムを導入し、「顧客の視点に関する経験に裏付けられた徹底的な知識、 プロセス全体を高いレベルで実行するためのスキルと専門知識、開発者のビジョンを汲み取るモノづくりを具現化する力」という要件を確実に満たしている人物だけにセンチュリーを検査する「マスターインスペクター」の資格および称号を与えているのだそう。

この比嘉さんは「2人しかいない」マスターインスペクターの一人であり、以前はレクサスの検査工程(主に外装仕上げの品質チェック)に携わっていたものの、センチュリープロジェクトの話を聞き、ぜひそれに関わりたいと考えた、と語っています。

手を挙げて、ぜひやりたいと言いました。通常の検査では各人が限られた範囲で作業を行いますが、センチュリーでは全体を監督します。 それが私を惹きつけた理由です。

センチュリーは伝統を誇る特別な車で、上司から結果を知らされた時はとても嬉しかったのを覚えています。

同時に、検査プロセス全体にわたる自分のパフォーマンスが顧客エクスペリエンスに影響を与える可能性があることを知り、プレッシャーを感じました。

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マスターインスペクター認定後、15ヶ月の研修へ

当時まだセンチュリーの検査プロセスに必要な幅広いスキルをすべて備えた検査員は存在せず、比嘉さんはマスターインスペクターの認定を受けた後、まず15か月の研修を受けることになりますが、この時点ではセンチュリーSUVの生産が開始されていなかったため、レクサスの検査ラインに残りつつ、経験の足りない部分を補う形で訓練しながらセンチュリーSUVの検査手順の確立にも携わったと紹介されています(つまり比嘉さんはセンチュリーSUVの検査手順を作成した人物の一人ということになる)。

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なお、組み立て後の最初の検査内容は「美しく高品質な塗装が施されているかどうか」。

このステップは、側壁と天井に蛍光灯が等間隔で取り付けられた検査ブースで行われ、 車体への光の反射によって塗装面やボディパネルが均一であるかどうかを確認し、さらには自然光下でのクルマの見え方を確認するために、蛍光灯だけでなく太陽光の周波数に合わせた照明も使用します。

なお、こういった塗装に関する検査は非常に時間がかかり、よって(センチュリー以外の)トヨタ/レクサス車の場合は、生産されたクルマの中から一定比率を抜き取って検査を行うものの、センチュリーSUVの場合は「全数検査」。※全数検査を行うのはトヨタ/レクサスではセンチュリーのみだそうだ

もちろん塗装の光沢や平滑性に関してはレクサスよりも厳しい基準が設けられているとのことで、検査項目はボディパネル接合部の隙間や凹凸の有無など17工程から成り立っています。

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そしてこの塗装やフィッティング検査が完了すると、センチュリーSUVは機能検査のために移動させられ、そこでは走行、回転、停止といった基本性能がチェックされますが、EVモードで走行することによって車内を静かな状態に保ち、ここでは異音のチェックも行われるようですね。

加えて(街路を再現した)テストコースでは実際の使用を想定した検査が行われ、高速走行に加えて石畳などの凹凸のある騒音の多い路面を走行した際の静粛性や快適性も検査対象になるといい、トータルでは3時間半を要することに(センチュリーSUVは1日に30台生産されるそうなので、2人でこの検品を担当するならば、1日15台を確認するという計算になるが、計算上では1日に15台を見ることはできず、よってトヨタはマスターインスペクターを増員するものと思われる)。

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すべてのテストが終わった後、センチュリーSUVは工場へと戻され、ここでは通常の洗車に続き、塗装工程で使用する精製水による洗浄を経て最終行程に進むそうですが、この精製水には不純物が含まれていないため乾燥時に水滴がボディ表面に残らず、水分を拭き取ることでボディを傷つけるリスクがないということにも触れられています。

この洗車が終了した後にはボディとホイールに(輸送時に傷が入らないよう)保護フィルムを貼り付けて出荷ヤードへと輸送し、ここでようやく比嘉さんの仕事が完了します。

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もともとマークⅡやチェイサーなどのトヨタ車が大好きだったので、これを目指してトヨタの生産現場に転職し、入社当初からレクサスの検査課に配属され、以来ずっと検査の仕事をしてきました。車体はエンジンフードやフェンダー、ドアパネルに至るまでさまざまな部品で構成されており、ここでは車両の各部品間の隙間や高低差が基準を満たし、バランスが取れているかを厳しく検査します。

隙間や高低差を測定する器具はありますが、通常は隙間を目視で確認し、高さは手のひらで確認します。 見て触ってすぐに良し悪しが判断できます。内装も同様に部品間の隙間や高低差、左右のばらつきなどを確認します。 コンポーネントが正しく組み立てられており、不要なノイズが発生していないことを確認するために、コンポーネントに触れたり、動かしたり、移動させたりします。

個人的には、前後ドアの隙間などは目視チェックから始めます。 次にノギスで計測して誤差を確認します。 このプロセスを何度も繰り返すことで、目視検査の精度が向上しました。

いずれのクルマも、お客様にとっては、かけがえのない大切な一台です。 検査の専門家として、私は検査の経験が決して損なわれないようにしたいと考えています。センチュリーには厳しい基準があり、10分の1ミリまで完璧でなければなたず、お客様自身でも気づかないような欠点を見つけることに日々精進しています。

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参照:Toyota Times

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