| おそらく、当面の間、BYDを止めることはどの自動車メーカーにとっても難しいだろう |
ただし「グローバル」となるとBYDの存在感は強くない
さて、現在急成長を続けるBYDですが、8月9日には500万台目の新エネルギー車(NEV)を生産した、と発表。
なお、BYDはもともとガソリン車メーカーとして出発したものの、数年前にNEV専門メーカーへと大きな転換を図り、現在生産しているのはPHEV(プラグインハイブリッド)とEVのみという「EV専業メーカー」です。
BYDによれば「初めて100万台のNEVを生産するまでに約13年を要したが、それ以来、販売台数と生産台数が急増し、300万台達成まではそこから18カ月、500万台を達成するのにさらに9カ月を要したのみ」。
そしてこれもBYDによれば「世界で最も多くのNEVを生産した自動車メーカーになった」とのこと。
2022年はBYDにとって飛躍の年に
なお、2022年はBYDの歴史において極めて重要な年となっていて、販売台数が186万台を突破しており、続く2023年も好調が続き、今年1~6月の世界販売台数は150万台、うち海外販売台数は92,469台。
ただしBYDは一貫して「PHEVとEVとの内訳」を発表しておらず、純粋な電気自動車つまりBEV(バッテリーEV)の販売台数がどの程度なのかは不明です。
そしてBYDがなぜここまで成長を続ける理由としては「コストパフォーマンスと多様なラインナップ」にあるといい、自社でバッテリーを製造しているというメリットを最大限に活かして「EV性能に対しての割安な価格設定」を行っていることがひとつの理由として挙げられます。
そのほか、上述の通りBYDはもともとガソリン車としての歴史を持っているので自動車の設計や製造ノウハウを蓄積しており、NIOやXpeng(シャオペン)のような振興EVメーカーに比較すると十分なリソースと資金の蓄えがあり、EVメーカーとしてスタートを切るには理想的な環境にあったとも言えそうですね。
ただ、やはりもっとも優れていたのはBYDが「ガソリン車を捨てる」と判断したことで、これは第一汽車や北京汽車、上海汽車などとは異なってガソリン車生産において日米欧の自動車メーカーと合弁会社を設立していなかったため、比較的「身軽に動くことができたから」なのかもしれません。※EV生産に関してはメルセデス・ベンツ、トヨタと提携している
ちなみに中国の自動車メーカーは外国の自動車メーカーとの提携によって技術移転を図る例が大半ではあるものの、奇瑞汽車や吉利汽車のように「提携を行わない」例もあり、その場合は提携先の顔色を伺わず「好きに」行動ができることがメリットであると思われます。
BYD会長兼社長はこう語る
そして今回、BYDの会長兼社長である王傳福氏が発したコメントは以下の通り。
8月9日、500万台目の新エネルギー車が生産ラインから出荷され、私たちはこの驚くべきマイルストーンを達成した世界初の自動車メーカーとなりました。
最初の新エネルギー車を100万台生産するのに13年かかりました。その18ヵ月後には300万台のNEVを達成しています。そしてわずか9ヵ月後の今日、500万台の大台を達成しました。
この画期的な達成を可能にしてくれたお客様、パートナー、そして献身的なチームメンバーに感謝します。
今日、BYDの足跡は世界54以上の国と地域に広がっています。
この重要な旅路〜世界の温度を1度下げるという〜において我々が欠かせない存在であることを支えてくださるお客様、信頼できるパートナーの皆様をはじめ、世界中の皆様に心より感謝申し上げます。
On August 9th, our 5 millionth new energy vehicle rolls off the production line, making us the first automaker globally to achieve this remarkable milestone.
— BYD (@BYDCompany) August 9, 2023
It took 13 years to build our first million new energy vehicles. Eighteen months later, we reached three million NEVs.… pic.twitter.com/vYmBkSQhbX
BYD's 5 Millionth New Energy Vehicle Rolls Off the Production Line
— BYD (@BYDCompany) August 9, 2023
Today, our footprint has extended to more than 54 countries and regions across the world.
We would like to express our heartfelt gratitude to everyone around the world, from our supportive customers to our… pic.twitter.com/SCH1Mh8C2V
そして王傳福氏は「自動車業界の古い伝統を打ち壊す」ために中国の自動車メーカーが一丸となって世界に挑むべきであるとも語り、実際に関係各社へと呼びかけていますが、BYDとて死角がないわけではなく、それは「輸出比率が小さいこと」。
つまり売上の大半は中国国内で占められていますが、いずれはそれも頭打ちとなり、かつ中国には多くの競合が登場しているため、一定の時期をすぎるとBYDは「追われる立場」となってしまうわけですね。
その状況であってもBYDが販売を伸ばそうとすると、それは「輸出」しかなく、しかし世界のEV市場においてBYDがどれほど存在感を発揮できるのかはまだまだ未知数です。
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参照:BYD(X)