
| 「世界中で売れている」中国製EV、その販売実績は本物か? |
発覚のきっかけは「購入者の違和感」
中国のEVメーカーである哪吒汽車(Neta)とZEEKR(ジーカー)が、実際には販売されていない車両を保険登録して“販売済み”としてカウントしていたと報じられ話題に。
ここ最近の中国では「0km走行中古車」が溢れかえっていたり、値引きが常態化している、さらには助成金(補助金)の不正受給という報道もなされていますが、今回の水増し登録も「中国市場の過剰競争と制度の歪み」によるものかもしれません。
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中国のEV市場、実は「飽和状態」か
近年、BYDやZEEKRをはじめとした中国製EVは、ヨーロッパや東南アジアなど世界中で販売を拡大し、「中国車が爆発的に売れている」と報じられてきたことが記憶に新しく、しかし、この成功の一部は“数字のマジック”によるものだった可能性が浮上しています。
ロイターの報道によると、哪吒汽車(Neta)とZEEKR(ジーカー)は、実際にはまだ販売していない車両を「販売済み」としてカウントし、販売実績を水増ししていたとのことで、これは中国の保険・登録制度を利用した“架空販売”スキームだとされています。
実際の販売前に「保険登録」で売れたことに?
報道によれば、これらのメーカーは、販売前の車両に自社や系列ディーラーを通じて保険をかけて登録することにより、統計上は“販売済み”と扱われる状態を意図的に作り出していたもよう。
- 哪吒汽車の場合:2023年1月から2024年3月の間に、6万4,719台がこの方法で水増しされた可能性があり、これは期間中の販売台数11.7万台の実に55%超に相当
- ZEEKRの場合:2024年後半、厦門市にある国営ディーラー「Xiamen C&D Automobile」を通じて、「ゼロ走行距離中古車(zero-mileage used vehicles)」として多数の車両を仮販売登録
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国家による“業界洗浄”が始まる?
このような不正行為の発覚を受け、中国工業情報化部(MIIT)は登録から6か月以内の再販を禁止する規制」の導入を検討中と伝えられており、これは、実際にユーザーに渡る前の「ダミー登録販売」を防ぐための対策です。
そして報道によれば、問題発覚の経緯は以下の通り。
- 国家系メディアが広州・重慶などでZEEKRの購入者に取材
- 購入者は納車前に「すでに保険に入っていたクルマだった」と気づき、不信感を抱いたものの返金は拒否
- Netaの購入者3名も、保険の有効期限から過去にすでに登録されていた事実を知り、驚いたという証言あり
- 2023年12月には『中国証券報』がZEEKRの異常な販売実績(例:深圳で月間2,737台、通常の14倍)に疑問を呈して調査を開始
メーカーの反応は?
以下が現時点でのメーカーや関係者の公式な反応で、「事実を認めない」というスタンスであるとも考えられます。
- 哪吒汽車の親会社(Hozon Auto)およびXiamen C&Dはコメントなし
- 吉利(Geely)広報:「中国証券報の報道を否定するが、ロイターの調査にはノーコメント」
- ZEEKR(Weibo公式):「対象車両は展示用であり、安全上の理由から保険に加入していた。販売時点では“新車”だった」と説明。ただし、「販売台数に含めたか否か」には明言せず
中国EV市場は「飽和状態」か
今回の問題は、中国のEV市場が急速に成熟・競争過多になっていることの表れとも受け取れます。
国主導で支援されたスタートアップや巨大企業が乱立し、“生き残り”のために過剰な目標と数字合わせに追われている実態が明らかになったわけですが、このような不正が表面化したことで、今後の海外展開や信用にも影響が出る可能性が高く(上場している場合は株価にも影響が出る)、特に現在高いシェアを占める欧州や中東市場での信頼回復が急務となるのかもしれません。
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参照:Reuters