
| ジープやマセラティ、アルファロメオの親会社、ステランティスに暗雲 |
販売台数も大幅減、北米では25%減
ジープやフィアット、マセラティやアルファロメオの親会社であるステランティス。
傘下にあるブランドの販売不振によって危機的な状況にあると伝えられていますが、2025年上半期に約27億ドル(約4,000億円)の損失を見込むと発表し、これは関税の直撃に加え、北米での販売が25%減少するなど厳しい状況が続いているためだと説明されています。
ちなみにこの4000億円がどれくらいかというと、マツダの通期利益が約1900億円なのでその「倍」に相当し、しかしこのステランティスの数字は「半期」なので、もし下半期にさらに赤字が拡大すれば(その可能性は高い)8000億円もの損失を被ることに。
参考までに、ホンダの(関連子会社を含まない)直近の通期利益は8358億円だったので、ステランティスは「ホンダの利益まるごと」を損失として計上するかもしれないというわけですね。
現実は予想よりも「深刻」に
なお、ステランティスはは今年4月、関税問題を理由に年間業績予想を取り下げていましたが、今回の発表でその深刻さが裏付けられ、さらに「事実はさらに困難であった」ことが明らかになっています。
2025年第2四半期のグローバル販売台数は前年同期比で6%減少。中でも北米市場では25%減少(約10.9万台の減少)という厳しい数字が公表され、この販売不振の背景には、以下のような要因があるとされています。
- 関税による価格上昇
- フリート(法人)向け販売の減少
- 欧州での「製品移行期間」
┗ 新型車や、フィアット500ハイブリッドの立ち上がり遅れ
関税だけで3億ドルの損害、今後の業績にも影響
ステランティスは、関税による損失だけで約3億ドル(約450億円)に達すると予測していますが、関税対応として一部の生産計画をキャンセルしたことも赤字の一因になっており、加えて、業績改善に向けた内部施策も実行中ではあるものの、その効果が現れるのは2025年下半期以降になる見込みです。
さらに以下の要素もマイナスに働いている、と説明されています。
- 原材料や物流などの産業コストの上昇
- 為替変動
- 地域別の需要変化
一方で、中東・アフリカ・南米は好調
厳しい状況の北米や欧州とは対照的に、中東・アフリカ地域では販売が30%増加。
また南米でも20%増加しており、これら新興市場がステランティスの“希望の光”となっているようですが、こういった状況を見るに、「一部地域に販売を依存する(今回だと北米)」ことの危うさを再認識させられますね。※フェラーリはそういった地域依存からの脱却を念頭に、中国での販売を意図的に絞ると公表している
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新CEOアントニオ・フィローザの手腕に注目、タフな状況の中で問われる「ブランドの真価」
2025年5月に就任した新CEOアントニオ・フィローザ氏は、「ステランティスには、社内の“正しいこと”で“問題”を解決できる力がある」とコメント。
一部で噂されたマセラティの売却やクライスラーの整理統合についても否定しており、自力再建路線を貫く姿勢を見せています。
状況をまとめると以下のとおりで、世界14ブランドを傘下に持つステランティスではあるものの、その多様性が逆にコストや戦略の難しさにつながっている側面も。
今後、どのブランドを伸ばし、どこを整理するか―フィローザ新体制の舵取りに注目が集まります。
- ステランティスは関税影響で上半期に約4,000億円の損失予測
- 北米での販売は前年比25%減
- 中東・南米市場は順調、今後の成長源に
- 新CEOの手腕が今後の浮沈を左右する
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