| 腕時計は世間の評判ではなく、自分の好みと判断において選ぶべきである |
さて、先日は「買って後悔した」腕時計を紹介しましたが、今回は逆に「買ってよかった」と感じた腕時計について。
買って後悔したのは「ベル&ロス」、「ブライトリング」、「セイコー・アストロン」の3つで、いずれもそれなりの良さはあるものの、「価格に見合わない」というのが後悔した理由。
逆に「買ってよかった」というのは価格以上の満足感があるということになり、それは「オーデマピゲ・ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフ」「ロレックス・サブマリーナ」「ウブロ・オーシャノグラフィック」。
ここでその理由を見てみましょう。
オーデマピゲ・ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフ
まずはオーデマピゲ・ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフ。
ぼくはこれまでオーデマピゲ・ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフについて42ミリ、44ミリを1本づつ購入していて、もう一本44ミリを予約中(つまりはかなり気に入っている)。
そして最初に購入したときに驚かされたのは、その実用性の高さです。
オーデマピゲというと雲上ブランドのひとつであり、実用性はあまり気にしていないように思えますが、たとえば衣類の袖が当たるケース側面は「ブラシ加工」が施されていて、つまり傷がつきにくい、もしくは傷がついてもわかりにくい仕様となっているわけですね(多くの腕時計では、ケースサイドが鏡面仕上げとなっている)。
そして、モデルによりますが、比較的何かにヒットしやすいベゼルについても「ラバー」や「セラミック」など傷が入りにくい素材を使用しています。
ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフは「お金持ちがリゾートで身につける」ことを想定して企画されたと言われますが、まさにそのあたり「気にせずガンガン使える」仕様を持っているのは特筆すべき部分。(怖くてとてもガンガン使えませんが)
そのほか実際に身に着けていて「スゴイなこれ」と思うのは、ブラシ仕上げの”溝の深さ”。
これによってケースに表情が与えられることになり、光の当たり具合によってキラキラ見えたり、逆にシックに見えることも。
そしてケースとベルトとの継ぎ目にある2つのパーツは「どこからどう見てもオーデマピゲ」であることを主張していて、これを知る人には一発でわかるところもイイ、と考えています。
そしてこの「カクカク」したデザインも見るたびに満足感を得られる部分で、その理由としては「エッジがしっかりしている(立っている)」ということ(ビシっとエッジを立たせることは難しい)。
そのために深い陰影が出ることになりますが、これだけのエッジを出せるのはオーデマピゲを除くとロレックスくらいかも。
そして「ブラシ仕上げの面」と「鏡面仕上げの面」の境界線がしっかりしているのも特徴で、一つの時計の中にこれだけ多彩な表情が詰め込まれている腕時計もそうそうないだろうという印象も受けます(ブライトリングはこの”境界線”が甘い)。
そのほか、ダイヤルの「メガ・タペストリー」についても凹凸がしっかりしていること、バーインデックスの表面に全く歪みがないこと(これ重要。100万円クラスの腕時計でもインデックスがイマイチなものは多い)、針が薄くエッジの処理がしっかりなされていること(これも重要。ベル&ロスは針をシートメタルから”打ち抜いた”あとにサイドの処理をしていない)、針と文字盤とのクリアランスが小さいこと(これはパテックフィリップには敵わないけれど)、ビスの一本一本までにこだわっていることなど。
デザイン性のみならず加工精度が非常に高いと思わせるのがオーデマピゲであり、このあたりは「さすが」雲上ブランドだと感じさせられる部分です。
なお、オーデマピゲの腕時計を身に着けていると「扱い」が変わることも多く、それは海外において顕著。
日本国内においても高級ブランドショップや、はじめて入る腕時計店などでは威力を発揮することになりますし、これをチラリと見せると急に相手の態度が変わることがあります(とくにぼくは、いつもジャージを着ているので、服装だけだとその店に”そぐわない”人に見られやすい)。
オーデマピゲの腕時計はいずれも非常に高価で、ロイヤルオーク・オフショアクロノグラフだともう300万円くらい出さないと買えないレベルに(ジャガールクルトのムーブメントを積み、150万円くらいの定価を表示していた時期もあった)。
そして現在は販売店を統廃合している段階で、取扱店も絞られ、流通量もかなり減っている状態です。
よって、正規店には「ほぼ在庫がない」状況でもあり、今後も入手困難が続くことは変わりなさそう。
ロイヤルオーク・オフショアクロノグラフは、ダイヤル自体のデザインが地味でもあり、画像で見るとなかなかその良さが伝わりませんが、実際に購入し、自分のものとして身につけてみると、着用する都度そして時間を確認する都度その素晴らしさを体感できることになり、いかに高価といえど「けして高くない買い物」だと考えています。
ロレックス・サブマリーナ
ぼくはこれまでにGMTマスターII、エクスプローラーII、デイトナを3本購入してきましたが、実はサブマリーナを購入するのははじめて。
それまで購入しなかった理由としては「あまりに人気があるから」で、サブマリーナを身に着けていると「なにもわかっていないのに、人気があるという理由だけでサブマリーナを買った人と間違われるのが嫌だから」。
それでもちょっとした機会があり、たまたま正規店で入荷したてのグリーンサブを定価にて購入することになったわけですが、思えばロレックスの3針モデル、そしてオイスターブレスを購入するのは久しぶり(この前に購入したデイトナは「レザーブレス」)。
そして最新世代のオイスターブレスに驚かされることになるのですが、その理由は精度の高さ。
カミソリの刃一枚も入らないだろうというピッタピタの狭い継ぎ目を持ち、その動きも「はちみつの入った瓶のなかをスプーンでかき混ぜるような」ヌルリとした感覚を持っています。
ぼくの知る限りではこれだけの精度のブレスレットを作れるメーカーはロレックス以外には存在せず、「遊び」がまったくないのにはちょっとびっくり(ずっと以前に購入したGMTマスターII、エクスプローラーIIのブレスには遊びがあり、ここまでの精度はなかった。よって外観はほぼ変わらないのに、ロレックスは大きく、そして絶えず進歩している)。
そしてバックル部分の造形や加工品質も格段に向上して操作感も上品になり、バックル内側のプレートも肉厚になって剛性感も相当にアップしています。
こういった剛性感、可動部の滑らかさは絶えず体感できる部分でもあり、身につけていて楽しい、つまり買ってよかったと感じさせる部分ですね。
もちろん腕時計を手に持って振ったとしても、下品な「カチャカチャ」という、部品の隙間そして部品同士が干渉する音も皆無。
加えてケースやブレスレットのサイド部分の「磨き」も抜群で、これは「光っている」というだけではなく、その映り込む像の歪みのなさ、エッジの確かさにも「今のロレックスはこんなに進化しているのか・・・」とまたまたびっくり(最近別に購入したデイトナ116518はケースに丸みがあるタイプなので、エッジの鋭さはなく、しかしサブマリーナはケースの表や側面が”平面”なのでこれに気付かされる)。
そして凹凸の正確さ、ブラシ面と磨き面との境界の明確さ、エッジの鋭さといったところもオーデマピゲ同様の素晴らしさを誇る部分です(ロレックスのほうがちょっと上かも。なお、ブラシ仕上げはオーデマピゲよりも浅く細かい)。
そのほか、インデックスのフィニッシュの美しさ、針の薄さと「面」の均一さもロレックスの美点のひとつで、しかし以前にも増して精度が向上している模様。
現在のロレックスは実用時計の域を超えて「ラグジュアリーウォッチ」へと変貌を遂げていますが、昔からロレックスを愛用してきた身としては、その進歩度合いを肌で感じいることになり、度重なる値上げにも納得、そして「どうりで売れるわけだ」と心底納得。
さらにはリューズを引っ張り出すときのクリック感、針を回すときのなめらかな触感も他ウォッチメゾンの追随を許さないところですね(こういった”感覚”に訴えかける部分はけっこう重要)。
そんなわけで、ちょっと別のロレックスでも買うかという気が起きてしまい、思わずヨットマスター40も買い増ししていますが、こちらも素晴らしい仕上げを持っていて、セラミックベゼルに浮かびあがる文字のエッジの正確さはまさに秀逸。
現在ロレックスは不動の人気を誇り、しかしその人気の理由は「単に名前だけ」「品薄だから」というものではなく、たゆまぬ進歩、それによる品質や美観、操作感の向上といった、”腕時計の基本”を極限まで追求しているからだということを今回の購入によってあらためて理解させられています。
久しぶりに購入してみて驚かされた、そして高い満足度を感じさせられる一本でもありますが、他のブランドも同じように「進化」しているのだろうかとも考えさせられ、以前に購入し、あまりいい印象を受けなかった「オメガ」「IWC」についても、ひさしぶりに買ってみるかとも思案している今日このごろです。
ウブロ・オーシャノグラフィック
そして最後の「買ってよかった」1本はウブロ「オーシャノグラフィック」。
これはビッグバンやクラシック・フュージョン、スピリット・オブ・ビッグバンとは異なるシリーズで、単独の「限定シリーズ」。
「1000」「4000」そしてキングゴールド、カーボン、チタン素材を使用したモデルがリリースされています。
この腕時計の「買ってよかった」というのはその存在感に尽きるとしかいいようがなく、ケース径はなんと48ミリ(パネライ・サブマーシブルの47ミリよりもデカい)。
ただ、その存在感は無類のひとことで、なんらかの理由で自身の存在感を主張せねばならないときには「ものすごく有用」な腕時計(そういった場は往々にしてある)。
そしてウブロらしい「メカニカル」な造形も特徴のひとつであり、「カクカクした」「エッジが立った」腕時計が好きなぼくにとってはたまらないデザインを持っています。
ちなみにウブロは異素材を組み合わせることで知られますが、こんな感じでケースは「サンドイッチ」。
つまり「無垢」ではないので、ゴールドといえどその使用量が少なく、よって「見た目の割に安い(それでも高いけど)」という特徴も。
そしてデザインを重視した腕時計なので、バックルもケースと同様の意匠を持っていて、異素材をサンドしたり、「H」デザインを持つボルトを採用したり。
ただ、これらボルトの向きが揃っていないこと、エッジがやや甘いということは否定できず、そのあたりは今後改善されてゆくことになるのかもしれません(ベル&ロスも、当初ボルトの向きが揃っていなかったが、最近のモデルではすべてのボルトの向きが揃っている)。
しかしながら、ウブロの腕時計については、加工精度などを云々するよりも、その全体のデザインそしてインパクトを楽しむものだと考えているので、細かいところは抜きにして”楽しめれば”いいと考えていますし、実際のところ「身につけたくなる」という魅力というか魔力のようなものをもつブランドだと認識しています。
正直言うと、「ウブロ」というブランドにはさほど良い印象がこれまでになく、ウブロはその創業の新しさをカバーするために「広告宣伝費」にお金をつぎ込んでいて、数々のセレブの起用、コラボで成り上がってきたという印象も持っていたわけですね。
つまりは腕時計としての「実力」ではなく、その人気は「虚栄」なんじゃないか、と。
加えて「お金の余っている成金の人」が身につけるというイメージもあり、気になる腕時計ブランドでありながらも「なかなか」手を出せなかったのもまた事実。
ただし実際に自分のモノとして購入してみると、意外にしっかりした作りをもっていて、ぼくが気にする「インデックス」「針」「リューズやプッシュボタンのクリック感」「時刻合わせの際の操作感」についても申し分なし。
そこに「遊び」は感じられず、確実なフィードバックが得られるということですが、今では「ウブロの人気は実力に基づいたものである」「ウブロを選ぶ人々は、固定概念に囚われず、自身の価値観に基づいてモノを選べる人である」という認識に変化しているわけですね。
ウブロは上述のとおりに「もともとセレブをターゲットにした」腕時計であり、シックさを売りにするパテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンとは対極にある腕時計。
現在は過剰な広告が見られなくなったので「ピーク」を過ぎたという印象があるものの、現在は様々なコラボにて少量限定モデルを多発し、それによって市場価値を上げる戦略を採用しているためか意外と価格が下がらず、むしろ高値安定。
これもまたウブロの価値が一般に浸透し始めたということになりそうですね。
ちなみにこのオーシャノグラフィック・キングゴールドに味を占め、二本目のオーシャノグラフィックとしてカーボンモデルも購入済み。
残るは「チタン」ですが、どこかに在庫があればこれも購入して”コンプリート”を果たそうと考えています。
以上がぼくの考える「買ってよかった」腕時計3本ですが、全体的なぼくの(腕時計に対する)嗜好としては、「カクカクしている(エッジが立っている)」「ちょっとゴツめ」「操作に対するフィードバックが重厚」「パーツ間の遊びがない」「異素材組み合わせ、もしくは新素材使用」「加工精度が高い」ということに。
これらはぼくのクルマに対する嗜好と完全に一致していて、よってスーパースポーツもしくはラギッドなSUVを好むのだと思われ、逆に「優雅な」「クラシカルな」腕時計やクルマを好まないのかもしれません。