| いつかは終わると考えていても、雪だるまのように膨らんでゆくのが腕時計バブル |
おそらくこのブームに終焉はないだろう
さて、とにかくとどまるところを知らない腕時計バブル。
とくに「ロレックス」「パテックフィリップ」「オーデマピゲ」の3ブランドのプレミア価格はもはや異常とも言えるレベルに上昇しており、たとえばロレックス・コスモグラフデイトナ(116500LN)だと1年前は300万円くらいの相場だったものが現在は420万円くらいにまで上昇しています。
参考までに、この定価は145万7500円なので、もう定価の「倍」どころでは済まない話となっているわけですね。
そして今や誰も「定価」でデイトナを購入することなど不可能に近い状況となっており、現在の環境についてウォッチエキスパートが解説を行う動画を公開しています。
ラグジュアリーブランドは希少性を保たねばならない
まず第一の要因として挙げているのは、高級腕時計ブランドは希少性を保たねばならないということ。
つまり販売数を絞り、「手に入りにくい」状況を作らねばならないのですが、これは「利益を得なくてはならない」という”通常の”営利企業の方針とは反します。
そこで腕時計ブランド含む高級ブランドがこぞって採用するのが「限定商法」「少量生産商法」。
たとえば、自動車だとブガッティ・シロンがわかりやすい例だと思われ、「シロン」ばかりを(予定生産台数の)500台作っているとその価値が下がる可能性があり、よってシロンのほかにも「シロンスポーツ」「シロン ピュールスポール」「シロン スーパースポーツ」など様々なバリエーションを展開し、さらにはそれらのバリエーションの中でも「ノワール」「110Ans」「レジェンデ・ドゥ・シエル」など様々な限定モデルを小刻みに販売することによって「同じスペックを持つクルマが非常に少ない」状態を作り出し、それぞれの仕様の価値を高めています。
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腕時計に関してだと、動画ではパテックフィリップ・ノーチラス(5711)を例に上げていて、この「定価」は5年ほどほぼ変わらず、しかし中古相場(イエローのグラフ)はうなぎのぼり。
これはパテックフィリップが極端に供給を絞ったためですが、それによって中古価格が大きく上昇したわけですね(もちろんパテックフィリップのブランド力があってこその話)。
そして次にパテック フィリップが何をしたかというと、この5711ブルーダイヤルを「廃盤(ディスコン)」にしてしまい、さらにその価値を高めると同時に、定価をガツンと上げたグリーン(カーキ)ダイヤルを投入しています。
これによって、定価を上げたぶんだけパテックフィリップは(出荷価格を上げることができるので)利益が増えることになるわけですが、この時点では既に「パテックフィリップの腕時計はどんどん価格が上がる」という共通認識ができているので、発売直後のオークションではなんと「11倍」もの価格で取引される例が登場しています。
この手法についてはオーデマ ピゲも同様で、現行モデルの供給を絞り、価格が上がったところで、かつ人気がピークを迎える前に「販売終了」とし、その後継モデルの希望小売価格を異常なくらい引き上げて発売するわけですね。
これによって、自社の利益確保とともに「供給を絞ったことで減ってしまう正規代理店の売上げ」を担保しようということになるのだと思われますが、これを繰り返すことで腕時計メーカーは「より少ない本数でも、より高い利益を得ることができる」ように。
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ただ、こういった手法が可能となるのは「ロレックス、パテックフィリップ、オーデマピゲ」くらいのものだといい、そしてそれらに共通するのは「独立系」「独自デザインを持っている」「類まれなるクラフツマンシップを持っている」。
そしてなぜ「独立系」がこういった手法に有用なのかということですが、「大手グループの傘下に属していると、そして株式を公開していると、株主の期待に沿う必要があり、よって「それがいかに将来の利益につながるといえど 意図的に販売を絞り、一時的であっても販売ダウンとなることは許されない」ため。
しかし独立系だと、どこからも指図を受けることなく、自社の判断だけでこういった戦略を取ることが可能となるわけですね。
「独自デザイン」については、たとえばオーデマピゲだと、「ロイヤルオーク」は人気があるけれど、そのほかの「Audemars Piguet」の文字を取ってしまえばどこのブランドの製品なのかわからないシリーズの人気が低く、そしてパテックフィリップであっても「ノーチラス」「アクアノート」の人気が高いものの、やはり普通っぽいラインアップは人気が出ないことでも理解ができると思います(リシャールミルだと、アイコンとなるトノー型の人気が高くとも、ラウンド型の人気が今ひとつなのとよく似ている。ベル&ロスも角型以外は人気がない)。
高級腕時計ブランドはこういった「系列」となっている
参考までにですが、現在高級腕時計ブランドはこういった「系列」となっていて、今回の動画の内容を勘案すると、「大手グループの傘下」にある腕時計ブランドは思い切った希少性の演出ができず価格が上がりにくい、ということになるのかもしれません。
リシュモングループ
- ボーム&メルシエ
- カルティエ
- IWC
- ジャガー・ルクルト
- A.ランゲ&ゾーネ
- パネライ
- ピアジェ
- ロジェデュブイ
- ヴァシュロン・コンスタンタン
- ヴァンクリーフ&アーペル
- ラルフローレン
LVMH
- ルイ・ヴィトン
- ショーメ
- ウブロ
- ゼニス
- ブルガリ
- ティファニー
スウォッチ・グループ
- スウォッチ
- オメガ
- ブレゲ
- ハリー・ウィンストン
- グラスヒュッテ・オリジナル
- ブランパン
- ジャケ・ドロー
- ロンジン
- ラドー
- ティソ
- ハミルトン
- ミドー
SNSの普及も高級腕時計ブランドの人気化に拍車をかける
そして2つ目の「高級腕時計の価格が天井知らずに上がる」理由としてはSNSの普及。
これによって多くの著名人やセレブがそのブランドの製品を身に着けていると消費者が知ることになり、セレブに憧れる人々がこぞって購入することに。
そして現代では、従来のビジネスに頼らずともビットコイン含む仮想通貨や、様々な投資によって容易にお金を稼ぐことが可能となり、一儲けした若者たちが高級品を買い漁っているということについて触れています。
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そして多くのセレブが愛用するのは「ドレスウォッチ」ではなく「ラグジュアリースポーツウォッチ」でもあり、これがまた特徴的で”わかりやすい”「ラグスポ」を持っているロレックス、パテックフィリップ、オーデマピゲの人気を高めることとなっているわけですね(この時点で、独自性のあるデザインを持つラグジュアリースポーツウォッチを持たない腕時計ブランド、たとえばIWCやブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンなどは人気化から遠ざかる)。
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近年では様々な腕時計ブランドが誕生していますが、いずれも共通するのは「機能や性能」よりも「見た目」にお金をかけているということで、これもまたSNS時代の特徴だということになりそうです。
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転売文化も高級腕時計の価格高騰に拍車をかける
そして動画では「転売」文化の普及も高級腕時計ブランドの価格高騰に関係しているといい、相場のチェックが容易であったり、売却方法も多様化したこともあって個人にとっても「参入障壁が低く」、これはスニーカーやバッグの売買も同様かもしれませんね。
なお、ぼくの個人的印象だと、ロレックスくらいの価格帯になればヤフオク!やメルカリ等のネットオークションを通じての売却よりも、腕時計専門店での買取のほうが高値で売れることが多く、これはおそらく「信用問題」なのだと思います。
つまり、あまりに高額になるとコンディションや、そもそもの真偽含めて個人売買では慎重になるケースが多いのだと思われ、結果としてオークションでは「相場ほど価格が上がらず」、しかし腕時計専門店だと「その看板をもって、相場にて売却(販売)することができるので、買取も相場通りで行うことができる」ということなのでしょうね。
なぜ高級腕時計が手に入りにくく、価格がどこまも上がってしまうのかを解説する動画はこちら
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