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スバルにXV試乗。これだけの完成度、楽しさがあれば高いお金を出して輸入車を購入する意味はない?

2017/06/15

さて、スバルXVに試乗。
グレードは2.0i-S EyeSight、2,648,700円のフラッグシップモデルとなります。
エンジンは2L直噴で出力は154馬力、トランスミッションはリニアトロニック(AT)、駆動方式はAWD。
標準装備としては18インチアルミホイール、LEDヘッドライト(ステアリング連動)、運転席&助手席パワーシート、アイサイトVer.3、X-MODE、アクティブ・トルクベクタリングを装備。

XVはインプレッサの車高を上げ、クラディング等を付加することでオフロード風味に仕立てたモデルになりますが、インプレッサのバリエーションとしてではなく、一つの独立したモデルとして存在しています。
実際に両車を並べると「別の車」とも思えるほど印象が異なり、XVの方がクラディング(オーバーフェンダー)が装備されるぶんちょっとだけ幅広で、かつリフトアップによって全高も増えることに。

新型XVはかなりワイルドな雰囲気を持っていて、各パーツの造形が非常に立体的でアクティブなイメージがあり、インプレッサ譲りのウェッジシェイプによってさらに躍動感が増しているようにも感じますね。

なお全体的には「キープコンセプト」で、先代の雰囲気をうまく引き継いだモデルチェンジ。
それでいて先代よりもスタイリッシュで若々しく見えるのは元となるインプレッサの「若返り」のおかげかもしれません。

なおXVは細部が「オフロード風味になっただけ」のインプレッサではなく、最低地上高を200ミリとし、タイヤ外径も大きめの700ミリとしたために「四輪で踏ん張っている」印象があり、視覚的な安定感も感じさせます。
下はインプレッサとの比較ですが、タイヤサイズやクラディング、車高が変わることで随分雰囲気が変わると思います。

さて試乗。
ドアを開けて車に乗り込み、ドアを閉めた時の音からして既に質感の高さを感じさせるもので、嫌が応にも期待が高まるところ。
この辺りはインプレッサと同様ではありますが、とにかく「グローバルプラットフォーム」の影響が大きそう。

インテリアはインプレッサと基本的に同じはあるものの、XVではアクティブさを演出するためか内装のあちこちにオレンジのステッチが入ります。
ステアリングホイールにもオレンジの太いステッチが入り、常に目に入るところだけに購入後の満足感も大きい、と思われるところですね。

ペダルについても「S」グレードではアルミ製のものが標準装備され、ダッシュボード上のグラフィカルなディスプレイ表示、メーターパネル内の表示も直感的に読み取りやすく、これまでのモデルに比べてずいぶん進化したところ。

こういったインターフェースについてスバルは相当に研究を重ねたとしていますが、実際のところ直感的に操作がしやすく、かつあるべきところにあるべきスイッチがある、という感じ。
XVは先代より海外での人気が高く、今回のモデルもインプレッサ共々「グローバルモデル」の位置付けではあるものの、スイッチのレイアウトは平均的な日本人の体格でも操作しやすいようにできており、このあたりBMWやメルセデス・ベンツ、アウディなど輸入車とは異なる部分ですね(反面、欧米人にはXVのスイッチ類が自分に近すぎるのかも)。



全般的に目に入る部分のデザイン性や質感が高く、特にステアリングホイールとパドルのデザインは秀逸。
スポーク部とパドルとのデザインにおける整合性が高く、高級感とスポーティーさとを併せ持っており、これは輸入車を含めて考えてもトップクラスの出来栄えかもしれない、と思います。

エンジンスタート時の振動も少なく、電気式パーキングブレーキの動作もほぼ無音。
スバルはこういった操作感やノイズ、振動についてもそれらを抑えることにかなり注力したと聞いていますが、同じようにこの部分を重視するフォルクスワーゲンやアウディに比べても劣るものではなさそうです。

デイーラーから乗り出す時の段差越えについても、タイヤの大径化によって衝撃が吸収されるようになり、段差だからと言って身構える必要がなく、安心して走れるように(走行中に不意の段差に遭遇しても大丈夫)。
さらには車高が上がったことによって見切りが良くなっており、これも安心感を覚える理由の一つと言えそう。

ざっと色々な環境で走ってみますが、印象としては「動き含めて全てが軽い」というもの。
加速、減速、旋回において車の軽さを感じさせる身のこなしを見せ、これが運転を非常に楽しいものとしているように思います。

「軽さ」を感じさせる一番の要因はエンジンだと思われますが、これは自然吸気ながらも十分なトルクを発揮し、アクセルに対する反応が良く、必要な時に必要なトルクを得ることができる素晴らしいエンジン。
走行中や加速に移った時のノイズ、振動共に低いレベルに抑えられており、これもまたドライバーに「軽い」印象を与えるのかもしれません(加速時に騒音や振動が大きくなると”車が無理してるっぽい”印象を受ける)。

ロードノイズ、路面から受ける微細な振動などが室内に入ってこないように抑えられているのも軽快感を感じさせる要因と思われ、これによって車が外界から切り離されて「滑るように」、そして流れるように動いているという感じもありますね。

加えてステアリングホイール操作感が軽く、かつそれに対する反応が良いために「思った通りに曲がる」という印象があり、それもやはり軽快感を感じさせる別の要因といえそうです。

なお車高が高くなることで失われるかもと懸念していた安定性ですが、これについては全くの杞憂に終わったようで、不安を感じる場面は一切なし。
よくよく考えるとスバルはラリーでの経験が豊富であり、こういった車高の高い車(SUVではなく乗用車タイプ)を作り慣れているので当然といえば当然で、そもそも心配する必要がな買った部分ではありますね。

そのほか運転していて感じるのは静粛性が高さ。
これは外部の騒音や、車の発する振動や音をほとんど感じさせないレベルであり、これは裏返すと「どんな操作をしてもちゃんと車が反応するから大丈夫」というスバルの自信の表れかもしれません。

かつて欧州車はエンジンのノイズやロードインフォーメーションが希薄だとドライバーがそれら情報を受け取れないため、次の動作に移るのが遅れるという意味において「危険」と判断し、意図的に振動や音をドライバーに伝えるという考え方を持っていたと聞きますが、スバルは「そういった情報がなくとも車は操作に対してちゃんと反応するし、そういった情報がなくても良いのであれば、ない方が快適かつ安心して車を運転できる」と考えているようにも感じます。

どんな路面状況においても、どんな環境においても、どのようなレベルのスキルのドライバーが運転しても速く快適かつ安全に、確実に走行できるのがスバルの車だと改めて感じさせられるのがXVですが、それはスバルが長年追求してきた、そして培ってきた技術(VDCやAWD)の集大成なのかもしれません。

その意味ではスバルが考える「自動車」とは、扱えないような高性能を持つ車ではなく、はたまた電気自動車のような「現在とは別の可能性」でもなく、「誰もが、環境や路面状態を気にせずに楽しめる安全な車」なのではないか、という気もします。

スバルはもともと「初めて乗用車に4WDを採用した」メーカーであり、それをレース活動や、そこで得た技術を市販車にフィードバックすることで技術を蓄積し続けてきた会社で、その成果が「最新モデル」ということになり、そして現在のところは「XV」ということに。

さらにスバルは車の反応をどうすれば「ドライバーがどう感じるのか」を良く理解した会社だと思われ、地味ながらもスバルはすごい会社だ、と感じた次第。

とにかく運転していて楽しく、どこまでも(どんな環境でも)走ってゆけそうな車であり、試乗が短く感じられた(もっと乗っていたいと感じさせる)車でもありますね。

インプレッサ本来の持つアクセルやステアリング操作に対する反応の良さ、それに加えて車高を上げたことによる見切りの良さ、タイヤ大径化による乗り心地の良さを持っているのがXV。
その価格を考えるとかなり濃い内容を持っていると考えられ、この価格でこの車が購入できるのであれば「高いお金を出して輸入車を買う意味はない」とまで思わせる車であり、いっちょ「初スバル」として購入してみるか、と考えています。

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