| メルセデス・ベンツ、ルノーに続きステランティスまでもが「EVのみではなく様々な選択肢を持つことにする」 |
現在の自動車業界は「全く先が読めない」状態にある
さて、トヨタは少し前に「どれだけ電気自動車に関する技術が進化しても、自動車販売におけるシェアが30%を超えることはないだろう」とコメントし、さらには「2030年までに新車販売のほぼ100%を電気自動車にする」としていたメルセデス・ベンツもその計画を撤回し「2030年でもせいぜい新車販売の50%が電気自動車になるだろう(よってガソリン車を継続する)」という発表を行ったばかりです。
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メルセデス・ベンツが「EV集中」戦略を転換し2030年以降もガソリン車を作り続けるとコメント。「2030年であっても、EV / PHEVの販売比率は50%にとどまるだろう」
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そして今回はダッジやマセラティ、プジョー、シトロエンなどを擁するステランティスが「内燃機関の開発を継続し、投資を拡大する」という計画を公的に発表することに。
内容としては「40車種の新型車を発売すべく、8つの新しいパワートレインと電動化アプリケーション、4つのグローバルプラットフォームを開発するために60億ドル以上を投資する」というものです。
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ルノーも「ガソリン(ハイブリッド)車の投入を活性化させる」と正式に発表。「まさか、EVが普及せずにガソリンエンジンが生き残る未来など想像もしていなかった」
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今後、ステランティスはどう動くのか
今回の発表の中で大きく取り上げられたのは「バイオハイブリッド技術」ですが、これはエタノールなどのバイオ燃料で動作するフレックス燃料エンジンにハイブリッド技術を組み合わせたもの。
このバイオ燃料は一時期欧州で流行し、いつの間にか消えてしまった燃料ではあるものの(日本でも一瞬だけ普及しかけたことがあるが、エンジンを腐食させる可能性があるために消え去った)、ステランティスはガソリンではなくこの燃料に着目したということになりますね。
さらにはプラグインハイブリッド機能を備えた新しいパワートレイン、デュアルクラッチトランスミッションを備えた(やはり新しい)パワートレイン、完全電気自動車用パワートレインの開発も今回の発表の中に含まれています。
そしてこれらの開発の中心となるのはブラジルのベティンにあるステランティス・オートモーティブ・ハブで、ここは同社の先端技術を(世界市場向けに)開発している施設だそうですが、将来的には新しい完全電気自動車を生産することとなるもよう。
ステランティス南米COOのエマニュエル・カペラノ氏は「バイオハイブリッド技術に関連した4つのグローバルプラットフォーム、つまり8つの新しいパワートレインと電動化アプリケーションに加え、40以上のモデルが導入されることになります」とコメントし、早ければ年内にも第一号が登場するというので、ステランティスはかなり開発を急いでいるということになりそうですね。
現在の自動車業界は「スピード」が命
なお、現在の自動車業界は恐ろしい速度で変化しており、コロナ前までは「一笑に付される」レベルであった中国の自動車がいまや(欧州の自動車メーカーにとって)自社の存続をおびやかすほどの驚異として目前に迫っている状態。
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もっとも大きな打撃を受けるのはフォルクスワーゲン、ルノー、シトロエン、プジョーなどの普及価格帯のクルマを製造しているブランドだと言われていますが、ルノーは「今こそ欧州の自動車メーカーが手を取り合って共同にてパーツの供給網を構築し、共同でクルマを開発せねば中国車に対抗できない」とコメントしたばかり。
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ルノーCEO「中国に対抗するには、欧州の自動車メーカーが手を取り合うしかない」。欧州ではそこまで中国に追い詰められているのか
Renault | 現在の欧州では、想像よりも遥かに厳しい競争状態にあるのかもしれない | 欧州では様々な業界で同様の打開策を採用した例がいくつか存在する さて、先日「5 E-Tech エレクトリック ...
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さらには「開発機関の短縮が至上命題の一つ」とし、実際に新型ルノー5 E-Techは既存車種に比較して大幅に開発期間が短縮されたことにも言及されていますが、やはり(危機が目の前に迫った)フォルクスワーゲンも「車両の開発期間を短くしないとこの流れに置いてゆかれる」と述べています。
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VWが新車の開発期間を54ヶ月から36ヶ月に短縮。「中国の競合に勝つにはそれしかない。いくつかの路上テストを廃止し、冬季テストも2〜3回から1回に減らす」
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これは主に中国の自動車メーカーの開発速度がとんでもなく速いということを意味しており、加えて最近の欧州の情勢も流動的で、ちょっと前まで「ガソリンエンジンには未来がない(絶滅)」という風潮だったのに、今年に入ったのち、相次ぎ「ガソリンに再注力」と発表するメーカーが登場していいて、この背景にあるのはもちろんユーロ7導入内容の緩和だと思われます。
ただ、今後中国のEVに対して何らかの関税がかけられれば再び「(欧州の自動車産業が保護されるので)EVに集中」となるのかもしれず、つまり今はどっちに転ぶのかまったくわからない状況にあるわけですね。
いずれにせよ、ステランティスの今回の戦略はあらゆる種類のテクノロジーでリスクを回避し、あらゆる選択肢を模索しているということになり、実際ステランティスは米国で中国製部品を使用したEVを製造することも検討していると報じられ、この柔軟性はある意味では優柔不断のように見えるかもしれませんが、それは、自動車業界の将来がどのようなものであっても、ステランティスが複数のカードを持っていることを意味するのだと思います。
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参照:Stellantis