Image:BMW
| ただしBMWはいかにクルマが重くとも「軽快に、楽しく」感じさせるすべを心得ている |
重量と環境性能、そしてパフォーマンスは「堂々巡り」の問題である
さて、近年の厳しい環境規制に対応するため、クルマがますます重く大きくなっているのは周知のとおりですが、とくにハイパフォーマンスセダンにおいてこの傾向が顕著であり、たとえばメルセデスAMG C63の重量は現行モデルだと2,036kgにも達しています。
こういったハイパフォーマンスセダンは(その存在意義を守るために)相応の出力が必要で、そして出力を確保するとなると環境規制に対応するためにハイブリッドシステムを導入せねばならず、そうなるとクルマが重くなってしまい、今度はさらにその重量をカバーするだけのパワーが必要になってきて、以下堂々巡りといったところなのかもしれません。
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新型BMW M5の重量は「必然」であった
そこで今回報じられているのがBMW M5の重量の必然性について。
新型BMW M5は727馬力という途方もない出力を誇る一方、その重量が2,445kgという大型SUVなみの数字に達しているわけですね。
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これについてBMW M部門のボス、フランク・ファン・ミール氏が自身の(あるいは公式の)見解を述べており、同氏によると「M5の(とんでもない)重量は絶対に必要だった」。
新型M5にはXMのプラグインハイブリッド システムを搭載する必要がありました。これがなければ、M5は存在すらしなかったかもしれない。このほかの唯一の選択肢は完全電気自動車だったのでしょうが、高性能な量販向けEVテクノロジーは、我々Mが求めるものに対してまだ準備ができていません。
ピュアエレクトリックパワートレーンを搭載するM5を作ろうとなると、 バッテリー以上のものが必要です。アーキテクチャ全体、電子機器、高電圧システムなど。これらは現段階ではまだ高性能車向けとしては対応ができず、よってこれ(新型M5のPHEVパワートレーン)が現時点で私たちが取りうる最善の策だったのです。
フランク ファン ミール BMW M部門 責任者
フランク・ファン・ミール氏のコメントは、新型M5にとって「未熟なピュアエレクトリックパワートレインか、プラグイン ハイブリッドか」 のどちらかしか選択肢がなかったことを示唆しており、同氏は後者につき「クラシックなV8の特性と効率的なプラグインハイブリッド システムを組み合わせたものなので、依然として最善である」とも(実際、70kmの距離をエレクトリックモーターのみで走行できるという利便性も併せ持っている)。
そして興味深いのは、フランク・ファン・ミール氏が「ピュアエレクトリックモードで運転していたとしても、”電気自動車”ではく、ちゃんと”M5”のように感じられる」と述べていることで、さらに「ピュアエレクトリックモードとガソリンエンジン駆動時との違いはわからない」とまで言及しています。※つまりピュアエレクトリックモード時でもガソリンライクなサウンドが出ているのだと考えられる
そう考えると、BMWの「ハイパフォーマンスカー向け電動技術」はかなりのレベルにまで達していると捉えて良さそうですが、それでもフランク・ファン・ミール氏にとっては「まだ一歩及ばない」という判断であったのかもしれません。
加えて「アドレナリンが湧き出るドライビング ダイナミクスと洗練された日常使いの完璧な組み合わせです」とフランク・ファン・ミール氏は語っており、このG90世代のM5は「二重性」をモットーに開発されたとも付け加えていて、この「二重性」実現のために新型M5は「市街地の排出ガス規制と、それに伴う税金を気にしない人向けの特別な製品」にはならなかったのだそう。
よって新型M5は当初より高い環境性能、つまり「WLTP定格による、CO2値を50g/km内に収める」という数値をクリアすることを開発目標に掲げており、そしてこれを実現する唯一の方法が「PHEV」であったわけですね。※欧州の一部では、CO2排出量に応じて大きく税金が変わるので、ノンハイブリッドのM3のほうがPHEVのM5よりも乗り出し価格が高くなってしまうことがある
一方でスーパーカーのように「毎日乗るわけではない」クルマについては、(環境規制をクリアできないことによる)高額な税金が購入時や維持にかかわる障壁とはなりえず、そしてこれらは税金や日常性よりも「軽量性(すなわち運動性能)」が重視されるため、また異なる基準によって開発されることとなり、しかし「セダンはそうではなく」、こういった事情が「ハイパフォーマンスセダンがどうしても重くなってしまう」という理由ということになりそうです。
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