| たしかに同氏のいう通り、新しい時代に対応しなければ新しい時代で生き残ることはできない |
それにはまず旧来のガソリン時代の考え方を捨てねばならない
さて、現在欧州の自動車メーカーが悩まされている深刻な問題が「中国車の台頭」。
欧州の自動車メーカーの多くは中国市場への依存度が高く、しかし中国国内では中国車にシェアを奪われており、さらには中国と「陸続き」ということもあって中国からの(中国車の)流入によって地元においてもその市場を奪われつつあるわけですね。
そしてこのトレンドを「変える」ことは非常に難しく、しかし各自動車メーカーともに様々な対策を講じているというのが現在の状況ではありますが、有効な対策が見つからないというのもまた事実かと思います。
中国の自動車メーカーに勝つには「中国人になるしかない」
そこで今回報じられているのが(最近お騒がせすることが多い)ステランティスCEO、カルロス・タバレス氏の発言で、同氏いわく「EV市場で中国車に勝つには”自分たち自身も中国人になる”必要がある」。
なお、カルロス・タバレス氏は以前、中国製EVに対するEUの関税に反対を唱えたことがあり、この関税をして「その道を進む国々にとっての大きな罠」と表現したことも。
この真意としては「関税は安易な対抗策でしかなく、欧米の自動車メーカーが中国の競合相手に対抗するために必要な変更を行うよう促すことにならない」というところにあり、関税によって欧米の自動車メーカーが本質的な競争力を高めるための努力をおこたるようになるという懸念を表しています。※ただしカルロス・タバレス氏は関税の必要性を強く説いていたこともある
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メルセデス・ベンツとBMW「中国車の進出による脅威はなく、 EUに関税を設ける必要はない」。ステランティス「関税なしでは壊滅してしまう」。この差はどこから?
| それぞれの自動車メーカーにはそれぞれ固有の事情がある | そしてその事情には必ず中国が絡んでいる さて、現在中国製EVに対して「関税を課すかどうか」を調査している欧州連合(EU)。これは中国から入 ...
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そしてステランティスはこの関税に甘えることなく競争力を獲得する道を選び、”中国人になるため”に中国の自動車メーカー「リープモーター」の株式21%を取得していますが、この取引は昨年10月に行われていて、これによってステランティスはリープモーターの技術にアクセスでき、中国以外でリープモーターのEVを生産する独占権を獲得することに。※少し前に、カルロス・タバレス氏はステランティスが北米でリープモーターのEVを製造する可能性についても言及
ただしこの提携で重要なのは「中国から登場する電気自動車と競争する最善の方法は、中国の自動車メーカーと同じように”低コストを実現するための”考え方を採用し、より安価にEVを製造する方法を見つけること」だと考えられ、ステランティスはこれを達成することによりステランティス傘下の各ブランドにて安価なEVを製造することを目論んでいるわけですね。
参考までに、同様の考え方を採用したのはステランティスがはじめてではなく、フォルクスワーゲンとアウディも同様で、フォルクスワーゲンはEVスタートアップのシャオペン(Xpeng)と提携して2台の新型EVを共同開発しており、アウディは上海汽車(SAIC)と協力し新しいEVを開発することが明かされています。
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アウディが今年5月に開始した上海汽車とのEV合弁による成果として早くも11月にコンセプト発表、来年には実際に発売。このスピードこそがアウディが求めたものなのかも
| やはり中国の自動車メーカーの開発速度はとんでもない速さである | この戦略が成功すればほかブランド、自動車メーカーもこの例に倣いそうだ さて、今年5月20日にアウディとSAIC(上海汽車)は、中国 ...
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さらにフォルクスワーゲンは中国の手法を取り入れて「新車の開発期間を54カ月から36カ月に短縮する」「2~3回行っている冬季寒冷地テストを1回だけに減らす」という意向を示しており、これらによって開発コストを引き下げる(ただし開発手順を短縮しても問題を発見できるようにオンラインでのシミュレーションを充実させる)ことを計画しています。
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VWが新車の開発期間を54ヶ月から36ヶ月に短縮。「中国の競合に勝つにはそれしかない。いくつかの路上テストを廃止し、冬季テストも2〜3回から1回に減らす」
| フォルクスワーゲンはそこまでしないと「もう中国のライバルに勝てない」ところにまで来ている | もちろんこれはフォルクスワーゲンだけにあてはまることではなく、他の自動車メーカーにとっても「今、そこに ...
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ガソリン車とEVとは根本的に異なる乗り物であり、フォルクスワーゲンやアウディ、ステランティスはこれまでの経験に従い「EVにおいてもガソリン車と同じ、従来の開発やテスト手法」を守ってきたのだと考えられますが、中国の新興メーカーには「ガソリン車の常識」は存在せず、新しい時代のツールと基準においてEVを開発しているのだということになり、これがカルロス・タバレス氏の「中国人と同じ考え方をせねば」ということなのでしょうね。
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