| ステランティスは直近での利益が「半分以下」となり、いまだその回復の糸口をつかめていない |
ただし即座にCEOを替えて解決する問題でもなく、難しい判断を迫られる
さて、コロナ禍を脱した直後は多くの自動車メーカーがその業績を回復させていますが、その後は「中国車の進出」「中国市場の需要減退」「急激なインフレ」という予想外の状況が自動車業界を襲い、一部自動車メーカーでは非常に大きく売上を落としてていることが報じられています。
そしてコロナ禍とこの状況が異なるのは「コロナ禍はいつか落ち着くとわかっていたものの」、現在の状況については好転する要素が見当たらない(むしろ悪くなる可能性のほうが大きい)ということで、ここから負の連鎖がはじまることが予想されているわけですね。
いまステランティスは危機的状況にある
そしていまもっとも「危機的状況にある」のがフォルクスワーゲングループ(世界第二位)、そしてステランティス(世界第四位)。
ステランティスはジープやダッジ、そしてプジョー、シトロエン、アルファロメオ、マセラティ等を擁する巨大自動車グループですが、この自動車複合企業の2024年上半期の純利益は、需要の低迷により48%急落したことが明らかになっており、米国のディーラー網(売上高は16%減少)では、カルロス・タバレスCEOの決断を「大惨事」と呼び、米国での販売急落の原因として名指しで責任を追求しています。
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実際のところ、同氏を擁護できる要因はなく、ステランティスのジョン・エルカン会長は「すでに新CEOの選定が始まった」と認めていて、カルロス・タバレスCEOの”5年契約”の期限が切れる2026年1月以降、同氏との契約を更新しない意向を示しています。
なお、カルロス・タバレス氏がステランティスのCEOに任命されたのは、2021年1月にFCA(フィアット・クライスラー)とPSA(プジョー・シトロエン)が合併した際のことですが、ステランティスの広報は今回の報道を受けて「任期終了が迫れば後任者を探すことはごく当たり前である」と述べ、「適当な人材がいなければカルロス・タバレス氏が2026年1月以降も続投する可能性があるため、今回の後任探しは将来の決定に影響しない可能性がある」とも。
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ステランティスはいくつかのブランドを切り捨てる可能性も
なお、ステランティスはその発足後、「クライスラー、ダッジ、ジープ、ラム、フィアット、アルファロメオ、フィアットプロフェッショナル、ランチア、マセラティ、プジョー、シトロエン、DS、オペル、ボグゾール(ボクスホール)」という14のブランドに対して「10年の期限と資金」を与えると発表し、この庇護のもとアルファロメオ、プジョーやシトロエン、ランチアなどはエンブレムの変更やセグメントの再定義、ブランドのコアバリュー再考など「再出発」を図っていて、実際に新しい動きや製品も見られます。
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ステランティスが「傘下のブランドにつき、ブランド確立のために10年の猶予と、必要な予算を与える」。これはもうランチア・ストラトス、デルタの復活を期待するしかない
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一方で明確な方針を打ち出すこと、ライバルとの差別化がなかなかできていないのがDS、クライスラー、マセラティだとされ、これらについては「10年を待たず」売却される可能性も報じられていますが、このあたりがどうなるのかは今後の動向を見守る必要があり、ステランティスはいま、カルロス・タバレス氏の去就同様、大きな転機を迎えているのかもしれません。
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参照:Bloomberg