
| フェラーリ、「テスタロッサ」商標権を奪還 |
10年近くに及ぶ訴訟の末、伝説の名が再びマラネロへ
「テスタロッサ」という伝説の名前が”ついにフェラーリの元へ戻った”との報道。
これは2025年6月、EU一般裁判所(General Court)がフェラーリに対し、「Testarossa(テスタロッサ)」の商標使用権を認める判決を下したというもので、この裁定は、単にフェラーリの勝利というだけでなく、あらゆる“ブランドの遺産”にとっての法的前例となる可能性を持っているとして大きく報じられています。
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「製造終了=商標無効」ではないという大きな転換
この訴訟の発端は2017年、ドイツの玩具メーカーが「テスタロッサ」の商標に対し異議を唱えたことに端を発しており、同社は「フェラーリは過去5年間にわたってこの商標を使用していない」と主張。※商標不使用の場合、その商標権の失効を第三者が主張できる
EU商標法では、登録商標が5年以上“真正に使用”されていない場合、その効力が失われる可能性があり、当初、欧州知的財産庁(EUIPO)はこの主張を認め、「テスタロッサ」は自由に使える名称であるとの判断を下していたわけですね。
たしかに当時、フェラーリはこの商標を失い、「ひげ剃り」など様々な製品群において「テスタロッサ」が登録されたというニュースも流れましたが、その後フェラーリはずっと「商標奪還に向け」動いていたということになりそうです。※昨年には別途「テスタロッサ」の商標を(どの分類かまではわからないが)出願していたことも明らかになっている
フェラーリは商標としてのテスタロッサを“使っていた”と主張、その根拠は?
実際のところ、当時フェラーリは即座に控訴していたそうで、そして今回、EU一般裁判所が下した結論は「テスタロッサは今なおフェラーリの知的財産である」という明快なもの。
なぜなら、フェラーリは現在も以下のような形でこの名前を“実際に”使用していたからだと(フェラーリの主張に基づき)説明されています。
- 純正パーツの販売
- クラシックカーの認定証(Certificate of Authenticity)発行
- 関連グッズの販売
- フェラーリ正規ディーラーでの再販売
- レプリカモデルの流通
これらすべてが「商標の正当な使用」に該当するという判断が下されたわけですが、フェラーリは自社が敵対視する「レプリカモデル」をここで引き合いに出したあたり、フェラーリのしたたかさも伺えます(ただ、レプリカが存在するということは、それだけ高い認知度を誇り、かつ人々の記憶から忘れ去られていないということを意味するので、フェラーリの主張はもっともである)。
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レガシーブランドが得た“現代的な勝利”
この判例は、フェラーリだけの話ではなく、製品の製造が終わっていても、商標を保持し続ける方法が法的に認められたということは、ロールス・ロイス、ブガッティ、ランチア、あるいは非自動車系のハイブランドにも大きな示唆を与えることになり、これは自動車メーカーにとってのみではなく、「オマージュ」モデルを製造するコーチビルダーにとっても大きな転換期と言えるかもしれません(自動車メーカーにとっては過去のモデル名を使用するハードルが下がり、コーチビルダーは有名自動車メーカーが持つ過去のアイコニックなモデルの名称をおいそれと使用できなくなった)。
「遺産の収益化」がブランド価値を左右する時代
この件につき、投資会社Ainvestのフィリップ・カーター氏は以下のようにコメント。
「この判決は、ラグジュアリーブランドの価値が“現行商品”だけでなく、“遺産をいかに収益化できるか”にかかっていることを示しています。」
つまり、ブランドは「過去の栄光」すらも収益源として保護し、活用していくべきだということで、クラシックカーの人気が高まる今、こうした商標戦略は今後ますます重要になってゆくのかもしれませんね。
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参照:CARSCOOPS