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| なぜパガーニは「電動スーパーカー」を作らずV12エンジンにこだわるのか |
パガーニは常に「顧客の意見を大事にする」ハイパーカーメーカーである
さて、先日はケーニグセグ創業者、クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏が「電動ハイパーカーの需要は著しく低い」とコメントしていますが、今回はパガーニ広報担当者が「実際のところ、誰もエレクトリックスーパーカーを欲しがらなかった」という事実につき過去の経緯を交えて語ることに。
ここでは、「パガーニはかつて電動スーパーカーの開発を進めていたが、顧客からの需要が皆無だったため計画を断念し、AMG製V12エンジンを搭載した内燃機関車に注力する理由」について述べています。
「誰も欲しがらなかった」パガーニ、電動スーパーカー計画を断念
手作業で仕上げられるイタリアン・スーパーカーとして知られるパガーニ。
同社は年産50台程度という超少量生産でありながら、常に世界中の富裕層から高い需要があり、納車までに長い期間を要することでも有名ですが、その「人気」にも例外があり——それが電気自動車(EV)。
More amazing details of the Pagani Imola.#pagani #paganiimola pic.twitter.com/G4FkdajwKW
— Pagani Automobili (@PaganiAuto) March 17, 2020
CarBuzzの取材に応じた広報担当セバスチャン・ベリディ氏によれば、かつてパガーニは完全電動モデルの開発に本格的に着手していたものの、顧客やディーラーからまったく関心を持たれなかったことから、その計画を完全に中止したとのこと。
たしかに、パガーニは一時期「電動ハイパーカーを開発中」としていたものの、ある日突然「エレクトリック計画を中止し、内燃機関に集中する」とコメントしています。
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EV版「ウトピア」は企画段階で終了
パガーニは8年前、現行モデル「ウトピア」の開発と並行して、完全EV版のウトピアを検討しており、ベリディ氏はこう語ります。
「当時はハイブリッドを複雑すぎると判断し、EVと内燃機関の2本立てでの展開を考えていた。しかし、ディーラーや顧客に見せたところ誰一人として興味を示さなかった。」
結果的に、多額の研究開発費やAMGとの連携、部品供給体制などの投資が無駄となり、プロジェクトは白紙になったそうですが、家族経営の同社にとって、これは経済的にも大きな損失だったといいます。
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なお、パガーニは少量生産で知られていて、それだけに顧客や販売現場の意向を無視できず、これまでにも様々な場面で顧客の意見を製品や活動に反映させていますが、「ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)」とのコラボレーションもそのひとつであり、これは「パガーニの顧客の多くがア ベイシング エイプの服を着ていたから。
当初オラチオ・パガーニ氏はこのブランドの存在を知らず、しかひ顧客が揃って「ユニークな猿モチーフのTシャツ」を着ているため、不思議に思ってその理由を顧客に尋ねたことがコラボのきっかけであったと語っています。※もともと、オラチオ・パガーニ氏はランボルギーニのエンジニアで、自身の提言が聞き入れられなかったためにランボルギーニを辞してパガーニを設立したという経緯があるので、他の人の意見も聞き入れるという傾向を持っているのかも
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パガーニは「V12+マニュアル」にこだわる
今後もパガーニはV12エンジンを搭載したスーパーカー路線を継続する方針で、その供給元であるメルセデスAMGが2030年(欧州)、2032年(カリフォルニア)までの認可を取得済み。
そしてこの「V12」ももちろん顧客の意向を反映させた結果であり、ウトピアにて「マニュアル・トランスミッション」を導入したのもまた同様の理由から。
「V12+マニュアルという構成こそが“機械工学の祝祭”であり、顧客が求めている本質です。」
The Motor Valley Fest is back! From May 2nd to May 5th, come visit us at the event celebrating the Made in Italy automotive excellence.
— Pagani Automobili (@PaganiAuto) April 23, 2024
Link to the press release: https://t.co/xFGJVUPTo5 pic.twitter.com/MhVn3omvki
他のスーパーカーメーカーもEVに苦戦中
上述のとおり、「顧客のEV敬遠傾向」はパガーニだけの問題ではなく、他の高級スポーツカーブランドもEV市場では苦戦していて、アルファロメオ「33ストラダーレ」ではガソリン版に加えてEV版の受注も可能であったものの、実際には「EVを注文した顧客はほとんどいない」とも報じられ、もしかするとEV版33ストラダーレは実現しないかもしれません。
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そのほか、以下のブランドもEVに対しては否定的な見解を示し、あるいは電動化に対する速度を緩めています。
- ケーニグセグ:EVハイパーカーに対する需要は「非常に低い」とコメント
- リマック:150台限定のネヴェーラが完売できず
- マセラティ:MC20のEV計画を中止
- ランボルギーニ:初のEVとウルスEVの発表を延期
- フェラーリ:2台目のEVも開発遅延
この理由は「様々」ではありますが、テスラ・モデルSプレイドやルーシッド・エア・サファイアなど、遥かに安価なEVが同等の加速性能を持っていることもあり、「高性能EV」というカテゴリ自体の差別化が難しくなっているのが現状であり、多くの顧客は「馬力にや加速などの数字にこだわる無意味さ」を感じ取り、「感性」を重要視するようになったのかもしれませんね。
Pagani S.p.A. is delighted to announce the revival of Modena Design, the company Horacio Pagani founded in 1991 to develop technologies in the field of composite materials.
— Pagani Automobili (@PaganiAuto) September 11, 2024
Read the press release: https://t.co/bp3M8cLquq pic.twitter.com/LA6f5vIsFl
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まとめ:EVではなく「感情に響く機械」を求める顧客たち
パガーニがEV計画を中止したのは、単に技術やコストの問題ではなく、それ以上に、「顧客が求めるのは性能だけではなく、音、振動、機械としての存在感」であるという現実が見えたから。
スーパーカーとは、数字や理論を超えた「感性の乗り物」。その哲学を貫く限り、パガーニのV12はまだしばらく生き残りそうです。
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参照:CARBUZZ