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テスラがホワイトハウスとの契約によって自前の充電器「スーパーチャージャー」を他社製EVにも開放!見返りとして多額の資金を獲得、充電器を2倍にするという計画にはずみをつける

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| テスラはもともと「自社独自の充電網」という強みを持っていたが、今回はそれをフルに生かした形となる |

これでまた他社に対する優位性を拡大したと考えていいだろう

さて、テスラが米国にて自社独自の充電器「スーパーチャージャー」を全面的に他社製EVにも開放することでホワイトハウスと合意した、との報道。

現在多くの既存・新興自動車メーカーが電気自動車を発売していますが、それらとテスラとの大きな相違は「テスラは自前の充電網を持っているが、他社ではそうではない」ということ。

そしてこの充電器は「スーパーチャージャー」と呼ばれていますが、これは(基本的に)テスラ車のみに適合する規格を持っているため、他社製EVはこれを利用しての充電ができないわけですね。

スーパーチャージャーは大きな「武器」に

そしてこのスーパーチャージャーについて、テスラは充電に対する課金を自由にコントロールでき、キャンペーン時には、たとえば「一定の期間や走行距離分を充電無料にする」ということを行ったり、最近だと「ウクライナのスーパーチャージャーの使用料金をすべて無料にし、住民や難民を支援した」という例も。

これらはあまり報じられないものの、テスラ特有の事例でもあり、大きな戦略上の武器となり得るものですね。

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もちろんこういった充電網を自社で拡充したほうが「自社のEVを売りやすく」なるものの、これは設置にコストがかかるため、テスラ以外は自前での充電網を(基本的に)持たず、しかしポルシェ、メルセデス・ベンツはその重要性を理解しているためか、パートナー企業とのタイアップにて充電網を拡充する動きを見せています。

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テスラは今後、スーパーチャージャーの台数を2倍に増加させる計画を持っている

そして今回の「ホワイトハウスとの契約」についてですが、バイデン政権はかねてよりEVの普及を掲げており、今年からも米国製EVで、かつ一定条件を満たしている車両に対する補助金の額を引き上げたばかり。

一方、充電器の数が全然足りておらず、このままEVを販売し続ければ、電力不足以前に「充電器が足りない」状態になるとも推測されています。

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こういった状況があるためか、バイデン政権はなんとか充電器を増やそうと考えていたものの、しかし充電器の設置は上述の通りコストがかかり、商業的に採算を取ることが難しく、よって「どの企業であってもやりたがらない」ビジネスです。

おそらく今回の契約については1年以上も前から話が進められていたと考えてよく、というのは2022年2月、はじめてバイデン政権が「テスラ」を認める発言を行ったため。

この時点でテスラとなんらかのコンタクトを取っていた可能性があり、スーパーチャージャーの開放について話し合っていたのかもしれません。

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なお、テスラにとって、自前で設置したスーパーチャージャーを「他社製品にも開放する」というのはあまりメリットのない話に思われ、というのもスーパーチャージャーがあるからという理由でテスラを購入する人も少なくはないためで(しかし他社製EVでもこれを利用できるとなるとテスラを選ぶ理由が薄れる)、なぜテスラがこれを開放するのか疑問に思う人も多いかもしれません。

そこでテスラ側のメリットについて考えてみると、今回の契約によってバイデン政権からのバックアップを得ることができるため、スーパーチャージャーを設置するための資金的援助を獲得でき(その額については明かされていない)、設置場所の選定や交渉においても便宜を図ってもらえることが期待できます。

これによってテスラは「スーパーチャージャーの数を2倍にする」という計画を、より少ない資金、より少ない労力にて進めることができるわけですね。

ただ、せっかく設置したスーパーチャージャーを「他メーカーのEVに使用されてしまうという問題」もあるものの、これについては上述の通り、自由に調整できる料金体系により、「テスラ車以外の充電を高額に設定する」ことも可能となるため、もしかするとこれによって大きな利益を得られる可能性も。

もちろんホワイトハウス側ではEVの販売促進につなげることもでき、まさに今回の契約はWin-Winとしか言いようの取り決めだと考えてよく、テスラにとっては非常に大きなメリットが存在するわけですね(ホワイトハウスのお墨付きメーカーになったという”ハク”はかなりのインパクトがある)。

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加えて「テスラ以外のEVに乗っている人がテスラの充電器を使用する」ことにより、その予約に使用するアプリ、実際のスーパーチャージャーを有する施設経由にて、テスラは「他メーカーのEVに乗る人」とのコンタクトポイントを作ることができ、これを活用すれば(キャンペーン情報の提示や、テスラ車を購入すれば充電が安くなるとアピールするなど)テスラは”他社製品からの乗り換え”を促すことも可能となるので、この契約によってテスラは「とんでもなく強力な武器を手に入れた」とも考えられます。※こういった”コンタクトポイント”を作ることは非常に重要であり、多くの自動車メーカーが苦戦しているところであるが、テスラはそれをやすやすと手に入れたということになる

なお、今回の契約については2024年末までの猶予があるといい、ホワイトハウスからの発表は以下の通りとなっています。

「テスラは、初めて米国のスーパーチャージャーとデスティネーションチャージャーネットワークの一部をテスラ以外のEVに開放し、2024年末までに少なくとも7500基の充電器をすべてのEVに利用できるようにする予定です。開放される充電器は、全米に分散されます。その中には、すべてのEVの走行の自由度を高めるために、高速道路沿いに少なくとも3500基の新規および既存の250kWスーパーチャージャーと、都市部と地方にあるホテルやレストランなどの場所でのレベル2充電器が含まれています。 すべてのEVドライバーは、テスラのアプリやウェブサイトを使用し、これらのステーションにアクセスできるようになります。さらに、テスラは、ニューヨーク州バッファローで製造されるスーパーチャージャーの全米ネットワークを2倍以上に拡大します。

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