
| 業績悪化が続くテスラ、マスク氏の政治的影響も |
ほんの半年前までは誰もがこの状況を想像できなかったほどの「転落」である
テスラが発表した2025年第2四半期決算によると、売上・利益ともに前年同期比で減少しており、前四半期に続くネガティブな結果が明らかに。
すでに世界各地での販売苦戦については報じられている通りではありますが、これはCEOであるイーロン・マスク氏の政治的スタンスによるブランドイメージへの影響や、街頭デモの標的となるなどの社会的な反発が大きく業績に影響を及ぼした結果であると見られています。
テスラは米国におけるEV販売台数で依然として首位を維持しているものの、そのシェアは他社に「奪われる一方」で、さらに今回の決算からは明らかに勢いに陰りがあることを見て取れます。
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イーロン・マスク氏はロボタクシー事業に活路を見出すが
決算発表後のアナリスト向けカンファレンスコールでは、イーロン・マスク氏がテスラのロボタクシー事業に関する攻めの姿勢を見せたといい、現在はテキサス州オースティンで限定的に展開されているこのサービスを、年内に全米人口の半数へ拡大するという非常に野心的な目標を掲げることに。
Here’s a huge benefit of Tesla Robotaxi-
— Zack (@BLKMDL3) June 22, 2025
Dropped us off in front of Terry Blacks, crazy hard to find parking here, yesterday it took me almost 30 minutes to find a spot and today, I got dropped off right in front.
Didn’t have to pay for parking either. Game changing. @robotaxi pic.twitter.com/yZjQ8u4s8X
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ただしこの展開には、安全性の担保と各州の規制当局の承認が不可欠であり、実現には課題が多いのが現実で、同氏が主張するような「すべての状況を一変させる」ようなゲームチェンジャーにはなりえないとの見方が大勢を占めているようですね。
Q2 2025 Earnings Call https://t.co/GvjGktAuea
— Tesla (@Tesla) July 23, 2025
さらに、現在オースティンにて提供されているロボタクシーは「安全監視員を同乗させた状態での運用」に留まっていて、すでに無人運転を商用化しているWaymo(グーグル系)に比べるとまだ開発途上にあり、技術的に後塵を拝しているという見方がなされているのが現状です。
にもかかわらず、イーロン・マスク氏は「自動運転こそがテスラの未来であり、次の展開地はカリフォルニア、アリゾナ、フロリダだ」と語ったそうですが、この発言の直後、テスラ株は時間外取引で2%下落したことからも、やはり多くの投資家は「自動運転はテスラの救世主ではない」と見ているのかもしれません。
売上・利益ともに前年割れ、ブランド力の低下と競争激化
4〜6月期の売上は225億ドルで前年同期比12%減、1株あたり利益は0.40ドルで23%減という結果となっていますが、テスラは投資家向けの声明で、「この四半期は、EVおよび再生可能エネルギー分野のリーダーから、AI・ロボティクス分野でもリーダーを目指す転換点」と位置づけるなど、これまで以上に「テック企業」であることをアピールしたとのこと。
しかし、同四半期はマスク氏がホワイトハウスで顧問を務めていた期間とも重なっていて、右派的な言動やドナルド・トランプ前大統領との関係が世間の批判を浴び、かつブランドイメージが毀損した時期でもあり、さらにこの期間は「テスラでの業務をおろそかにしていた」とも捉えているため、投資家としては冷ややかな反応をする以外には何もできなかったのかもしれません。
加えて、中国EVメーカーとの競争激化など「あらゆる状況が」テスラにとってマイナスに働いているのが現在の状況だと考えられ、これまでにも何度か経験してきた「最悪の状況」と照らし合わせたとしても、現在ほど”厳しい”状況はなかったんじゃないかとも捉えています。
その他のテスラの試みと展望
このほか、イーロン・マスク氏は株主へのアピールとして、ロボタクシー以外にも人型ロボット(ヒューマノイド)の開発や、カリフォルニア州ウェスト・ハリウッドでのドライブイン&ダイナー開業などユニークな取り組みを打ち出していますが、いずれも現時点では目立った成果を挙げておらず(そして他社に対して明確な優位性もなく)、今後の動向が注目される、というのが今のテスラの状況です。
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なお、今回の決算発表では触れられることがなかったものの、テスラの将来に暗い影を落とすのが「環境クレジットの廃止」。
各自動車メーカーは、(販売するクルマ1台あたり)既定値以上のCO2を排出すると「罰金」を支払わねばならず、しかしテスラのようなEVメーカーから「マイナスぶんのCO2」に換算できる”クレジット”を購入することにより、「自社が超過したぶんのCO2」を相殺できます。※既定値が「10」だとすると、「15」のCO2を出せば「5」に相当する罰金を支払う必要がある。しかしテスラのクルマはEVなのでCO2を排出せず、「-10」に相当する”貯金”をテスラは持っており、この貯金を販売できる
ただ、トランプ大統領の”イーロン・マスク氏への報復”としてこの「罰金」が免除される可能性が高いとも報じられており、これが決定すれば、各自動車メーカーはテスラからクレジットを購入する必要がなくなってしまい、テスラとしてはそのぶんの「収益」を失うことに。
そしてこのクレジットは「テスラにとってはコストがかからない」ほぼ100%ともいえる利益率を誇る基調な収益源でもあったため、これがなくなるとテスラの収益性が一気に悪化してしまうと見られているわけですね。
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参照:Tesla