
| クルマの未来は「開発の最初期」に決まる |
「有限な地球で、私たちは責任を持って行動すべき」
ポルシェが「今、車両開発において「持続可能性」を中心に据えた新たなアプローチを加速させている」として先行開発に関するコンテンツを公開。
この「先行開発」の中核を担うのが独ヴァイザッハにある研究開発センターでプレ・ディベロップメント(先行開発)を担当するカーラ・ロミッシュ氏で、今回のインタビューでは、ポルシェがいかにして未来のクルマ作りに“環境意識”を織り込んでいるか、その最前線を語っています。
カーラ・ロミッシュ氏は、材料工学やEV分野での経験を経て、現在はポルシェでサステナブルな製品開発に取り組んでいるそうですが、過去にはサプライチェーンのCO₂排出量を予測する独自手法を開発するなど、環境負荷の”見える化と削減”に注力してきたというキャリアを持っています。
Image:Porsche
プレ・ディベロップメントとは何をする部署なのか?
まず、このプレ・ディベロップメントを行う部署につき、彼女によれば「ここは“未来のアイデア工房”」。
新型車の量産開発が始まる前に、持続可能性や素材選定、新技術の可能性を模索し、実験・検証を繰り返すのがこの部署の役割だといい、素材の試作から経済性の評価、大学やサプライヤーとの協業まで、多角的に技術を磨くこととなるのだそう。
持続可能性は“初期段階”でこそ最大の効果を発揮する
「素材選定や設計思想を最初にどうするかが、その後のCO₂排出量や環境負荷に大きく影響します」とカーラ・ロミッシュ氏。
たとえば、再生可能資源やリサイクル素材を用いた場合でも、早期にそれを前提とした設計を行えば、コストや法規対応の面でも有利になるとのこと(たしかに「後づけ」のリサイクルはコストがかかる)。
Image:Porsche
“ホリスティック・エコ・コンセプト”というアプローチ
ポルシェでは、車両の内外装に使用されるプラスチックを中心に、製品のライフサイクル全体を見据えた「ホリスティック・エコ・コンセプト(包括的な環境戦略)」を導入しており、これは素材ごとの詳細分析から、CO₂削減や再生素材の導入可能性を評価し、試験・プロトタイプ製作を通じて現実的な解決策へと昇華させる手法であると説明されています。
「羊毛」も素材候補に。地域資源の活用に注目
例えば、北ドイツで年間2,000トン以上も生産される“景観保全羊”の未活用ウール。ポルシェはこれを内装テキスタイルや吸音材として活用できないか検討中。
この羊たちは景観維持のために放牧されており、その副産物としてのウールを使用することで、資源の無駄を減らしつつ、地域にも貢献する狙いであるとされ、これも「資源の有効活用」ということになりそうですね。
Image:Porsche
“リサイクル設計”が未来の標準に
「リサイクルは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の中核です」とカーラ・ロミッシュ氏。
中でもプラスチックの再利用性向上に取り組んでおり、設計段階からリサイクルを見据えた素材選定を行っているそうですが、旧バンパーから新しい部品をつくる“マテリアルループ”を実現するために、機械的、物理的、化学的リサイクルの手法を組み合わせていることについても触れています。
持続可能性は「制約」ではなく「創造性の源泉」
「毎日が新しい課題の連続ですが、それこそがやりがいです」
そう語るカーラ・ロミッシュ氏。自由な発想、チームの連携、そしてサステナブルな未来への貢献。それらすべてが、日々の仕事のモチベーションになっている、とのこと。
なお、今後のトレンドとしては、AIやデータ活用による開発精度の向上、リサイクラーとの密な連携による新素材開発などが挙げられており、また、開発評価基準に「持続可能性」が正式に組み込まれることで、より環境負荷の少ない製品づくりが当たり前になっていくと見られているそうですが、クルマづくりは「一昔前」とはまったく異なる様相を呈していることがわかりますね。
Image:Porsche
ポルシェは、原材料の持続可能な利用、廃棄物削減、高電圧バッテリーのクローズドループ(循環)化、部品の再製造などを軸にした「サーキュラーエコノミー」戦略を推進中であり、サステナブルな高性能車の未来像が、いま具体的な形になりつつあるようです。
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参照:Porsche