| むしろ、フォルクスワーゲンがここまでMTを存続させたことのほうに驚きを感じる |
それにしても、未だに欧州で「効率の悪い」MTが支持されている理由がわからない
さて、フォルクスワーゲンが「マニュアル・トランスミッションを廃止する」との報道。
これはドイツのカーメディアが報じたもので、2023年より段階的にマニュアル・トランスミッションを廃止してゆく、とのこと。
実際のところ2023年に発売される新型ティグアンではマニュアル・トランスミッションがラインアップされないといい、これは「トランスミッションをDSG一本に絞ることで、コストを最適化する」ためだとも言われています。
日本だとマニュアル・トランスミッション=走りだが
なお、日本でマニュアル・トランスミッションを選ぶというと「走り屋なの?」という印象がありますが、欧州だと経済性(燃費)と環境負荷のためにMTを選択する傾向が強いといい、2020-2021年あたりでも「80%以上がMT」という記事も見られます。
ただ、現代のATは、MTよりも燃費・環境性能・効率に優れるものが大半なので、(環境意識の高い)欧州でMTが売れるというのはちょっと謎でもありますね(MT=燃費がいいと盲信しており、その意識がいまだ根強いのか)。
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しかしながら、それでもフォルクスワーゲンが「MT廃止」に踏み切るというのは、全世界でのAT普及率を考慮し、世界的に見て「ATのみの提供に絞ったほうが、部品調達や生産・販売コスつを抑えることができる」という判断なのだと思われます。
「MT廃止組」にはこんな自動車メーカーがある
そこで現在の状況を整理してみたいと思いますが、現在MT廃止を宣言している自動車メーカーはけっこう多く、最近だとアストンマーティンが「MT廃止」を宣言。
これはメルセデスAMGの意向があるとも考えられ、しかしそもそもMTが(同社では)売れておらず、存在意義が見いだせないうえ、環境性能的にも「不利」なため。
小排気量エンジンであればともかく、V12やV8エンジンを搭載する同社にとって、CO2排出量をわずかでも下げることは絶対条件であり、これ(CO2排出量の大きいMTを廃止する)は納得の判断だと思います。
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そしてBMWは「新型M2がマニュアル・トランスミッションを搭載する最後のM」だとコメント。
これについては「BMWが持つトランスミッションは、500馬力以上のターボエンジンが発生させるトルクに対応できない」ことが理由だとされていますが、言い換えれば「そのトルクに対応できるトランスミッションを開発する気はない」ということですね。
ちなみにBMWは、マニュアル・トランスミッション車のシフトノブですら投資を惜しんでいるようで、90年代(もしかすると80年代から)からずっと同じものを使用し、最新モデルでは(インジケーターの)イルミネーションも廃止されています。
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そしてポルシェはいったん「生産数に占める割合から見て、MTを存続させることはビジネス上、理にかなっていない」と断じてマニュアル・トランスミッション廃止に動くものの、市場の意見に動かされる形で「クルマは人々を笑顔にする存在であるべきだ」と翻意しMT継続を表明。
一方で、究極のパフォーマンスを追求することになるモデル(新型911GT3RSや、GT2RS)ではMTが投入されないものと見られます。
ちなみにフェラーリ、ランボルギーニはマニュアル・トランスミッションをすでに廃止しており、(現代の)マクラーレンはそもそもMTが設計段階から考慮されていない状態で、スーパーカーにおいては「MTなし」が常識となっているようですね。
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一方、さほど廃ガス規制に神経質にならなくてもいい(ほかに小排気量モデルを販売していたり、大きなエンジンを作っていない)自動車メーカーだとマニュアル・トランスミッションを継続させる傾向にあって、トヨタ、スバル、マツダ、ヒュンダイなどはMTを継続生産しています。
そして、ちょっと面白いのは、「スポーツカーメーカー、スーパーカーメーカーではMTが廃止されつつあるのに、大衆車メーカーではMTが生き残っていること」。
これは「MT=走り」というイメージとは相反するもので、もちろんこれには上述の環境規制が大きく影響していて、かつ超高性能なエンジンを搭載した場合、(超ハイパフォーマンスカーの場合)MTにて「人間が操作する」という不確定要素を排除したいという考えがあるのかもしれません(現代のスーパーカーにMTを導入すれば、事故率が上がる可能性も否定できない)。
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ただ、一部の自動車メーカー(やコーチビルダー)は「AT全盛」の時代においても、効率だけを追求するのではなく、「ATをMT風に操作できる」デバイスを導入しており、シボレーやキアは「ATだけどクラッチつき」の疑似MTを開発している、と言われます。
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