| マニュアル・トランスミッションは、単なる機能を超え、自動車の楽しさの象徴なんじゃないかと考えている |
自分で自分が走るギアを選ぶことと、クルマが勝手に走るギアを選ぶことは、同じように走っていても全然違う行為である
なお、ここ最近は(体感上ですが)マニュアル・トランスミッションに興味を示す人がちょっと増えているようにも。
ただしそれはスポーツカー人気というよりは、「エレクトリック化が予想よりも早く進んでおり、このままでは近い将来MTに乗れなくなる」という危機感からMTを選ぶ傾向が強くなっているようにも思います。
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自動車メーカーはそもそもマニュアル・トランスミッションを作りたくない?
ピュアエレクトリックカーではもはやMTという概念すら無いわけですが、ハイブリッドカーであっても「MTと相性が良くないために」スポーツカーメーカーが(少数のMT派のために)コストをかけてハイブリッド+MTの開発を行うとは思えず、よってMTを選択できるのはガソリンエンジン車のみ、そしてあと数年すればそういった「ガソリンエンジンのみで走るクルマ」とともにMTは消滅するものと思われます。
加えて、マニュアル・トランスミッションではエミッション制御も難しいと言われ、自動車メーカー自体が「MTを作りたくない」と感じているのも事実なのかもしれません。
そうなるともうMTの絶滅は「数十年」という遠い先の話ではなく、もう数年後という「実感できる将来」にやってくる可能性が高く、もしかすると今後はMTを搭載する新型車が「ほぼゼロ」になる可能性もありそうですね。
こういった危機が現実のものとして感じられるようになった今、多くの人が「最後にマニュアル乗っとくか・・・」と考えるのもわかるような気がしますし、ぼく自身も「このあたりでマニュアル・トランスミッション車を買っとくか・・・」と考えたり。
なお、経験上(というかぼくの技術の問題で)、300馬力以上になるともうマニュアル・トランスミッション車を余裕を持ちつつ楽しむことができなくなるとも考えており、楽しめる限界はミニクーパーSあたりで、限界を超えたあたり(でもギリでイケそう)なのはホンダ・シビック・タイプR。
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ロータス・エキシージあたりになるともう完全に限界を超えており、(重ステということもあって)操作に必死といった感じです。
反面、パワーバンドの広いポルシェだと300馬力以上であっても扱いやすく、そう考えると「300馬力」は一つの目安でもあり、ギア比などセッティングによってこのあたりの「ぼく的限界」はけっこう上下するのかもしれません。
参考までにですが、今MT車を(新車・中古問わず)選ぶのであれば、ミニクーパーS、アウディS1、GRヤリス、もしくは「苦行」を覚悟してロータス・エリーゼもいいかと考えています。
ちなみに、フォルクスワーゲンのMT(GTIやゴルフR)についてはなぜかあまり好きになれず、自分でギアを選んでいても、なぜかDSGか勝手にギアを選んでいるような印象を受け、どうもダイナミズムを感じないという印象。
スポーツカーにおけるマニュアル・トランスミッション比率は上昇気味?
なお、ここ最近はスポーツカーやハイパフォーマンスカー市場では若干の変化が世界的に見られるといい、それは「扱いきれないスーパースポーツよりも、GRヤリスのように、手頃なパワーとサイズで、普段乗っていて楽しいクルマ」に注目が集まっていること(コロナウイルスのパンデミックにより、目立つスーパーカーに乗っていると、色々と叩かれるからという理由もあるらしい)。
その意味ではトヨタ86やBRZ、マツダ・ロードスターも再注目されていると聞いていて、とくに中古市場では動きがいいという話も。
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さらに「(コロナウイルスに感染し)明日死ぬかもしれない」という感覚が人々の間に生まれ、お金を貯めるよりも今”好きなもの”を買ったり、「死ぬまでには乗っておきたい」ということで昔から欲しかったクルマ(新車・中古車を問わず)を買って楽しむ人も増えたと報じられており、そういった傾向がMT車選好に人々を走らせている可能性もありそうです。
ちなみにポルシェはかつて「速く走るためにはMTはムダでしか無い」として911GT3からMTのラインアップを外しましたが、実際にはMTを求める声が非常に多く、991世代のフェイスリフトにてMTを復活。
その後どんどんMT比率が増えているといい、最新の911GT3では「MT比率が40%に達する」とも言われているようですね(以前、911全体の数字ではあるが、MT比率は5%以下だった)。
自動車は「効率」だけで割り切れる乗り物ではない
つまり、人々は「効率」や「理屈」ではなく、「(サーキット志向の911GT3であっても、目を吊り上げてタイムを削るより)「 楽しんで」クルマに乗ることを求めているのかもしれません。
なんといっても、自動車が発明され、人々が最初に行ったのは「荷物を運ぶこと」ではなく「競争すること」だったというので、もともと自動車という乗り物は、人々の感情を拡張する、そして可能性を試してみたくなるという存在だったのでしょうね。
そういった意味では、「MTは非効率」として切り捨てたGRスープラに対し、非効率なMTを存続させた新型フェアレディZの売れ行きがどうなるのか、MT比率がどれくらいになるのかはちょっと気になるところでもあります。
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そしてぼくがもう一つ思うのは、これから「味気ない」EV時代へ向かうことになりますが、そこで自動車が「単なる移動手段」に成り下がってしまうのか、それとも情熱を掻き立て「感情移入できる乗り物」に昇華できるのかどうかは「ATとMTとの違いに似ている」のでは、ということ。
(抽象的な意味で)感情を廃し効率を重視するのであればATですし、それ以上の何かを求め、心を動かそうとすればMTなんじゃないかと思います。
つまり、自動車メーカーが「AT以外は効率性の観点から不要」と切り捨てるような、答えが一つしか無いという考え方をもって電気自動車を設計するのか、「いや非効率でもMTは必要。だって面白いじゃない」と考えて多様性を許容しながら電気自動車を作るのかによって、その会社のEVは大きく性格が変わってくるのかもしれません。
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