「マセラティの生産が衝撃の79％減少」。ステランティスのイタリア生産台数が1956年以来の最低水準となり危機的状況に。製品ポートフォリオの見直しと再ブランディング以外に生き残る道はない

｜　文字通り「明るい要素」が感じられず、このままではジリジリと販売を失うだけである　｜

この状況を乗り切るには「魅力的な」新型車の投入が必須である

さて、度々その苦境が報じられるステラランティスですが、イタリア国内での生産がなんと37％減少して50万台を下回り、「1956年以来、最低の水準になった」とのこと。

特に影響が大きかったのはトリノにあるミラフィオリ工場で、ここでは2024年に生産が70％減少し、これは主に「フィアット500eの需要不足」が原因とされています。

さらにはマセラティが保有するモデナ工場では2024年に79％の生産減少を記録していて、「極めて厳しい状況」を迎えていますが、さらに厳しいのは「この需要が一朝一夕には回復しないであろう」こと。

ステランティスの今後の展望は？

こういった状況に対する批判を恐れたのか、昨年12月にはカルロス・タバレス氏が同社CEOを電撃退任しており、しかしステランティスそのものはイタリア生産への新たな投資を発表していて、イタリアにて保有する工場への20億ユーロ規模の投資をアナウンスしています（工場を閉鎖すると大量の失業者が出てしまい、労働組合からの突き上げが厳しくなる）。

この計画では国内すべての工場を維持する方針となっていますが、この投資は、次世代のアルファロメオ・ステルヴィオSUVやジュリアスポーツセダンなど、重要な新モデルの生産に向けられることとなるもよう。

また、ポミリアーノ・ダルコ（南イタリア）の工場では、2028年から少なくとも2つの新しいコンパクトモデルの生産が開始される予定だといいミラフィオリ工場も同様も支援を受け、2025年後半にはフィアット500のハイブリッドモデルの生産を担当することがアナウンスされていますが、直近で大きなヒットを期待できるニューモデルが存在せず、よってその回復までには数年というタームを要することとなりそうですね。

さらにステランティスではアメリカでも大きく「苦戦」

そしてアメリカではステランティスの2024年の業績が発表され、結果としては「15％の販売減少」。※これに対してフォードは4.2％増、GMは4％増

ステランティスが抱える14のブランドについては「フィアット以外」すべてマイナス成長となっていますが、「イタリアでは全く売れなかった」フィアットが何故か米国では154％も成長していて、しかしその総販売台数は1,528台にしか過ぎないため、もともとの「ベース」が小さかったのだということもわかります（そして、この台数ではステランティス全体にほとんど影響を与えない）。

このほかの「ブランド別」に見てゆくと、まずステランティスの（アメリカ市場における）主力ブランド、ジープ、ラム、ダッジでも状況は厳しく、ジープが9％減、ラムは19％減、ダッジはさらに大きな29％減を記録していますが、その内容についてもこれまで成長を牽引してきたクルマ（ジープだろグランドチェロキーやグラディエーター、ラムではピックアップトラック、ダッジではチャージャーやチャレンジャー）の販売が凹んだのが痛いところで、これは今後の展望に深い影を落とすところかもしれません。

このほかクライスラーでは7％減、しかも販売の多くを占めるのはミニバンのパシフィカで、ほかのモデルの販売が奮わないため、魅力的な新型車が登場しない限りは状況が改善しない可能性も。

アルファロメオにおいてもステルヴィオが41％減、ジュリアが33％減と大きく下がり、しかし逆に「唯一」伸びたのがフィアット。

とくにフィアット500が2023年の「12台」から2024年では「970台」へと急激に伸びており、その理由は全くの謎。

もしかすると「在庫処分」を行ったんじゃないかとも考えていますが、だとするとこれは「一時的なもの」で今後の成長を期待できるものではなく、ステランティスがここから立ち直ろうとした場合、根本的に車種構成を見直したり、ブランドそのものの立て直しを図る必要がありそうですね。

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