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中国の「新ラグジュアリー(贅沢)税」で高級車市場が再び逆風に。とくに打撃を受けたブランドとは?

メルセデス・ベンツ

| 中国での高級車市場がさらに厳しさを増す |

プレミアム価格帯の輸入車に「逆風」

中国ではすでに高級車セグメントの販売が低迷していると報じられていますが、新たに導入された「ラグジュアリー(贅沢)課税」により、外国メーカーにとっての逆風がさらに強まる可能性が報じられています。

報道によると、中国財務省は、税込み価格が126,400ドル(約1,840万円、90万元くらい)を超えるすべての車両に追加課税を実施するとされ、これまでの税制では、内燃機関車に限って182,600ドル(約2,650万円、130万元くらい)以上の車両にのみこの”贅沢税”が課されていたのに対し、新しい税制では対象金額が引き下げられるうえ、電気自動車(EV)も対象に含まれるところが大きな変更点です。

メルセデス・ベンツ、ポルシェ、レクサス…名だたるブランドが課税対象に

この改定によって、メルセデス・ベンツEQシリーズやポルシェ・タイカンなど、従来は免除されていた高額EVも課税対象に含まれることに。

具体的には以下のモデルが該当し、この課税はオプション装備を含めた総販売価格をベースに計算され、購入時に即時課されるため、上級グレードを選んだりオプションを多数装着すると購入者の負担がより大きくなります。

  • メルセデス EQS:910,500元
  • メルセデス Sクラス:962,600元
  • ポルシェ タイカン:918,000元
  • ポルシェ パナメーラ:1,138,000元

この新しい税制は主に欧州のプレミアムカーメーカーにとって大きな打撃となり、というのも昨今の「中国車の侵攻」によってシェアがどんどん奪われている状況において、各メーカーともに「中国車と競合する価格帯での勝負ではなく、中国車と被らない超高級セグメントに注力し、数ではなく利益単価を追求する戦略に」シフトしている最中であったため。

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とくにポルシェが進めていた「たんまりオプションを装着してもらい、1台あたりの利益を押し上げる」という戦略が根本から崩れ去る可能性も指摘されています。

上位価格帯はすでに販売半減、さらに厳しい展開へ

2025年上半期における中国国内での高級車(70万元=約1,400万円以上という定義がなされているようだ)の販売は前年同期比でほぼ半減し、2024年の年間でも34%減という厳しい状況となっており、今回の税制はこれに「追い打ちをかける」ものとなる可能性が大。

この新課税に該当する約37,000台のうち、48%がメルセデス・ベンツ、23%がランドローバー、18%がポルシェ、8%がレクサス、3%がベントレーという内訳であり、もっとも大きな影響を受けるのは(ここから見て)メルセデス・ベンツ。

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一方、中国全体の新車販売台数は前年比11.4%増の1,570万台と堅調なので、中国で売れるクルマの価格帯が下がっているという事実が明確になっている中において、「高級車」「超高級車」市場は欧州の自動車メーカーにとって収益性が高く象徴的な「最後の砦」存在であっただけに、その打撃は無視できないという状況です。

中国MG
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富裕層は気にしない?それでも欧州勢には痛手

すでに中国では、輸入車に対して40%の税金と15%の関税が課されており、新たな課税はそれに上乗せされる形になりますが、それでも、アナリストの鄧建全(デン・ジエンチュエン)氏は「本物の富裕層にとっては気にならないレベル」と指摘しているので、もしかすると今回の税金は富裕層にとっては影響がない範囲なのかもしれません。※それでも影響はゼロではなく、何らかの対策は必要であろう

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メルセデス・ベンツCEO「中国市場での価格競争には加わらない」

なお、メルセデス・ベンツのCEO、オラ・ケレニウス氏は2025年の上海モーターショーにて「中国市場での価格競争には巻き込まれない(参加しない)」と明言。

ブランド価値とリセールバリューの維持を重視する姿勢を見せていますが、税制改正とローカルブランドの台頭によって、もはや従来の戦略だけでは通用しない可能性も出てきており、ポルシェの「スポーツ」、ベントレーの持つ「超ラグジュアリー」というイメージを持たない分、やはりもっとも大きく中国車に侵食され、税制の影響を受けるのはメルセデス・ベンツなのかもしれません(中国車との代替性がある)。

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まとめ:EVにも課税、欧州高級車の立場がさらに不利に

  • ラグジュアリー課税の対象がEVにも拡大
  • 課税対象金額が182,600ドル → 126,400ドルに引き下げ
  • 輸入高級EVが一気に逆風にさらされる
  • 中国製プレミアムEV(例:NIO、BYD)は対象外多数

今後も中国の自動車市場では、政府の政策・規制が重要なファクターとなり、今回の税制もある意味では「欧州のプレミアムブランドを排除するため」だとも考えられ(そもそも中国車はほとんど対象にならない)、輸入高級車にとっては「価格」よりも「政治的・構造的な壁」の方が大きな障害であるとも考えられます。

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参照:Carscoops

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