
Image:尊界汽車
| もはや中国車は「安かろう悪かろう」ではない |
超高級車とは?一般的な高級車との違い
高級車には主に「ラグジュアリー」と「ウルトラ・ラグジュアリー(超高級)」の2つのクラスがあります。
メルセデス・ベンツSクラスや生産終了したジャガーXJは一般的な高級車(ラグジュアリー)の代表格。
一方、ロールスロイス・ファントム、メルセデス・マイバッハS680、ベントレー・フライングスパーなどはウルトラ・ラグジュアリー(超高級車)に分類され、これらは最高級の素材と最先端技術を用い、その価格も数千万円クラスです。
破格の超高級車!中国の「Maextro S800」が登場
通常、ロールスロイス・ファントムは約6000万円(ロングホイールベースだと7000万円~)。
しかし、中国から登場した「Maextro(マエストロ) S800」はその約1/5の価格で購入できる”超高級”サルーンであり、そのコストパフォーマンスの高さに中国内のみならず世界中の自動車メーカーが驚かされることに。
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なお、このマエストロS800は発売前のウワサだと「3000万円くらい」だと言われていたものの、実際に発売されるとその半分以下の値付けがなされており、これの意味するところは「いかに中国といえど、あまりに高額なクルマは売りにくい」ということなのかもしれません。
実際のところ、シャオミ SU7ウルトラも「発売されてみれば」予想されていた価格よりもかなり低いプライスタグを掲げていて、現在の中国では「高級車(高額車)市場は苦戦を強いられている」ことが伺えます。
- メーカー:JACモーターズ × Huawei(共同開発)
- 車両価格:708,000元(日本円:約1400万円)
- 最高出力:最大852馬力
- 特徴:先進運転支援、リアルレザー・ウッド・クリスタルを使用した内装、最新AIシステム搭載
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参考までに、「ラグジュアリーの反対は”貧困”ではなく”下品”である」と言ったのはココ・シャネルですが、このマエストロ S800はその製品ページのトップにドドンと「70.80元」という価格を全面に記載しており、ここは「ちょっとラグジュアリーではない」と感じる部分。
もう一つ参考までに、「製品ページのトップに価格を記載する」というのは中国車のお約束ではあるものの、できればこのマエストロ S800では「その慣例を破ってほしかった」という感じ。
なお、スタイルとしては「クーペ風セダン」となり、前はロールス・ロイス・ファントム、後ろはロールス・ロイス・ドーンの”ハイブリッド”という雰囲気でもありますね(中国ではクーペ風スタイルが非常に好まれる)。
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Maextro S800はパクリじゃない!完全オリジナルの中国製ウルトラ・ラグジュアリー
こういったスタイリング、ディティールから「中国版ロールスロイス」とも称されるマエストロ S800ですが、現地メディアの報道などを見ていると「単なる模倣車ではない」。
中国の大手自動車メーカー「JAC」と通信大手「Huawei(ファーウェイ)」による完全オリジナル設計で、このマエストロ S800は「問界」「智界」「享界」シリーズに続く「尊界」シリーズのフラッグシップとしての登場です。※尊界の英語名が「Maextro」
プラットフォームには約5年の開発期間を経た第2世代「Turing Longxing」アーキテクチャを採用し、将来的にはSUVやバンなど他車種にも展開予定だというので、この尊界シリーズのほか、ほかの「界」シリーズからもこのプラットフォームを使用した車両が登場するのかもしれませんね。
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なお、アーキテクチャ名の「Turing(チューリング)」とは、「現代コンピュータ科学の父」とも称される20世紀のイギリスの数学者、論理学者、暗号研究者、計算機科学者、哲学者であるアラン・チューリングを指しているのだとも思われ(チューリングマシンや、人工知能が人間のように思考できるかというチューリングテストが有名)、だとするとなかなかに面白いネーミングだと思います。
ただし実際に富裕層がこのクルマをどう評価するのかによって「真価が問われる」
このマエストロ S800の設計コンセプトは「至尊(Zhizun)ニューラグジュアリー」。
走り・テクノロジー・快適性の全てを追求していると説明され、以下の特徴を持っています。
Huawei(ファーウエイ)製自動運転「ADS 4」
- LiDARセンサー:192個搭載
- カメラ:16台(360度ビュー対応)
- AIディープラーニングにより走行品質を自動最適化
Xmotionアクティブサスペンション
- Huawei独自開発の全自動サスペンション制御
- 路面の凹凸を事前に検知し、瞬時にサスペンションを調整
- 超滑らかな乗り心地を実現
その他の先進装備
- デュアルメガピクセルヘッドライト(広範囲高輝度照射)
- Huawei製高級サウンドシステム
- 12度の後輪操舵システム(小回り性能向上)
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マエストロ S800のインテリアは「ウルトララグジュアリー」
そしてこのマエストロ S800のインテリアも外装同様に威厳と豪華さを追求したもので、しかし”クワイエットラグジュアリー”に属するのではと考えています(これみよがしな豪華さではない)。
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一方で「愛人需要」に対応するためか「女王コンフィグレーション」と命名されたゆったりしたシートにリクライニングスタイルも(中国の高級車においては、ゼログラビティシートと呼ばれる快適シートが必須である)。
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もちろんシャンパンクーラーも装備。※シートのアクセントもやはりロールス・ロイスっぽい
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ドアにはシークレット小物入れも。
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価格比較|ライバル超高級車より圧倒的に安価
以下は「ウルトララグジュアリー」に分類される超高級車との価格比較ですが、ロールス・ロイス・ファントム、メルセデス・マイバッハ S 680、ベントレー・フライングスパーの価格は「日本での新車価格」。
対するマエストロ S800の価格は現地販売価格の円換算となりますが、中国現地だと、欧州の超高級車につき様々な税金(輸入関税、消費税、豪華品税など)が加算されるために記載の価格の1.5~2倍くらいになるのではと推測され、よって中国ではマエストロ S800は「とんでもなく(ライバルに比較して)割安」ということに。
モデル | 価格(米ドル) |
---|---|
ロールスロイス・ファントム | 6000~7000万円くらい |
メルセデス・マイバッハ S 680 | 3500万円くらい |
ベントレー・フライングスパー | 3000~3600万円くらい |
Maextro S800 | 1400万円 |
ただ、中国の富裕層の間では「わざわざ割高なものを購入し、富を自慢する」傾向もあるといい(一人っ子政策が導入されていた頃、罰金を払ってでも2人目、3人目の子どもを持つことがステータスであったようだ)、実際に「ナンバープレート取得費用や税金が圧倒的に安い」EVではなく、わざわざ高額な購入・維持費用がかかるガソリン車を好む層も存在すると言われるため、このマエストロ S800がどう評価されるのかはちょっとナゾ。
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ただ、このプライシングを見る限り、もともとマエストロ S800は「ロールス・ロイスやベントレー、マイバッハを購入する層ではなく」、メルセデス・ベンツやアウディ、BMW、そしてレクサスあたりのオーナーをターゲットにしているのかもしれませんね。
Maextro S800のパワートレインとスペック
動力性能ついて見てみると、Maextro S800では3つのパワートレインを選択でき、いずれもなかなかの高出力を誇ります(EREVは小型の1.5Lガソリンエンジンを発電専用に搭載し、走行はすべて電動モーターで行われる)。
項目 | EREV(デュアルモーター) | EREV(トリプルモーター) | BEV(完全電気) |
---|---|---|---|
システム出力 | 523馬力 | 852馬力 | 852馬力 |
最大トルク | 673Nm | 1,152Nm | 1,152Nm |
0-100km/h加速 | 4.3秒 | 4.7秒 | 4.9秒 |
最高速度 | 200km/h | 210km/h | 210km/h |
航続距離 | 約372km | 約272km | 約702km |
車両重量 | 2,603kg | 2,860kg | 2,730kg |
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中国自動車業界の躍進とMaextro S800の可能性
ここ20年で中国自動車業界は大きく成長し、今や世界有数の自動車生産国へ。
日本や米国だと中国車の流通は限定的ですが、(日本以外の)アジア・ヨーロッパ・中東では急速にその存在感を高めており、もしマエストロ S800がグローバル市場で成功すれば、日米欧の高級車ブランドも”中国ブランドをライバル視せざるを得ない”日が来るのかもしれません。
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まとめ|Maextro S800は超高級車の常識を変える一台
Maextro S800は「圧倒的なコストパフォーマンスを誇る中国製超高級セダン」として注目を集めており、内外装の高級感、最先端のファーウェイによる技術、そして何より1000万円台という価格設定は、これまでの超高級車市場の価値観を揺るがす存在です。
このクルマがどこまでの影響力を持つのかはわかりませんが、普及価格帯、あるいはハイパフォーマンスセグメントにおいても中国車が「無視できないレベル」にまで台頭しており、今は「ロールス・ロイスのコピー」と揶揄されるこのマエストロ S800についても、看過できない存在となる可能性を秘めているのだとも考えられます。
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